煩悶②
「あかねさんの話は終わったけど」
ルビーは携帯を弄り始める。どうやらかなり手持ち無沙汰らしい。
「お兄ちゃんの気持ちはどうなの?」
油断しているところにいきなりの難題をぶち込まれた。
俺の、気持ち。
「個人的にはすっぱり諦めた方がいいと思うよ。あかねさん優しいし、わざわざアプローチして、突き放されなくても友達では居てくれるでしょ。」
それに関しては同意だ、同意できてしまう。あかねの態度からは壁を感じたが、悪意や敵意までは感じられなかった。距離感を保って交流を持つことは、普通に出来るだろう。
「俺は…」
自分から別れた相手だ。それでいいはずだ。
「やっぱり、諦められない」
なのに
口から出た言葉は、まるで正反対で
それが腑に落ちてしまった事に、一番驚いた。
「なんで?」
ルビーは表情を変えない、僕の答えがわかっていたように
「俺はあかねの事を愛してる。他に理由がいるか?」
やっと、自分の気持ちに整理がついた。
ルビーの問いを受けて、俺の頭の中で思い返した事があった。
あかねの不思議そうな顔、怒った顔、泣いた顔、笑った顔…そして、幸せそうな顔
俺は彼女に幸せになって欲しい。そして、幸せにするのは俺がいい。
恥ずかしげもなく晒すにはあまりにも醜い独占欲。それが偽らざる本音だった。
「必要ないでしょ。私から言える事はこれで終わり!あとはお兄ちゃんの頑張り次第だよ!」
ルビーは少し張り切って話を切る。俺もやるべき事を見つけたので、すぐに動き出さなくてはいけない。
リビングから部屋に戻る前に、一言だけ言い残す。
「ルビー、ありがとう…それと、ごめんな。背中を押すような真似させて。」
「…そう言うとこばっかりすぐ気付くんだから」
『アクアくん、苦しそうにしてない?』
『無理してても平気な顔しちゃうタイプだから、ちょっと心配になっちゃって』
『別れた私が言うのもなんだけど、ルビーちゃんにはお兄さんの支えになってあげて欲しいの』
「まあ、脈はあると思うから、そんなに悲観することも無いよ。『お兄ちゃん』」