無題
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ペパーの目を見てキスしたいアオイちゃん概念(仮)
ただチューしてるだけですゴメンネ
今日こそは絶対、絶対負けない。
そんな意志の炎を胸の内で燃やし、アオイはペパーの部屋へと踏み込む。
今回の彼女には秘策があった。
内容は簡単で、『キスをされる時に目を閉じない』というものだ。
目を閉じてしまえばあっという間に彼のペースに持っていかれてしまう。彼女の身体はそれをよくよく理解していた。
つぶらなひとみで攻撃力が下がるのは、きっとポケモンもヒトも同じだろう。自分の瞳がつぶらかどうかはさて置き、効果があるか試す価値は大いにある。
促されるままペパーの隣に腰掛け、まずは何気ない世間話。
今日もネモとバトルで盛り上がった。試作したサンドウィッチが中々の出来だった。ボタンのイーブイ達に癒されてきた。スコヴィランの頭同士が喧嘩をして大変だった。その他諸々。
暫くすると話す事も無くなり、ただただ寄り添いベッドに腰掛けるだけの時間が訪れる。
……来る。もうすぐ、勝負の時が来る。
アオイ、と名前を呼ぶ愛しい人に顔を向けた。
今日こそは絶対、絶対負けない。
そんな意志の炎を胸の内で再度燃やし、アオイはペパーの瞳をじっと見つめた。
「……?」
ペパーは思わず口付ける動きを止める。
いつもならキスの時に身体を縮こまらせて目を瞑る彼女が、いつもと違う表情を見せている。
丸い瞳に潤ませて、熱っぽくこちらを見ているのだ。
見たことのないそれに、ペパーはすっかり見惚れてしまった。メロメロであり、まひでもある甘い甘い心持ちだ。
そんな心の赴くまま、可愛らしい恋人の頭を撫でる。
「ぇ……」
アオイは動揺してしまう。
キスをされると思って身構えたのに、ただ頭を撫でるだけ?この雰囲気になったら、それじゃ全然足りないのに。
「……」
柔らかい髪を堪能する様に撫でていたペパーは、眼前の少女が見せた動揺を見逃さなかった。
あぁそうか、キスされると思ったから動揺してるのか。
自分の一挙手一投足にそこまで可愛らしい反応をされて、嬉しくないはずがない。
もっと、もっと可愛い反応をするアオイが見たい。
欲に突き動かされ、頭を撫でていた手をアオイの顎へ移動させる。
親指でつぅと期待に震える唇をなぞると、ピクリと小さな身体が跳ねた。
そのまま指で柔らかさを堪能していると、焦れたアオイにパクリとそれを咥えられてしまった。愛らしいことに甘噛みのおまけ付きだ。
「欲しがりちゃんだな」
手を離し、お待ちかねの唇を彼女に与える。
「……ふ、うっ」
いつもは目を閉じ身体を委ねるところだが、今日は違う。
降りそうな瞼を何とか持ち上げ、ゼロ距離でその緑色を見つめ続けた。彼のスウェットをしっかりと握りしめ、身体を持っていかれないようにも注意を払う。
「はっ……あ、え……?」
またもやアオイは動揺する事になる。
食い尽くすようにこちらを貪る口が離れ、舌だけがアオイのそれを擽り始めたからだ。
「ピクニックキス、つーんだって」
愛らしい反応をする恋人にそう言うと、小首を傾げられた。
「ベロ同士でさ、ぐるぐるしたり、擦り合うんだと」
覚えて間もない知識を実践と共に流し込むと、アオイは応える様に小さな舌を懸命に動かし始めた。
慣れないキスに動揺したアオイが、当初の予定空しく目を瞑りペパーに身を委ねる。
そのままいつもの流れへと移行してしまった事は、もはや言うまでもないだろう。