烏と太陽(月)

烏と太陽(月)


SS編の藍染暗殺事件に対する俺くん視点。

☆ ☆ ☆

いつも通りの朝を迎えて、のんびりと準備をする。そうして、出勤した俺の耳に耳を疑う報告が入ってきた。

「藍染隊長が亡くなられたらしい」という報告が。

それを聞いた時、嘘だ。と思った。あの人が負ける存在なんて総隊長ぐらいしかいないはずだ。誰に殺られたのか尋ねると、それは分からないという。既に亡くなっている藍染隊長を雛森3席が発見したのだ、と。

それを聞いた時、直感的に「生きている」と思った。それは、あの人に拾われてそしてあの人が居なくなってからこれまで育ててくれた藍染惣右介という人物に対する信頼でもあり、願望なのかもしれない。

けれど、その死体を見ていない今の俺にとっては「藍染惣右介」という人物がそう簡単に殺せる訳が無いという気持ちでいっぱいだった。


あの人が親だというなら、惣右介さんは兄のような存在だ。そして、“俺”という存在が確立して一番長く接している人物でもあった。

斬拳走鬼、全てを兼ね備えた人。あの人に追いつきたくて、その全てを鍛えたのだ。自分の始解の都合上、斬は苦手で鬼は得意といったように偏りは出てしまったけれど。


手早くあとの準備を済ませ、暴走した雛森ちゃんを止めてくれたという日番谷隊長に挨拶しに行かなければ。雛森ちゃんの様子を伺いに行くのはその後でいいだろう。本当なら、遺体を確認しに行くべきなのだろうけれどそれを直視したくなくて思考から排除した。

 

挨拶しに行った先で日番谷隊長と惣右介さんの遺書を見つける。確認のため覗いていれば、大きな落とし穴がここにありますよと自己主張してるようなそんな文面だった。確かにこの書跡は惣右介さんのものだけど、なんで雛森ちゃんにだけ遺書を残したんだろ。雛森ちゃんに書く余裕があるなら、俺とかにも遺してくれればいいのに。

そんな感情を吐き出すようにため息を一つ。

遺書を見て、惣右介さんが生きているだろうという思いは更に強くなる。思わず零れた「本当に死んでくれてたら良いのになぁ。」という言葉は何処か寂しい響きを伴っていた。


結局、あの遺書は雛森ちゃん宛だからという理由で本人に手渡されたらしい。あの後雛森ちゃんの様子を見に行けばまだ、惣右介さんが亡くなったことを信じられないのか茫然自失している様子だった。まあ、惣右介さんへの入れ込み具合を考えれば仕方の無いことだけれど。個人的にはあの人ほど溺れると怖い人はいないと思う。あの人とは適度な距離感で接するのが1番だ。まあ、俺が言っても説得力がないけれど。


日番谷隊長には反対されたけれど、雛森ちゃんを泳がすことで惣右介さんをおびき寄せることが出来る。雛森ちゃんには悪いけれど、あの人が瀞霊廷に刃向かうと確信するために餌になってもらう。

あの人の斬魄刀の本当の能力は“俺たち”には効果をなさない。それは今この時も“俺たち”は増えているからだ。その全てに対して能力の効果をもたらすことは実質不可能に近い。


それはいざと言う時に彼女を助けることが出来るかもしれない、ということだ。助けることが出来る、と断言できないのが痛いところだ。もし能力を使わず不意打ちで攻撃されてしまえば、助けることは難しい。

自分の事情を誤魔化してその事を日番谷隊長に話せば、胡乱げな目で見られたが最終的にはうなづいてくれたから良しとしよう。




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