獣が愛を宣って

獣が愛を宣って

心叫×深衝

「先輩先輩!」


まるで子犬のような後輩に懐かれたキッカケは、まぁありふれたようなものだろう。

純粋に己を慕ってくる後輩を、無碍に出来なかったのも仕方のないことだろう。

けれど。


「先輩?」


その可愛い後輩に、獣欲を持つようになってしまったのはいったい、いつだったのか。

己への信頼に富む瞳を快楽に沈めたくて、己が名を呼ぶ声を甘いものに変えて、縋らせたくて。

日が経つごとに顕になっていく自身の浅ましさにハーツクライが頭を抱えたのはもう遠に昔のことであった。


「先輩」


きゃらきゃらと。

何の警戒もなく自室にやって来た後輩は、今日も無邪気に笑っている。

それにふつりと切れてはいけないモノが切れたと気がついたのは…。


「…先輩?」


簡単に組み敷けてしまった矮躯。

伸ばした指先でつぅ、と喉を撫でれば可愛い体はびくりと震えた。


「……っあ……せんぱ……」

「なァ、ディープ…」


怯える顔すら愛おしいと思う自分は、きっとどこか壊れているのだ。

だからこんなにも興奮してしまって。


「逃げてもいいぞ。​──逃げれるモンならな」


ガリ、とその首筋に歯を立てた。

そして僅かに滲んできた鉄の液を舐めとっては、喉を潤す。

嗚呼、やはり。

意思を持つ者は須らく『獣』なのだ…。


「んッ……やだ!……あっ、せんぱぃ……」

「早くしないと喰っちまうぜ」


くつくつと笑いながら、その服の中に手をいれる。

そのまま胸の飾りをピッ、と弾けば嬌声が上がった。


「ひっ♡!?……だめですってばぁ……!」

「駄目? お前さんから誘ってきたんだろ?」


そう言いつつズボンに手をかければ、抵抗する腕の力が強くなった。

しかしそれは本当に微々たるもので、簡単に引っぺがせる。


「ぅあ゛、ぅ、う゛…♡♡」

「気持ちいいか?」

「ぅ、あ゛っ♡!」


苦しげに。

それでいて甘ったるく。

ずっとずっと求めていた声が鼓膜を揺らした瞬間、ぶわりと全身の血が沸き立つような感覚を覚えた。


(ああ、やっと)


漸く。

そんな歓喜に打ちひしがれながらも、手の動きを止めることはない。

ぐちゃりとした水音と共に漏れ出る吐息混じりの声が心地よく耳に入り込んでくる。


「ぅ、あっ……しぇんぱいっ……♡……な、んかキちゃう……っ♡♡」

「おう、イケよ」


ぐりっと強く押し潰せば、ビクビクと体が跳ね上がった。

はーっ、はーっという荒い呼吸音が部屋に響く中、抵抗が無いのをいいことに挿入を。


「まっへくらは……」

「待てるわけねぇだろ」


ずぷりと入ったソレは止まることなく奥へと進んでいく。


「~〜〜〜〜っ♡♡♡♡!?」

「ほら、全部挿入っちまった」

「ゃ、やら……ぬ、ぬぃへ、ひンっ♡!」

「悪いけど無理な相談だな」


ごちゅん、と最奥まで貫いたと同時にナカがきゅぅっと締まるのを感じて思わず口角が上がる。


「なァ、ディープ」

「……な、んれすか……っ♡♡」

「オレのこと好きか?」


押さえ込んで、耳にキスを落としながらそう聞く。

そのたびに感じている声が微かに上がるのを楽しみつつも返事を待つ。


「すきじゃなきゃ、こんなことゆるさないですよぉ……っ♡♡」

「はは、そりゃそうだなァ」

「だから……もっと……♡♡」

「……仰せのままに」


それからはもう互いに互いを求めあって。

理性なんてものはとうに投げ捨ててしまっていて。

ただただ本能に従って快楽を求めるだけの獣になっていた。

それでもなお、己の下で喘いでいる存在が愛おしくて仕方がないのだ。


「せんぱ、そこ…やぁっ♡!」

「嫌じゃないだろ?そんな声出して…」

「だって、へんになる……っあ、あッ……♡!!」


びくんびくんと体を震わせては絶頂を迎える姿を見て、己も精を放つ。

どくどくと脈打つそれで塗り込むようにゆるく腰を動かせば、また甘い声が上がった。

それに気を良くして、もう一度と動こうとすれば、ふいに頬を撫でられる感触。

瞼を開ければ、そこには蕩けた瞳があった。

それが、まるで。

──まだ足りないと言っているようで。

ごくりと喉が鳴る。

それに応えるかのように、目の前の存在は笑みを浮かべた。


「せんぱい……」

「……あァ……」

「……もぅいっかい……♡」

「勿論」


そして再び始まる行為。

夜はまだ始まったばかりなのだから……。



「おはようございます、先輩」


キッカケは散々だったが、結局は行き着くところに行き着いた結果。

今日も今日とて満面の笑みで泊まりの用意を持ってやって来た恋人を部屋に引きずり込む。


「わっ!?」

「…別に、毎回此処でのデートじゃなくていいんだぜ?」


プチプチ、プツプツと脱がされた先の肌には未だ残るキスと噛みの痕。

消えそうになるとか、ないとか関係なしに逢瀬のたびに繰り返されるソレに下手人は苦笑いするしかない。

しかしそれも一瞬のことで、すぐにその顔は妖艶なものに変わる。

そして、ゆっくりと伸ばされる腕。

それを掴んで引き寄せれば、互いの唇が重なった。

そうすれば、後はなし崩し的にベッドへと沈んでいくだけなのだから。



​───熱気のままにじっとりと濡れていく。

肌も、髪も、声も。

何もかもが溶け合って、一つになったかのような錯覚を覚えるほどに深く深く絡み合う。


 「あいしてる」


…とはいえ、それはどちらの言葉だったか。

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