炬燵攻防戦

炬燵攻防戦


※※※懲りずに煙崎×野浦のSSです。2人がお付き合いしている前提です。閲覧注意です。キャラ崩壊してます。多分に妄想を含んでいます※※※












洗い物を終えてリビングに行くと、そこには炬燵でぬくぬくとクロスワードパズルを解いている恋人。集中している横顔はちょっとかっこいい。

「総助さん、少し炬燵から離れてもらってもいいですか?」

「ん、テレビが見やすい位置の方が良かった?今どくよ」

パズルを中断して炬燵から出ようとする彼を制止し、中途半端に空いた彼と炬燵の間にできた隙間に体を滑り込ませる。彼からは抗議の声を上がったが知らん振り。

「んー……いいですね。背中も暖かいし足元も暖かい。最高です。あ、もう少し前に来てください」

体をほぐすように伸ばした後に彼に体を預けてもたれかかる。いつも着ている服のせいか、それとも着やせするタイプなのか。細身のように見えて案外がっしりしている、と背中に当たる硬い胸板の感触を感じながら思う。

「…恵美。俺クロスワードやってたんだけど?」

「…………」

知らんぷりを決め込む。せっかく恋人が甘えてきてるのだ。普段から周りにはキザでスマートな人で通しているのだから自分にもエスコートしてくれたっていいはずだ。

「……まったく、仕方ないな。何をご所望ですか、お姫様?」

「…それじゃあみかんを剥いてください。あ、ちゃんと食べさせてくださいね」

「はいはい、仰せのままに」

「はいは一回ですよ」

「はーい」


とはいえ、彼からはテーブルの中心にあるみかんには手が届かない。手渡すとお礼を言ってから剥いてくれる。わたしが剥いてって言ったのに変な人。待っている間は手持ち無沙汰で、自然とみかんを剥く手に目線がいってぼんやりと見つめる。

「手、やっぱり大きいですね」

「そうかな。そりゃ君に比べたら大きいだろうけど」

「普通の男の人より大きいですよ。比べたことありませんか?」

「あー…どうだったかな。男と手を合わせること、そうそうないし」

総助さんと仲が良い男性といえば同い年の狼谷さんや有賀さん、黒乃さん辺りだろうか。4人集まって賑やかに話してたりするところを見かける。でも手の大きさ比べなんて大きくなるとしないのかな。煙崎隊の坂田くんや双海くんともやっているところを想像したけれどあの2人はなんだか嫌がりそう。

「……ふふ、確かに。でもお父さんより大きいかもしれません」

みかんを剥き終わった左手を両手で掴んで労うようにむにむにと指圧をすると、くすぐったそうな声が頭の上から聞こえてくる。

「ほら、右手が残ってるじゃないですか。食べさせてください。利き手じゃなくても掴めますよね?」

「わがままなお姫様なことで」

みかんを掴んだ右手の親指と人差し指。それごと口の中に含んで舌でみかんを絡め取る。指には逃がさないよう軽く歯を当てた。

ゴツゴツと節くれだった指は剥いた時に果汁がついたのか、少しだけみかんの風味がした。背中に感じる鼓動が速くなった気がする。

「……わがままだけじゃなく食い意地も張ってたのかい?」

「食べることは好きですから。総助さんの可愛いところも見れましたし」

「勘弁してくれ……」

顔は見えないけれど、きっと赤くなってるだろう。早くなった脈拍がそれを教えてくれる。

遊んでいた左手を持ち上げて、頬に当てる。大きくて、頼りがいがあって、信用できる手。

キザなフリしてるくせに真面目で褒め言葉に弱い人。

「それに、可愛いっていうのならそっちのことだろ?いや美人って言った方がいいか…?物腰は穏やかだし、頭はいいし、戦力的にも頼りになるし。あとスタイルもか。かと思えば猫にフラれて落ち込んでる可愛いところもあるし」

……そのくせ、人を褒めることには躊躇がない。後頭部で硬い胸板に頭突きをする。痛いよ、なんて言葉が返ってくるけど気にしない。

自分の鼓動と、彼の鼓動が同じくらいの速さで脈打つのを感じながら目を閉じ、彼の左手と自分の左手を絡めるように握る。

居眠りしても大丈夫。きっと彼がベッドに運んでくれるはずだから。


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