独白

独白

独白

あの日から、料理ができなくなった。

何があったのかはよくわからない。誘拐されて、腕に何かされたことだけは覚えているけど、痛かったのか、熱かったのかもよくわからなかった。

訳のわからないままジュリと美食研究会と先生が突入して助けてくれて、そこで一度意識は途切れた。

退院して、お礼で料理を作ろうとして、包丁が握れなかった。

先生のツテで精密検査した結果、結論としては神秘に干渉して料理を封印している、ということだった。

詰まるところ、一生料理はできない、ということ。

物理的に破壊されただけなら、どうにでもなっていた。ミレニアムになら生身より精密な義手ぐらいあるのだろう。再生治療だって出来た。でもこれはどうしようもない。

先生は、抜け道を探してくれている。ロボットアームを操作すれば、とか。どんな方法でも無理だったけど。

この前は、自動調理器に私のレシピを入力したら自動調理器が壊れてしまった。どれだけ徹底しているのだろう、これ。

それでも先生は諦めていない。昨日、変なクレジットカードを見つめていた時は思わず止めた。多分、あれは良くないものだ。私だけのために使って良いわけがない。

最近。夢をみる。何者かが語りかけてくる。その封印はあくまでも神秘に干渉しているだけだと。私の手を取れば神秘を同質の代用品に入れ替えることができるのだと。

絶対にダメだと、理性は言う。

だけど……もう一度……


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