瀞霊廷アイス事変

瀞霊廷アイス事変

稲生紅衣メメ虎屋ダルヴァの主

─五番隊隊舎─

「おーい!スーちゃんおるか~?」

事務仕事に追われ比較的静謐だった五番隊隊舎に稲生五席の声が響いた

「はーい!!こっちにいるわよーー!!」

そして聞こえた五倍ほど大きい声でスーちゃんこと春野数慈は返事をした 書類の確認のために傍にいた藍染の脳は揺れた

その声を聴いて稲生が部屋の扉を開ける なにやら鈍く光る金属の筒のような物を持っており行儀悪く足で開ける始末である

「あらー!重そうな荷物ね!?大丈夫!?私が持とうか!?」

「...まずは挨拶をすべきだと思うよ春野さん 挨拶が遅れて済まない稲生五席 何用かな?」

結局目視する距離でも声量がデカい春野と少しメガネがずれている藍染に対し稲生は笑顔で矢継ぎ早に話を始めた

「ちょっと上がらせてもらうぞ藍染!で...ちょっとスーちゃんを借りても良いか?」

「良いですよ どんどん持って行ってください」

藍染はかなり食い気味に肯定し手で春野を促している

「もーダメでしょ!ちゃんと内容を聞いてからじゃないとダメよ!それでアタシは何をすればいいのかしら?」

「スーちゃんは始解で氷を作れるからのう この"れとろ"なアイスクリーム製造機を使ってアイスでも作って差し入れにしようと思ってのう!」

「えー!いいじゃない!?アタシいちご味が好きなんだけど作っていいかしら!?」

交渉はほぼ正面衝突のように受諾され やれ朽木の商店の良い苺を使おう やれ王道の"ばにら"を作ろうとドタバタと走って外へでていった

この後藍染は「作り過ぎないように」と言い含めるのを忘れたことを大量のバケツ入りのアイスと共に思い出すことになる


「そういえば...稲生ちゃんは大概の贈り物が凄い大盛りだけどどうしてなの?」

始解で氷を出すために踊っている最中にふと思いついたことを春野は聞いた

「五番隊の十一席に吾の流魂街におる時からの親友がおってな そやつが『贈り物と女の胸はデカくて質が良いほど良い 際限は無い...』となんか言っておったからのう...それの受け売りじゃ

まあそやつには滅却師の族滅の際に無理を言って相方になってもらって負担を掛け過ぎたし 嫁を貰った時に死神を一時止められるように手配をしてやってからはちょいと疎遠じゃな」

「そう...いいわね 昔からの友達がいるって」

二人はどこか遠い所を見ながらアイスを作成し続けた 市場から牛乳が品薄になるほどに...


─十一番隊舎─

訓練が終わり野郎どもの隊服を洗う赤髪の女がいた

野花桜梨である

「しっかし量がおおいね...」

「大変そうじゃのう あっ これ解れとるし縫っておくぞ」

「ああ頼むよ...って誰かと思ったら稲生のばあさんか」

稲生はちょくちょく十一番隊舎を訪れることがある 今回"は"サボりではなく四番隊に負担にならないように大量の怪我人(訓練で怪我)を治すのに稲生の堅獄鴉が便利であるためちょくちょく呼ばれるのだ

実際洗うために服を着替えさせられた野郎どもは怪我の量に比例して鴉が大量に貼りつきまるで鳥葬のようである

「毎度毎度お疲れ様じゃのう さっき干しとるのをみたが相当綺麗に出来ておる...服も冥理に尽きるじゃろう」

「まぁそう言ってもらえると嬉しいには嬉しいけどよ」

やはり訓練ですり減り物によっては大きく裂けている物もあり裁縫も洗濯も時間がかかりその間二人は話に花を咲かせた

「アタイとしては戦いってのは最後まで生き残って勝ってなんぼだと思うけど稲生さんはどう思います?」

「吾も同感じゃな 誇りは大事じゃがその我を通す力があってこそじゃと思う あっそうじゃ...お主に興味があればマユリがいくらでも改造してあげるヨとは言っておったがどうじゃ?」

「あぁー…考えとくって言っておいてくださいっす」

その後五番隊からアイスが消費しきれないというヘルプが出たため十一番隊全員でアイスを食いに行った


─五番隊─

今や五番隊隊舎は人でごった返していた ヘルプを適当に出したのと丁度仕事終わりだったためにあちこちから人が来たのだ

「無料アイスを食いに来ました!」

「恥ずかしいからやめなさい」

檜佐木が勢いよく配膳をしている部屋に入り東仙が窘めた

「檜佐木か!好きなだけ食っていくと良いぞ!吾が全額出しておるから安心せい!」

「...大体こういう妙な状況はお前が作り出しているな稲生」

檜佐木が来ているからか綱彌代継家も来た

「檜佐木副隊長 たくさん食べると思ってバケツ持ってきましたよ これに入れてもらいましょう 大丈夫です新品ですよ?」

檜佐木が来ているため御剣秀之助も来た 来過ぎである

「デカいから全部の味を良い感じに分割して入れておくぞー?」

「...入れてもらったからには全て食べるように」

「東仙隊長!?俺こんな食ったら死にかねませんよ!?」


そんなこんなしていると京楽春水が声を掛けてきた

「いや~仕事ちょっと残ってたけど抜け出して食べるアイスは美味しいね!これでちょっとほろ酔い出来るお酒があったりすると嬉しいんだけどね どう思う檜佐木君?」

「俺は仕事終わりですしちょっと酔うぐらいなら確かに欲しいですね...でも京楽隊長は怒られないうちに戻った方が...」

継家がやばいと感じ止めようとしたが間に合わず『欲しい』と行ってしまった檜佐木

「酒ならいま丁度手持ちがあるから分けてやるぞ!」

そう言って二人に日本酒一升瓶を四本ずつ檜佐木と京楽に渡した

「吾はこれだけ飲んでちょっとホワっとするくらいじゃからのう...あっ足りんか?」

「もう一本くらい大丈夫ですよ稲生五席!きっと二人とも沢山アイスもありますしお酒も進むはずです!」

「ちょっと御剣くん!?」

結局五本渡されてしまった檜佐木と京楽 ついでに京楽を追っていた伊勢七緒が合流した

「隊長...今日はお仕事は確かに少量しか残ってないので後日で良いですが その分仕事を抜けて貰ったお酒は完飲してくださいね」

「...言葉に気を付けておけばこうはならない 肝に銘じるためにも頑張って飲み切りなさい」

東仙と七緒に死刑宣告を言い渡され お酒を飲む前から青い顔をする檜佐木と京楽隊長だった






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