猟師視点
「不法侵入!!不法投棄!!」
思わず叫んだ時にはもう頭を撃ち抜いていた。弧を描くように飛び散った赤いモンは、山に咲くどの花よりも赤くて気持ち悪い。そんな気持ち悪い集団を殺せたことに俺は喜びを感じていた。この調子で人間には全員死んでもらいたい。つーか俺が殺す。人間が2人ともコトキレたことを確認したのでとりあえず服を剥いで髪も切っておく。まあ燃料くらいにはなるだろう。
つま先に何かがぶつかった。ゴミもちゃんと処理しておかねぇと…
「ん?」
かすかに何かが聞こえる。動物の声ではない。もっと近くから、足元のゴミからだ。あれか?これ実は爆弾とかいうやつか?
まあ死ぬなら死ぬでどうでもいい。布で包まれた中身を持ち上げてみる。
「………マジで?」
それは間違いなく、人間の赤ん坊であった。
「…お前アイツらになんかしたの?あれか?生まれたこと?」
町とかに捨ててワンチャンすら用意せず山に捨てるっつーことは、愛されてすらないのか。
まああんな人間に愛されても良いことなんかねぇだろうから良かったじゃん。
あっそーだ、俺もよく産んだことを後悔されてたっけ。
「どうするお前 ここで死ぬ?次の人生に賭けるのが手っ取り早いぞ?」
そう言いながら銃を向けた。
赤ん坊は泣かずに俺を見ていた。
「…なんだよ」
ずっと俺を見ていた。赤ん坊のくせにめちゃくちゃに度胸があるのか、泣く気にもなれないのかは知らねぇ。
だが、こうも見つめられると流石の俺でも撃ちにくい。これでも一応赤ん坊を撃ち抜いたことはない…というか赤ん坊を見たのがだいぶ久しぶりだ。普通はこんなところに生まれたばかりの赤ん坊は連れてこない。
「…来るか?」
にーにー鳴いてる赤ん坊を担ぎながら住処に戻る。さっさと撃てなかった俺の負け…負け?
「あーそうか 負けたんだ俺」
俺は、捨てなきゃいけないものをあの時に捨てられなかった。
ほんの少しこびりついて未だとれない『人間らしさ』とかいう忌々しいモンに俺は勝てなかった。
吟と名付けたあの赤ん坊は今日の朝に山を降りた。今はなんかサッカーやってるらしい。
吟は俺よか人間だった。だから多分、俺よか大丈夫だろう。
ここまで山が静かなのはいつぶりか、今日に限って人間も来なかった。
今の俺は1人で、きっとこの先も1人だ。
ずっと昔だって、そうだったはずだ。
「あークソ…やっぱ撃っときゃよかった」
絶対に殺せないくせによく言うよな、コイツ。