【灯】背水

【灯】背水

初めてのss

日が沈む中、私は家の者数名を連れ下へ下へ、階段を下っていく

「もうすぐです、本当に行くんですね」

「ええ」

短く返事をしつつ首肯する男をちらりと見る

首にかけたチェーンを服越しに握りしめている手が震えている

まぁ、そうもなるだろう。家を歩いている時にこの男が「婚約者ができたんだ」と、友人と話しているのを見た覚えがある。だが、この男も責任感の強い性質だ

未来の妻を一人残して逝くだろうと知っていても、子供一人に死地に赴かせる事に抵抗があるのだろう

馬鹿だ。本当に。私の寿命が多少削れようと、この者たちが生き残った方がよっぽど良い。そして、男達の気持ちがうれしくて強く断り切れない私も、本当に

重い扉に手をかける

「日没まで、残り十分です」

男が言う

「分かりました、、最後通告です。引き返すなら、今ですよ」

少しだけ、男たちが身動ぎする。しかし、誰一人引き返すことなくこちらに強い決意のこもった視線を向けてくる。馬鹿だ

「、、では、作戦の通りに」

そう言いつつ、扉を押し開き、全員が入ってから閉じる

今夜は新月だ。私は見たことがないが、月が無い分星がよく見えるらしい

生まれた時からだ。新月の日はこの地上から遠く離れた地下空間に隔離される。この日は、私が呪霊の誘蛾灯になるからだ。物の影響を受けず、最短距離を進んでくる呪霊が、進行中に出す被害を最小限に抑えるため、この広大な地下空間で日没を待つ。

「日没まで、残り五分です」

さらに、扉をつけ、戦闘終了まで開かない縛りにより、戦国の名将が利用したという【背水の陣】の縛りを発動させる。扉を開ける前に最後通告を行ったのはそのためだ

「日没まで、、残り二分です」

先月は、未登録の特級が現れ、領域勝負になった後、私しかいない部屋を後にした。

「日没まで、、残り、一分」

『今度は、だれも死ななかったら良いな』

「残り、、十秒」

「ふぅ、、」

息を吐きつつ、座禅を組み、精神を落ち着かせる

「残り五秒、、四、、三、、」

カウントダウンが始まる

、、一

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