無言

無言


 戦艦フランジィの地下奥に1つの部屋がある。その部屋には不自然な程に重く、冷ややかな鉄の扉が取り付けられており、まるで近づくなと言わんばかりに威圧感を放っていた。そこに何者かの足音が近づいてくる。

 足音の主はルフィであり、その扉をギィィと音を立てながら開いた。

 中から薄暗くて無機質な部屋が現れる。

「お前ら…元気か」

 呟くようにして話しかけるが、その薄暗い空間に人間はいない。代わりにあるのはいくつも並べられた石棺だ。

 ここはかつての仲間が眠っている部屋、そして彼が唯一「麦わらのルフィ」に戻れる場所でもあった。

 彼はしゃがみ、憂いのある笑みを浮かべながらゾロに話しかけた。

「なぁ、少し前にお前と対決したんだよ、あいつの方向音痴は変わらなかったぞ…何を言ってるか分かんねェって?そりゃそうだろうな…」 

ゾロは何も答えることは無く、石棺の中で静かに眠っている。

「この前サイのおっさんが悪魔の実の能力で昔のお前らを連れてきてよ…一瞬お前らが生き返ったのかと…それだったらどんなに良かったことか」

 誰一人としてルフィに言葉をかけることはなかった。みな骨となって、じっとその場にいるだけである。彼は石棺を撫でるようにして擦りながら続けた。

「みんなごめんな、夢を叶えさせることができなくて。何が四皇…!何が海賊王…!仲間一人救うことさえできないおれは大馬鹿者だ…!」

自らを呪うようにして話すルフィ。しかし、

「だけど…海賊王目指してみるよ…こんなおれでも、お前らの分まで生きて海賊王になって見せるからよ!だから…それまで待っていてくれないか?」

 返事をする者はいない。それでも彼の瞳には黒くて冷たい意志がメラメラと燃えていた。

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