王子様の帰還
「しっ、詩音(しおん)先輩!!」
「ん?どうしたんだい?」
ベリーショートの黒髪をかきあげて振り返る少女は、声をかけて来た後輩に爽やかな笑みを返す。
その安心感のあるハスキーボイスと、凛々しく眩しい笑顔に当てられた後輩は、恥じらいで顔を真っ赤にしながら、辿々しく可愛らしい包みを抱えて彼女の下のやってきた。
「あ、あの…一緒に…お、お弁当食べませんか!?」
「もちろんさ!!じゃあ、みんなで食べようよ」
「あ、ありがとうございます!!」
その煌めく笑顔に、その少女に続く様に、私も私もと、人だかりができる。
この女学院において、スレンダーで少々男性的に見られる秋河詩音は、その包容力と生来の爽やかさで、学園の“王子様“として、後輩からの憧れの的だ。
学業優秀、スポーツ万能。おまけにスタイルも(そういう見方で)抜群。
全寮制の閉鎖的な女学院に現れた、少女漫画からやって来た様な本物の王子様に、彼女たちは夢中だった。
詩音を中心にして、中庭のベンチで和気藹々と昼食をとる中、ふと、後輩の1人が詩音に問いかける。
「あ、あの……詩音先輩、この連休は何して過ごす予定なんですか?」
少女の期待の眼差しは、週末を使ったデートか、それとも何かのお誘いか……
しかし、詩音はばつの悪い顔でそのお誘いに首を横に振った。
「ごめん、僕、週末はちょっと遠出するんだよね……」
だからこっちに居ないんだよなぁ……
そう少し困った様に頭を掻く王子様に、そうですか、と少し残念そうに肩を落とす。
「先輩、遠出って、どちらまで?」
「うーん、結構遠いよ?新幹線使うしね?」
旅程を思い出す様に、ふむ、とその凛々しい顔を天に向けた。それだけで絵になる様な王子様のカッコ良さに、周囲の後輩達は見惚れてしまう。
「……ちょっと、人に会いにね?」
詩音はそんな皆に、穏やかな笑みを溢した。
▲▽▲▽
数日後、詩音は新幹線の中に居た。
車窓から移り行く映る景色も、都市の高層ビルから田園風景に変わり、次第にそれも山々に変わっていく。
『着くの何時?』
『1時ちょうどくらい』
『じゃあ、迎えにいくわ』
かわいい熊が木彫りの車に乗るイラストに、
”アリガト”……と携帯に打ち込む詩音。
座席に座る彼女の出立ちはベレー帽にロングスカートとブラウス、そして耳には可愛らしいピアスと、学校で見せる貴公子然とした背格好ではなく、少しボーイッシュなとびきりの美少女といった様相に様変わりしていた。
……三ヶ月ぶりかぁ…
毎日連絡はするが、やはり会いに行くのは待ち遠しい。
……待っててね…ハル……
車窓は山岳から田園風景を挟み、再び都市の街並みに戻りはじめる。
着いたのは都会から離れた地方都市。
ここが詩音の生まれ故郷だ。
駅舎からロータリーに着くと、がっしりした体躯の短髪の男が赤茶色のSUVの前で手を振っているのを見つけ、詩音は一目散に駆け出した。
そのままの勢いで抱きつき、数ヶ月ぶりの彼の体温と匂いを全身で感じる。
「……ハル、ただいま……」
「おかえり。詩音」
「……うん。」
久々の感覚に思わず回した手に力が篭る。
晴山哲治(てつはる)。彼女の幼馴染で、ふたつ上の男の子。
彼はこっちの大学で、学生をしている。
諸々の都合で、都会の学校に進学した詩音は、たまの休みに帰省も兼ねてこうやって、哲治に会いに行く。
そこでは詩音にかけられた王子様の魔法が解けるのだ。
…哲治の前では、学園の王子様は、ごく普通の恋する女の子だった。
「やっぱ、また告白されたのか?」
「うん……後輩に……」
哲治の運転するSUVの車内で、夕暮れに染まりつつある故郷の街並みをぼんやり眺める。
…あ、あのお店、こっちにも出来たんだ……
そんな心ここにあらずな詩音の表情に、哲治は悪戯っぽくニヤリと歯を向ける。
「それ、男?」
「……全部おんな」
「うはっ!!…マジかよ!?」
「その反応何よっ!?」
「いやいや、“全部“女って、お前!?」
はいはい、どうせあたしはそこらの男子よりイケメンですよー
運転席に座る幼馴染を小突きながら、たわいの無い話で盛り上がる。
肩肘を張らない哲治とのこのやりとりが詩音は大好きだ。
詩音はお返しとばかりにじゃあさ、と揶揄う様な声色で、哲治に視線を送る。
「ハルのほうはさ、大学で女の子からアプローチかけられることとかないわけ?」
「ん〜? まぁ…俺はこんなナリだからさ、怖がられるっつーか……」
「ハル、ひょっとして……」
「えーえー。全っ然、モてませんとも!!」
「やっぱり!!」
ハルには敵わねぇよなぁ〜、と早々に白旗をあげる哲治。
女性としてはかなり長身の筈の詩音より一回り以上の体躯がある哲治の外観は、お世辞にも女性ウケする様なそれではない。
だが、哲治は誠実で、優しくて、力強くて……
詩音は自分の中の気持ちに気づいた時、中学を卒業したその日の事を思い出す。
“はる兄(にぃ)……あたし、はる兄の事が……”
だから、哲治がそばに居ると、自分が紛れもない女の子なのだと、強く感じられるのだ。
「……さてと、飯はどうするんだ?お前。ウチで食ってくか?」
なんもねーけど、鍋くらいなら作れっぞ?
そう無邪気に笑う哲治に、詩音は少しだけ俯いて、スカートをきゅっと掴んだ。
……勇気をだして、詩音、さぁ……
「……あたし、さ、家には…明日帰るっていっちゃったんだよね……」
詩音の期待する目と、哲治のまさかの目が絡み合う。
ちなみに哲治は……一人暮らしのアパート住まいだ。
それが意味するところは……つまり……
「今日はハルと…一緒に居ちゃだめ?」
詩音の……絶賛遠距離恋愛中の恋人の、そんな恥じらいで真っ赤に染まる顔に打ち勝てる程、
哲治は行儀の良い男ではなかった。
▲▽▲▽
彼のアパートに入るなり、
詩音は壁に押さえつけられて、哲治に唇を奪われる。
舌が強引に滑り込み、ごつごつとした筋肉質な腕が詩音のスレンダーな身体を押さえ、服越しの腋を、臀部を、太腿を、しっかりとした男の指が這い回る。
その強引さがちょっと嬉しくて、詩音の中の女が猛烈に昂ってしまう。
「ぷあ……っ、はる…強引だよぉ……」
「悪い…でも、3ヶ月お預けだったし、何より……」
しおんが無茶苦茶可愛いから、全然我慢できねぇ……
文字通りの殺し文句に、ただでさえ赤い詩音の顔がさらに紅に染まり、ぷいと顔を背ける。
「い……一応、学校じゃ、王子様で通ってるんだけどね……」
「詩音はこんな可愛いのに…ほんと勿体ねぇ」
おもむろにブラウスのボタンを外され、ちょっと上品なデザインの紺色の下着が顕になる。
哲治好みの、…彼を喜ばせたくて選んだそれだ。
「ひゃっ!?はるっ!?」
「……やば…詩音の下着無茶苦茶可愛い……」
「はる……っ、ダメだよ……シャワー……あびないとぉっ、」
いやいやと首を振りながらも、喜ぶ彼に本能は期待を覗かせる。哲治の指がブラのワイヤーに引っ掛かり、そのままくいっと上がる。
ふるん、とスレンダーな肢体によく似合う、形の良い乳房が溢れた。
「…すげーエロい匂いがする…」
「ひっ!? やだ……は、はるっ、だめだよ……やだよっ?」
敏感な部分が無人だった部屋のひんやりとした空気に触れ、思わず先端が硬くなる。目に涙を溜めた詩音の懇願を無視して、哲治は仰々しく舌を大きく出し…
はむん、と齧り付いた。
…じゅるるるるっ!!!
「っくぅぅぅっ、あっ♡♡、はるっ、はる、だめぇっ!!んあああっ!!」
大きな音を立てて、乳房を蹂躙される。
詩音の望み通り、お願いを無視されて始まる激しい快感に歯を食いしばり、詩音の背が弓反りになる。
「や……だぁっ、はるっ、はるぅっ!!」
詩音のがくがくと震える足腰に、哲治は詩音の股の間に膝を割込ませて、腰を落とさないよう強引に立たせる。吸われ、甘噛みされ、柔らかい詩音の双丘は恋人のなすがままにされ、羞恥と快感で、詩音は啼き喚く。
「もうたてないっ、たてにゃいっからぁっ!!」
「はは…、詩音クソ可愛い…」
その豪放磊落な外観に似合わない、恋人の丁寧でねちっこい舌使いに狂わされ、腰がびくびくと震える。それが哲治の差し込まれた膝に擦れ、敏感な部分にぐりぐりと自然に追い討ちがかかる。
「はりゅっ、いきゅっ、いいっ…っうっ!!!」
いつもの王子様らしいと称されるハスキーボイスではなく、女の子らしい甲高さで、詩音は可愛らしく達する。
「あ…あへぁ…♡」
詩音の身体はそのまま糸の切れた人形のように哲治にしなだれかかる。
呼吸があらく、視点は焦点があわない。
「これでも、シャワー行けるか?」
「ううう……はるぅ……♡」
哲治の首筋に額をこつんと当てて、切ない乙女心をアピールする。
…ダメだ……今日あたし、思いっきり女の子にされちゃう……
「はる♡、しようよ…がまん…できないよぉ」
▲▽▲▽
ベッド迄の道のりに、互いの服が散乱し、その足元にはあの可愛いらしいブラジャーとショーツが、乱暴に投げ出されている。
詩音はベッドの上で組み敷かれて、生まれたままの姿で哲治の愛を一身に受け、細く美しい肢体の全身にキスをされ、撫でられ、弄ばれていた。
「はるぅ……はるぅっ♡♡」
興奮で汗まみれになりながら、甘えた声で恋人を呼ぶ。悶えるたびにベリーショートの黒髪と、耳に残された女の子らしいピアスの輝きが、ほの明るい照明に反射して美しく光る。
乳房の先端が唾液に濡れてツンとたち、整えられた陰部の茂みが自分の愛液に塗れて、てらてらと輝いている。
詩音は三ヶ月ぶりに味わう女の悦びに、悶え、震えていた。
「お前のガッコの連中が、今のお前を見たらどう思うんだろうな……」
「そんなの……なんでも……いいよ……」
形の良い乳房を舌先で弄ばれながら、
甘く蕩けた吐息を漏らす……
「はるだけだもん……あたしの王子様は……はるだけ……♡♡」
この地を離れる最後の夜からずっと、
哲治は詩音の愛しい愛しい王子様だ。
ねっ、はる……
き、今日は大丈夫な日だから……
「はるが、ほしいよ……♡」
溶け切った詩音の微笑みが、哲治の独占欲を燃え上がらせる。
膝を掴み、大きく股を開かせ身体を割り込ませる。
詩音の秘裂はとろとろに蕩け、哲治のそれを求めて、ひくひくと切なくわなないている。
「……はるぅ♡」
哲治のそそり立つそれを入り口に沿わせると、淫襞を開くねちっこい水音と共に、それがゆっくりと沈み込み、みちみちと詩音の内壁をなぞりあげる。
「ふああぁつ、はるっ、おっ、おっきぃ……」
じぐじぐと染み込む様な快感に、詩音の臍下がきゅんきゅんとして、縋るシーツに指が食い込む。
「俺しか知らないくせに……っ、よっ!!」
「ふぐっ!?♡♡」
最後は一気に、暴力的な程の力強さで子宮を押し上げられる。
三ヶ月ぶりの哲治のそれが焼きごての様に詩音の脳髄に強烈な快感を焼き付ける。奥に強烈なキスをされて、腰がはしたなくかくつく詩音に、それを抑える様な哲治の腕が背中に回される。
ぎゅっと強く抱きしめられ、素肌で包まれる暖かさと安心感に詩音の中の女が満たされる。
「……はる…あったかいな……♡」
…やっぱりあたしって、女の子なんだなぁ……
瞑った目の中で、詩音はそう直感する。
あの学校で持て囃される王子様としての自分も、自分の中では既に受け入れている。しかしこの恋人に全部を委ねられる甘い時間は……それを捨てても良いくらい、幸せだ。
「詩音……俺も……結構我慢してたから……」
腰を揺らしながらも、少し恥ずかしがるような哲治の声にその意味を察した詩音は意地悪にちょっと王子様っぽく、哲治の頬を細指でなぞる。
「いいんだよ、はるの好きにして……」
「っつ、揶揄うなよっ……」
「……んんっ♡」
力強い抽送の波が、子宮から脳天に響き、詩音の脳を沸かす。
気持ちよくて、あったかくて、幸せ…
次第に、少しずつ中がぱんぱんになるのを感じて、その予兆に、詩音の心は少しだけ身構える。
…はるのが、来るっ……
「詩音っ、しおんっ」
「はるっ、いいよっ、はるぅっ、んんんんっ!!♡♡」
その瞬間、子宮の間近で、哲治のが爆ぜた。
どくどくと体に奥から迫り上がってくる灼熱の鼓動が、詩音の子宮を焦がし、大きく瞑った目の奥で、星が煌めく。
…気持ちいい……
雄の精をなすがままに注がれた詩音は、脳髄で響く快感のコーラスに心と身体を委ねた。
繋がったままで、ひとしきり呼吸を整えた哲治はまだまだ余裕そうだ。彼がタフな人なのは知っているが、今日の為に我慢したという話は、嘘じゃない様だった。
「…まだ続けて、大丈夫か?」
そんなおっかなびっくりに自分を労る哲治。
優しく顔を撫でる恋人に詩音は幸せそうに頬を染める。
「……はるにぃの……えっち……」
思わず昔の呼び名で呼ぶボーイッシュな美少女に、哲治の心臓がどきんとして倒錯感でおかしくなりそうになり、独占欲と多幸感で恋人の身体をさらに堪能するべく詩音の中のそれが、硬さを取り戻す。
…中でっ、また大きくっ……
「……はふ♡」
詩音の中で出されたものがねっとりと、ゆっくり擦り込まれていく様な感覚に、心が蕩ける。
「このまま、続けるからな」
「うん…あたしも、このままがいいな……」
お腹に感じる重さに愛を感じながら、この三ヶ月を埋める様に、2人は互いを貪った。
▲▽▲▽
「詩音先輩!!」
「おかえりなさい、詩音先輩!!」
「みんな、ただいま」
キャリーケースを引きながら学院の正門を潜った詩音は、すぐさま彼女を慕う後輩に囲まれる。
帰りはきちんとパンツにベストの、しっかりボーイッシュな服装だ。
「寂しかったかい?」
「ええ、とっても寂しかったです!」
揶揄う様なハスキーボイスに、少女達は黄色い声を上げる。
その中の1人が、どこかおずおずと、あの…詩音先輩、声をかける。
「…どうかしたかい?」
「なんだが先輩の凛々しさが……その……」
「……僕、ちょっと変かな?」
「いえ、いつもよりとても凛々しくて、とても…素敵です。」
久々だからでしょうかと、頬を染める後輩。
周りの素振りからも、それが唯のお世辞ではない事を知ると、…そうかもね。と、ピアスの跡の残る耳の上の髪をかきあげて、直前に感じた一抹の不安な表情を捨てる。
眩しい笑顔を返して、学園の王子様は後輩達を連れて、寮へと帰っていった。
おしまい。