「無尽のエネミー」
イレギュラーこと、ニックの虫への愛と憎悪の原因。
性質としては無尽蔵にゼロから湧いて出る。殺しても殺しても一生湧いて出る。そして放置すると大増殖し始める危険なエネミー。
ことの始まり
東アジアの外れの集落で育ったニックは、親と兄弟からあまり良い扱いを受けていなかった。(家族としてちょっとギスってた)
とはいえ誕生日は祝ってもらえるし、周りの大人からはよくしてもらった。
そんな時に出会った小さな虫のエネミー。怪我をしたのでこっそり家に持ち帰り手当てしたところ、非常に懐いた。
それからニックは家族に内緒で育て始めた。
しかし、発覚
無尽のエネミーは日を追うごとにその数がだんだん増えていく。誤魔化しきれないほどに。
やがて兄弟にバレて親にチクられる。
当然叱られた上に、頬をぶたれて、お仕置きとして物置部屋でしばらく反省するように言われた。
そして当然無尽のエネミーも処分するよう言われた。
だが、ニックにそれは出来なかった。なぜならもう無尽のエネミーは大事な友達だから。
そして大災害へ
エネミーを処分しろと言われたことに段々と怒りが湧いてきた。どうして友達にそんなことをしなきゃいけないんだと。
ニックは心の中で、ふと、一瞬だけこう思ってしまった。
………翌日、無尽のエネミーは集落どころか地区一帯を覆い尽くす夥しい数へと増殖し、民家諸共、住民を全て飲み込んで虐殺。当然家族や兄弟も死んだ。
そして無尽のエネミーは虫に喰われてボロボロになった死体をニックの前で運び込み、こう言った。
無尽のエネミーがニックを慰めようと行動した結果がこの惨状である。
ニックは自分を思ってくれた無尽のエネミーへの愛と、家族も集落のみんなも全員殺した事への憎悪で、情緒がめちゃくちゃになった。
現在に至る虫への歪んだ感情はこれが理由だった。
覚醒
異能「OVER POWER」の発現。
愛と憎悪二つの相反する感情に引き裂かれ、壊れかけたそのとき。
ニックは突如として強烈な自我に目覚め、冷静に、冷徹に、無尽のエネミーを殲滅することを決意する。
全身から体内まで虫で埋め尽くされても、異能の力で死ぬ事はなく、無尽のエネミーが全滅するまで潰し続けた。
哀しみの怨嗟を無限に聞き続けながら殺し尽くす。
よもや一生分暴れ回ったその先にあったのは虚無感だった。
家族は死に、友達も殺し、集落は消え、全てをリセットされて。
これは少年期の話。
人生は長い。