灰被りなんてガラじゃない
『また今年もかい?』
『…うっせェ』
俺だって、俺だってなァ!?お前が相手なのは嫌なんだよ!
でも、でも…。
『力抜いてね』
『…ッあぁ、』
現役時代一番の宿敵。
良血のボンボンのお前と、零細血統の俺。
何度も何度も勝ったり負けたりして、…ンで引退レースは俺が勝って。
自分に寄ってくる牡馬どもをいつもブチ殺さんばかりに暴れていた俺が、唯一お前を前にしたら大人しくなるからとハジメテの相手にさせられて。
それで、…これで何回目だ?
『ねぇ』
『ッ、なん、だ』
『大丈夫?痛くない?苦しくない?』
『へ、きだわ、ボケぇ…』
『…そう、ならよかったぁ』
くそ、や、ばっ…。
『ぅ、ふ、う、う゛〜……!』
『どうしたの!?』
生理的に泣いてしまう俺に焦った声がかけられる。
雰囲気でワタワタしているのが分かるのにちょっと、いやだいぶイラッとする。
『え、え?!や、やっぱり痛かったの?ごめん、抜く…』
『抜くなボケがァ!』
『あうっ!?』
抜かれようとしたのを引き止める。
『え?え?』なんてうるせぇンだよお前!
『もっと激しくシろやァこの粗チン!
ゆるっゆるゆるっゆる動き続けやがって…!
受け身のこっちの身にもなってみろ!!』
締め上げていると『ちょ、痛い痛い痛い!』と聞こえてくるが無視だ無視。
『ふ…、い、痛かったぁ』
『…フン!』
『で、でも、僕キミのためを思って…』
『俺がイイって言ってんだからさっさとシろ!』
『はひぃぃぃぃっ!!』
叱り飛ばすと同時に強く来られる。
それにクッ、と一瞬呼吸が止まる。
だが現状が止まることはなく、
『はァ…っ、』
『っぐ、お゛……、』
一回一回のストロークのたびに脳髄が揺れる。
バリバリと激しい電流がかかり、あられもない声が出そうになるのを必死に嚥下した。
『うぅ…、ごめん、ごめんっ!』
『ぅぐ、か、ぐぅ゛…っ!』
謝る相手の声に『うるせぇ!』と言おうとしても口は開けない。
開いたが最後、変なことを言ってしまいそうだから。
でも、
『ねぇ、』
『っ、……っ、』
『キミの声、聞きたい、なぁ』
そう、子犬がオネダリする時のような声で乞われれば、
『な、ンだよ…っはぅ!』
『……僕、キミの声、好きなんだ』
『は、好き、なんて、きもちわる…っ、ヒ!?』
『そういうとこも可愛いね…』
『う、うるしぇ、うるしぇえっ…ッ!』
『ふふ…、もう呂律回ってないじゃない。…可愛い』
『───────っっ!!』
その言葉を言われるたびに視界がグラグラと揺らぐ。
鼓膜を通って、脳髄が痺れて、身体が熱くなる。
『…そう言えば聞きたかったんだけどさ』
『ぁ、っは、ンぐ、う゛ぅぅ……!』
『どうして毎年僕が相手なの?
僕じゃなくても、相手してくれるのはいるだろう?』
低い声とともにストロークが強くなる。
痛いくらいに強い。
答えろ、と行動で示してくる。
『ぁ、あ゛』
言わなくちゃ、許してくれない。
そう悟った俺は、
『……の』
『ん?』
『ぉ、まえじゃなきゃだめなのォ…っ!』
『へ?』
『おまえのが、よすぎて…ッ、ほかのあいてにしてもォ、ものたり、なくて…ッあ゛ぁっ、!?』
『…へ、へぇ、……ふぅ〜ん?』
『ひぎゅっ!?』
…やべ、なんか、地雷踏んだのかもしんねェ。
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俺:
生涯牡牝混合に出続けた系牝馬。戦績はゴリウーだが体格はゴリウーじゃない。零細血統の生まれ。
宿敵である良血くんに現役時代はオラオラでよく絡んでた。
繁殖牝馬になったあとは良血くんにメロメロになっているが認めたがらない。
けど相性が良すぎて最終的に良血くんの正妻化する。
性格はツンデレ。
良血くん:
宿敵である俺にちょっと重めの感情抱いてる系好青年牡馬。
俺に対する感情ははじめ『僕に勝つなんてあの娘凄いなぁ』だったが…?
俺にベタ惚れしてるため、俺に色目を使う牡馬がいるとモヤ…としていたがそのたびに俺自身が蹴散らしてた(物理)なので大丈夫だった。
今回、俺の本心を知ったのでニコニコご機嫌に。
普段はキラキラ王子様だが、ベタ惚れしてる俺の前だけはヘタレな大型犬になる。