父と子と3

父と子と3


硝太を追い返して数日後ルビー、アクアがそれぞれ俺に怒りをぶつけて来た。

様子のおかしい可愛い義弟のためにわざわざ怒りに来たらしい。

ルビーはストレートに「姉」として深いを怒りを見せ、アクアは冷静ながらも底冷えするような眼差しで俺を糾弾した。

父親面出来ないが、息子は本当にアイの子達から愛されていたことを感じられて内心嬉しさもあった。

俺は俺で過去のツテを使い、硝太と探偵が集めた資料をもとに芸能界から黒幕と目される男を追放し、始末するための準備を始めていた。

…例え俺が殺されてもアクアやルビー、硝太が巻き込まれない様に、道連れに出来るようにしたかった。

2度と会えなくても良い、子ども達を守るためなら、と俺が持ちうる限りの手札を用意した。

だが神様という奴はとことん俺が嫌いらしい。

会いたくなかった息子…硝太を俺の前に再び寄越したのだから。


「釣れますか?斉藤さん」

「…何しに来た硝太。俺はおまえの親を辞めた。息子でも何でもないんだぞ」

顔を見ずに拒絶する。

こいつへの対処は強く「利用している」という感情を押し出して顔を見せないこと、みじろぎひとつしないこと。

探偵の言葉通りなら凄まじいレベルの共感能力と洞察力を備えてしまっている。

故にささいな動きさえ、下手なことは出来ない。硝太に俺の動揺、後悔、決心を悟らせる訳には行かないからだ。

「ええ。だから僕も息子を辞めましたよ『斉藤さん』」

「ーーーそうか。なら、何の様だ?」

澱みなく答える息子の言葉に、こいつの本心なのだと、勝手ながらショックを受けている俺が居て、

それで良い。憎み、嫌い続けてくれ

と安堵する俺もいた。

「貴方に依頼したいんです。貴方が使えるマスコミ各社の伝手とゴミみたいな人権意識が欠如している記者を数名を不知火フリルの映画の記者会見に仕込んで欲しい」

「は?」

ナニヲイッテイル?

不知火フリル?マスコミ?

何を考えている?

頭の中に疑問符が無数に浮かぶ。

何故こいつが不知火フリルを破滅させたいかのような提案をするのかが意味が分からない。

理解出来ず思わず振り向いて見上げる。

息子…いや、他者として現れた斉藤硝太は真剣な顔をして俺に取引を持ち掛けて来た。

「貴方はアイさん達B小町を地下アイドルからドーム公演出来るレベルまで育て上げるプロデュース力がある。

もとい、その源泉たる人脈は未だに生きている。

ーーーあるスキャンダルを揉み消したい。力を貸してくれませんか?斉藤壱護さん」

眼差しは鋭く、だが懇願を込めた目で俺を見ていた。

「アイさんの…あの人の名誉と願いを…兄さんと姉さんを守るための嘘を暴かせる訳にはいかないんだ」

ーーーーー

「ハァ⁈有馬かながスキャンダル⁉︎

なんでそれがアイの出産の暴露に繋がるんだ⁉︎」

「斉藤さん、僕に言ったろ?兄さんと姉さんは復讐に走ってる、て。兄さんはかな先輩の名誉を守るためにそのバーター記事としてアイさんの秘密の暴露を選んだ。真の目的は復讐の対象を炙り出すため」

頭が痛くなる。

ルビーのチームメイトの有馬かなのスキャンダルの真偽はさておき、被るであろう有馬かなの不名誉と自信の母の名誉と願いを暴いた結果を天秤に賭ける行為。

アクアは有馬かなを取り、そして俺が狙っていた奴を誘き出す誘蛾灯にアイを使おうとしている、という。

「…なあ硝太」

「言いたいことは分かるよ。『何故おまえがそこまで分かるのか』だろ?

僕は今は探偵の助手だ。調べていたら色々掴めるさ。

…兄さんは秘密主義だけど身内には甘いからセキュリティガタガタだったよ。僕を脅威と考えてなかったみたいだし、接触を考えている記者の情報とかね…

そいつを始末してやりたかったなぁ」

どこかイタズラの真相を明かすイタズラっ子のような笑みを浮かべる硝太。

…数日前にミヤコを思い怒りをぶつけ、俺の言葉にショックを受けていた子どもの姿は無かった。

「殺してないよな?」

「殺さないさ。始末、て言っても色々やり方はあるんだよ?社会的に抹殺したりとかね。ただ1人、2人始末ても変わらない。

ならこちらもインパクトがあるものをぶつける必要がある。

ーーー恋人の不知火フリルを使う。

当人は了承済だ。

ただこれだけでは荒れない。

大事に、凄まじく炎上させないといけない」

「おまえの彼女が不知火フリルなのもびっくりだが…

まあ、読めて来た。

先にぶつけるのか?

不知火フリルのスキャンダルを。

だが、手を引いているのがバレたら苺プロが滅ぶぞ?

おまえの存在だってそうだ。社長の息子。

相手の格は余りにも高いし、事務所や関係各所の影響力も凄まじい…

ミヤコを苦しませる気なら殺すぞ、硝太」

血の繋がりがある存在に殺意を向けるのは初めてだ。

だが硝太は困ったように笑うが、意に介した様子が無い。

「既に僕とフリルは写真が撮られてる。少々際どい写真も。

わざと撮らせたのもあるけど、

ある程度の火種はこれで燻ってる。

相手が一般人だから火種止まり。

だけど、国民的トップタレントの熱愛というネタで燻っている中、

フリルの仕事のインタビューでサクラの記者に質問させて欲しいんだ。

『清純派を売りにしてあの写真は何だ?』、と。

この国のマスコミは正義の味方を気取りながら粗探しが大好きだから、すぐに飛びつくと思うよ。

出る杭を打つ為に出ていない杭を打ちに行く口実探しに行くし…

そして爆発させるけど、鎮火のために貴方の力も必要なんだ。

関係各所の手回しのためにも」

「嫌だね。おまえは安全なところに居るじゃねぇか。恋人を利用してるだけのクズに…」

「当然僕も乗り込むよ。僕が悪者にならなきゃ意味が無い。

そして斉藤さん、僕にヘイトが向く様に仕向けてくれる人達が必要なんだ。

頼むことが多いけど、貴方には

会見で火種役になる記者、

アフターフォローに使える関係各所の手配と準備、

そして僕にヘイトを向けるようなことが出来る人達…

これらを用意して欲しい…そしてお母さんを守れるような準備も」

色々お願いして悪いね、

と申し訳なさそうに笑う硝太。

無茶苦茶過ぎる。無茶苦茶過ぎる、が…アイの願いを守るためなら仕方ないのかもしれない。

乗るか。この大博打に。

「…アイを守るため、ミヤコへの危険を逸らすためならやってやる。同時にアクアを守るためにな。

企画者のおまえは自分の身は自分で守りやがれ」

「…ありがとう。フリルも覚悟の上で僕に委ねてくれたんだ。

貴方に断られたら色々な手段を考えないといけなかったし、

信頼置けない人を使う羽目になるところだった」

こんな博打うち好きになった不知火フリル、男を見る目無いんじゃなかろうか。

「…硝太、タイムリミットは?」

「5日。貴方が不穏なことしてるの知ってるよ。その人達使ってくれない?」

「馬鹿野郎!準備がいるんだぞ⁉︎

こいつ…わかった!作戦会議だ!!風祭探偵にも連絡しろ!

あいつの伝手…秀知院を使わせてもらう!!」

「秀知院…あ、そうか…その手が…」

自分の自爆用に用意した手練手管をまさか丸々息子に掻っ攫われて利用される羽目になるとは思わなかった。

思わなかった、が…


息子と顔つき合わせてああだこうだ言い合うのは…楽しかった。


おまけ

「ハァ⁈かれん達を…秀知院の仲間をそんなことに使えるか!!」

「すまない!無茶を承知だ!!だが、アンタ達が掴んだ『ブギーマン』、そしてそれに繋がっているに存在にアクアを狙わせる訳にはいかない!!頼む…」

「〜!!わかった!分かりましたよ!!

…昔の仲間達に声を掛けます。後輩の妹を守るため、依頼者の家族を守るためです。

こんな茶番、これっきりにしてください」

ーーーー

「…そんな訳だ。すまない、かれん。力を貸して欲しい」

「ええ、宜しくてよ。豪くんのお願いなんて何年ぶりかしら!頑張らせて貰いますわ」

「ありがとう…すまないな」

「本番は任せてくださいな。フリルさんとその想い人は私が護りますわ」

ーーー

「不知火フリルを弊社、の味噌のイメージキャラクターになってもらうわ。男が居ようが関係ないない!むしろ健康的なイメージつくでしょ!!

そりゃあ若い子に恋人いてもおかしくないし、芸能人だって人間なんだからむしろその風潮がおかしいの」

「ああ、俺も同じ意見だ。白銀にも声掛けるよ豪。俺たちは味方になる」

『すまない、三郎、巨瀬。巻き込んでしまって』

「言い方悪いけど私達は寛容さを見せることでイメージアップになるから悪い話じゃないのよね。上手くいけばギャラ代がある程度浮くかもしれない。

それに、私の会社は大きいから私達が動くことで『不知火フリル達を責める人達、企業がおかしい』てなるし。

ファーストペンギンが大事なのよね」

「そういうことだからこっちは任せろ!」


『重ねてすまないな、かれんも手伝ってくれることになってる。四条さんにも…いや、新婚夫婦に悪いか…弟の四条には言うだけ言おうと思う』


「四条くんまで出したら大事過ぎない?

まあ私達に関しては気にしないでよ、秀知院の仲間でしょ?

お詫びに子ども達にお土産買って来てくれたら許してあげるから」

「元気だからさ、大変なんだわ…」

『ははは、今度必ず顔見せるよ。まさかおまえ達がなぁ…』

「俺からしたらかれんさんとおまえがもどかしいよ」

『…そう言わないでくれよ』


おまけの登場人物

巨瀬エリカ…大手味噌メーカー社長の娘。次期社長と目されている。

原作と異なり豊島三郎とくっついた。子どもを儲けている。

巨瀬(旧姓 豊島)三郎…白銀御行、風祭豪の友人。原作では勘違いして紀かれんに告白してダメだったがエリカに勘違いして生じたバタフライエフェクトでこちらは上手く行き付き合い、卒業後エリカの会社に勤めてそのまま逆玉。

紀かれん…エリカの友人で大手出版社社長の娘。表現の自由を履き違えた行為を嫌う。風祭は「良い人」

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