猗窩座

猗窩座


『私が…戻りますから…ルフィは…助けてください…』

海軍大将“黄猿”にウタが連れていかれる。

『待てよ…ウタ…!お前ら、離せェ!!」

数人の海兵達にうつ伏せに拘束されながらルフィは吠える。

『ルフィ…』

振り向いてウタは笑顔でルフィに告げる。

『今まで…助けてくれて…ありがとう。大好きだよ!!』

それを聞いたルフィは涙をこぼしながら叫ぶ。

『待てよウタ…ウタぁぁああああああ!!!!』




「ぁあああああああああ!!…はっ!」

ルフィはベッドの上で目が覚めた。周囲を見渡すと見覚えがある。ここはどうやら以前よく通っていた海軍の医務室のようだ。

「起きたか…ルフィ…」

ルフィの目の前に自らの祖父であるガープが現れる。

「お前二週間も倒れてたぞ。寝過ぎじゃわい!」

そう笑いながらガープは告げる。

「なぁ、じいちゃん…ウタは?ウタはどこだ?!」

そうルフィが尋ねるとガープは難しい顔をしてルフィに告げる。

「いいかルフィ…ウタちゃんはな…死んだ」

「…は?」

衝撃の事実を知り茫然とするルフィにガープは告げる。

「ウタちゃんはな…ウタウタの能力を使って脱走しようとしたんじゃ。じゃがCP0に阻まれ、激怒したチャルロス聖に喉を焼かれた。ルフィに会えず歌も歌えなくなったことに絶望したんじゃろうなぁ…。次の日ベッドの上で舌を噛み切って自殺しておったそうじゃ…」

そう言ってガープは懐を探り出す。

「遺体だけはわしが無理言って天竜人から受け取り、フーシャ村に埋めた。…これがその遺品じゃ」

そう言ってガープが差し出したのはひび割れたウタのヘッドホンだった。

「…うあああああああああああ!!!!」

ルフィは叫び、泣き喚いた。

それから二日後…ベッドの上に麦わら帽子と正義のコートを残しルフィは姿を消した…



ネオ海軍の軍艦に二つの人影が見える。

「いいのか、小僧。俺を止めなくて。」

「おれは止めねェよ。ゼファーのおっちゃんの気持ちも分かるしな。それにおっちゃんの計画が成功しようと失敗しようとおれのやることは変わらねぇからな」

「…小僧、お前何する気だ?」

「ん?ししし、おれはなァ〜…」

「…ははは!そうか!それはいいな!」

「だろ!…でも今のおれじゃ足りねぇんだ。だからおれに“覇気”を教えてくれ!」



ドレスローザおもちゃ工場

そこには少女とぬいぐるみがいた。

「じゃあ”契や…きゃ!」

ぬいぐるみは少女を突き飛ばすと目の前から消える。

「べへへ〜どうするドフィ?追う?」

「フッフッフ!おもちゃ一体に何ができる!無視して構わん」


遠く離れた路地裏にぼろぼろで綿の出ているぬいぐるみの姿があった。

ぬいぐるみが力を込めると、なんと人間の姿になった!

「しっしっし…!聞いた通りだ!“過剰な覇気に”能力“は通じねェ“!」

男は振り返りドレスローザを眺める。

「確認はできたし…次は失敗しねェ!」



そこから2年後…あるニュースに世界は衝撃を受ける!

ドレスローザの闇!王下七武海の暗躍!その解決の裏には消えた英雄の影!?

そのニュースは世界中を巡り、王下七武海制度の撤廃が決まった。



そこからさらに数年が経ち…マリージョアは火の海に包まれていた!

そこでは虐げるものと虐げられるものが逆転し、解放された奴隷達は感謝と喜びの雄叫びをあげる。

その様子を眺めながらひび割れたヘッドホンを首輪のように首につけている男は空に向けて口ずさんでいた。


「新時代は〜♪この未来だ♪」


「世界中全部♪変えてしまえば〜♪」


「聞こえるかウタ。この声が」


「みんな笑ってる。ここからだ」


「ここからおれ達の“新時代”が始まる。」


「誰にも支配されない…みんな平等な自由が!!」


「だから…見ててくれ!」


男の名はモンキー・D・ルフィ。これから彼は神を討ち倒した英雄として語り継がれる。時代を切り開いた彼だが生涯未婚だったとされる。彼はひび割れたヘッドホンを生涯持ち続け、彼の死の間際、傍に紅白色の髪の女性を見た者がいるとかいないとか。



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