澆季溷濁①

澆季溷濁①



ーー出力最大・霜凪


辺り一面が裏梅の技で凍りつく。

氷に呑まれるは、虎杖悠仁と禪院真希。しかし、裏梅の術式コントロールは正確である。真希の方へと出力を偏らせた結果、虎杖へのダメージは減り、真希は全身を拘束されたにも関わらず、虎杖は怪我と引き換えに自由を手にした。

「宿儺ァ!」

「相変わらずつまらん癖にしぶとい小僧だ」

殺意を籠らせ叫ぶ虎杖とは対照的に、宿儺は笑みすら浮かべず、心底退屈そうに呟く。

宿儺は虎杖悠仁という男に対して興味がない。彼の中に閉じ込められていた時は腹いせに煽ったり虐殺の罪を噛み締めさせたりしたが、こうして伏黒恵という上質な器に入れた以上はもうどうでもいい。

術式が無いのも、本来はあり得ぬ宿儺の『檻』としての堅固さも、常人ではあり得ない身体的強度も、すべてタネは割れている。

あまりにも発展性が無く、伸び代もない。

故に退屈。殺意すら滾らせられない。

「裏梅。ひとまず肉体の調整をーーー」

背後の従者に振り返る宿儺だが、その言葉が止まる。

裏梅の顔が緩んでいた。まるで好物を前にした時の自分のように。


(興奮しているのか)


宿儺は裏梅のことをよく理解している。千年ぶりの再会でもそれは変わらない。


「裏梅」


そして、宿儺は今の退屈を凌ぐ為ならそれすらも利用してのける。


「小僧は貴様の好みだったか?」


宿儺の問いに、裏梅はきょとんとした表情を浮かべるが、すぐに意図を察し、邪悪に口端を歪めながら答える。


「ええ。あの身の程も弁えず必死に縋りつこうとする様...くすっ」

「昔のように少し遊んでやるか?」

「よろしいので?」

「俺ももう少し慣らしたいのでな。小僧が邪魔だったからちょうどいい」

「ではお言葉に甘えて」


邪悪に笑い合う二人を他所に、虎杖は駆け、宿儺へと拳を振るう。

その拳が届く瞬間、氷の壁が地面から生え拳を防ぐ。

その隙に宿儺はとん、と地面を蹴り氷の山へと向かい跳んでいく。

追おうとする虎杖の足が凍てつき、追跡を妨害する。

虎杖は、怯むこともなく足に纏わりつく氷を殴り拘束を解く。

「どけよ」

「痴れ者が。宿儺様のもとへ辿り着きたいなら私を倒してみせろ」



「くそっ...!」


身動きの取れない現状に真希は舌打ちする。

フィジカルギフテッド由来の身体能力を持ってしても、この密度の氷を破壊するには時間がかかる。数十メートル先で、この氷の主と戦う虎杖のもとへ向かいたいのに向かえないもどかしさに苛立ちが募る。

「あの女だけじゃねえ、宿儺もいるんだ。悪い悠仁、もう少し気張れよ...!」

「案ずるな俺はここだ」

真希のすぐ隣から聞こえる声に、唯一自由に動かせる首を向ける。

「宿儺」

「その氷が解けたら俺が遊んでやる。せいぜい気張れよ」

宿儺は手伝いはしないが邪魔もする気配がない。

いまの宿儺の興味が自分にあるなら好機だ。これで自分も虎杖もタイマンに持ち込める。条件は互角だ。そんな真希の考えを見透かしたように宿儺は笑みを浮かべる。

「見当外れの見立てをしておるかもしれんから言っておこう。ハズレは貴様ではなく小僧かもしれんぞ」

「あ゛?」

「裏梅の趣味の悪さは俺以上だ」


拳を振るう。氷を壊す。

吹きかけられる冷たい息を両腕を交差させ防ぎ、即座に蹴り上げ反撃するもかわされる。

その隙間を突き距離を詰め拳を振るうも、腕をいなされ、闘牛士の如くかわされる。

(クソ、やり辛え!)

虎杖の戦闘スタイルは徒手空拳を中心とした近接戦。生来の頑強さと高い身体能力を更に呪力で強化することで近接戦においては比類なき強さを発揮する。

対する裏梅は中距離型。氷凝呪法による様々なバリエーションの攻撃方法で距離を空けて変幻自在に攻めることができ、近接戦においても虎杖ほどではないが優れた身体能力を有している。

如何に虎杖が耐久性に優れていても不利な面は否めない。


(だからって挫けねえよこの程度で!)


虎杖の殺意のこもる目が裏梅

を射抜く。

だが、裏梅はなんら臆することなくくすくすと笑みを零す。


「その無謀さ、若さ故の勢いの良さ...宿儺様はああ仰っていたが、私は嫌いでは無いぞ」


裏梅は言いながら、印を結び見せつける。


(あれはーーー!!)


瞬間、全力で虎杖は駆け出す。

間違いない。あの掌印は『領域展開』だ。宿敵・真人が使った時は虎杖の中に宿儺がいた為に、あの手この手で対象外にされていたが、いまは宿儺がいない。故に発動される前に潰すしか無い。

虎杖の考えた行動は正しく、これ以上ないほどに最善最速だった。


だがそれでも裏梅の方が一寸早かった。

領域結界が展開され、虎杖の周囲が氷雪荒れ狂う白銀の雪景色へと変わる。

極寒の雪山。都会には場違いなその景色が、いま確かに再現されていた。


「ぐっ」


虎杖の全身に雪が纏わりつきその機動力と体力を削っていく。視界が雪に覆われ狭まっていく。

「我が領域へようこそ」

背後から聞こえる声に、虎杖は即座に拳を振り抜く。裏梅の姿は捉えた。だが、拳は空を切り、当てたはずの裏梅の姿が掻き消える。幻影だと気づいたのはその時ようやくだ。

「この雪が止むことは決してない。動けば動くほど体力が削られ死に近づいていくぞ」

再び背後からの声に、虎杖は拳を後ろに振るう。が、やはり当たらない。

そして、裏梅の言葉の通りに、少し動いただけで瞬く間に冷気が鼻腔や口を通じて入り込み内部から凍てつかせていく。

身震いが止まらなくなり、嫌でも歯がカチカチと鳴り始める。

(ッ...落ち着け、五条先生に教えてもらったろ!)

火山頭の呪霊との戦いの際、五条は虎杖に領域展開された時の対処法も教授した。領域内において呪力の付与された攻撃は必中となる。領域展開が使えない者が対抗するには、呪術で攻撃を受けるか領域外へと逃げる。それがセオリーだ。

(ここは山じゃない。街だ。だったら真っ直ぐ進めばいつかは抜けられるはずだ。それに領域は展開している側も呪力を大幅に削ることになる。あいつの呪力が尽きるまで凌げばーーー)



「ーーーとでも、小僧は考えているだろうなぁ」

裏梅の展開した領域結界を眺めながら、宿儺はニタニタと笑みを浮かべる。領域展開は外部からの侵入は容易いが、入るまでは中の様子を見ることはできない。にも関わらず、宿儺はまるで全てを把握しているように話す。

傍で、拘束を解きつつ睨みつけてくる真希にもわかるように宿儺は説明を始める。

「奴の領域展開はさして強力ではない。例えば、貴様にその火傷を刻んだ火山頭の呪霊。奴くらいに洗練された領域精度があれば難なく領域を塗り潰せるし、簡易領域でもあれば時間稼ぎどころか充分に対抗できるだろう。だが真髄は直接の殺傷力ではない。持続力だ...ケヒヒッ」

「なに笑ってやがる」

「いや、思い返せば返すほど、奴の性格の悪さが出ているなと思ってな。あの領域は強者に対して使うものではなく、弱者を弄ぶものだ。奴は決してあの領域内で大技を使わん。使うのは、雪荒む結界を維持する分だけの呪力だ。そして元来の呪力量と奴の呪力コントロールの巧さが合わされば、俺以上に領域を維持できる。通常の術士が5分ももてばいい方だが、奴の持続時間はどうだと思う?」

「知るか。もったいぶってんじゃねえよ」

真希の言葉に宿儺は笑みを深め答えた。

「1時間だ」


指が動かない。全身が節々から錆びついたように軋み、痛み、冷気を吸い込んだ内臓が凍えを隠せない。

どれだけ歩いた。どれだけ時間が経った。

どれだけ力を使った。

如何に頑健な身体を持っていても、事前準備もないままに豪雪に放り出されれば瞬く間に体力は削られる。そして呪力もまた、無限に続くものではない。

限界だった。

(ああチクショウ)

身体が重い。意識も朦朧とする。全身は冷え切り、吐息も白い蒸気となって吐き出される。

このまま楽になりたいと心が叫びだす。

(ダメだ!動け!動くんだ!)

「よく耐える。並の人間なら1分ももたぬというのに」

背後からの声に拳を振るう。しかし、今度は裏梅の姿がかき消えることもなく、パシリと掌で受け止められた。

「先刻までの勢いがまるでないな。そろそろ温もりが欲しいのではないか?こんなふうな」

裏梅はするりと虎杖の懐に入り込み、背中にまわり、優しく抱き締める。「ほら、温かいだろう。私の体温は」

優しい声音と共に、接触部に熱が灯る。

人肌の温もり、凍てついた身体に染み渡る生者の証。

「ぐ、う、う、おおおお!!」

虎杖はそれを攻めの好機と判断した。そのまま背中ごと倒れ込み、裏梅を押し潰そうとする。だが、倒れられない。冷え込み力が入らない身体では、一部だけが温もりに包まれた程度では、裏梅に抵抗することができない。

「温もりが欲しいだろう」

裏梅は虎杖の身体を滑るように這い、今度は正面から虎杖の身体を抱きしめる。

「!?」

「私から離れない方がいい。そうしたらまた極寒地獄に晒されるぞ」

耳元で囁かれる声に、虎杖の頭の中で警鐘がガンガンと鳴り響く。だが、身体を侵食する温もりはそれを聞き入れさせてくれない。

(コイツは敵だ!)

それはわかっている。だが、それ以上に身体が冷えすぎていて理性よりも本能が勝ってしまう。何かを企んでいるのはわかっていても、裏梅の腕の中は酷く居心地がよくて縋りたくなってしまうのだ。


「虎杖悠仁。宿儺様はああ仰ったが、私はそうは思わない。お前は頑張っている」

裏梅はそっと虎杖の口の傷に触れ、優しくなぞる。

「こんなに傷だらけになって、無茶を顧みず身体を痛めつけて...なぜ、そうまでして頑張る?散っていった者たちのためか?」


裏梅の両腕が虎杖を包み込む。とくん、とくんと心臓の音が聞こえてくる。人肌の温もりが全身に広がっていく。

(やばい、このままじゃ……)

その温もりに身を委ねそうになる身体を、意思の力で必死に留める。聞くな。こいつは敵だ。なにも考えずに倒せばいい。だがーーー


「その者たちは、お前が苦しみ続けるのを望むのか?」


こちらを労るような言葉に、イヤでも耳は向けられる。



氷の壁に背を預け、宿儺は真希に問いかける。

「『雪女』の伝承は知っているか?」

「...気に入った男を氷漬けにして持ち帰るアバズレのことかよ」

「まあ間違いではないな。地方によって仔細は異なるらしいが、大まかな概要は似たところだ。その雪女の伝承だがな、どうにも奴の趣味が広まった所以で生まれたものらしい」

「趣味だと?」

「ああやって極寒の中で心身を弱らせ、思考力を奪い、極限まで迫ったところで温もりを与え、甘言で懐に入り込み幸福を与える。そして満たされたところでそれを崩しその落差に壊される情緒を愉しむ...全くもって趣味の悪い女だ」

「ご主人様に似たんだろう、な!!」

拘束が解けると同時、真希は宿儺に蹴りかかり、宿儺もまたそれを腕で防御する。

その反動を使い、裏梅の領域へ向かおうとするも、宿儺は真希の足を掴み逆の方向へと投げ飛ばす。

「俺が遊んでやると言っただろう」

「ご主人様に尻拭いさせるとは、淫乱ビッチな召使を持って大変だな、オイ」

「構わん。揺るぎなき価値が一つあればそれ以上はなにも問わん」

「ッ...クソみてぇな口で恵みてえなこと言いやがって。テメェが恵を器にした理由がわかったよ!」

方や享楽に、方や焦燥と苛苛に包まれた拳同士が交差し、激突音が響き渡った。

裏梅は敵だ。優しい言葉には必ず裏がある。答える必要はない。それはわかっている。わかっているのに、この身を包む温もりに抗いきれない。

「ナナミンも...釘崎も、俺に託してくれた...たくさんの人を殺した俺に、それでも。だから、俺は...呪い(おまえたち)を殺すのが、歯車になるのが役割だって...!」

必死に敵意を剥き出しにする虎杖の頭を優しく撫でながら、裏梅は言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

「それを彼らが望んだのか?逆にもしも貴様がその二人の立場だったら、そうまでして呪いと戦えと願うか?...私ならば、願わない」

「ッ...!」

虎杖の唇が噛み締められる。もしも、自分が今際の際で。七海や野薔薇が大勢を殺し、憔悴しきっている最中で、それでも呪いを殺し続ける歯車になれと願うかと問われれば答えに詰まる。

あの時は眼前に真人という脅威がいた。だから、『諦めるな』『真人を倒してくれ』『自分の分まで生きてくれ』とは願っても、その後も傷つき続けることは望まない。

できれば、呪いが全て消えたら、また笑って欲しい。前を向いて欲しい。幸せになって欲しい。きっと、そんなことを願う。

「それでも、俺は、おまえたちを...!」

泣き出しそうなほどに震える声は、寒さのせいか、或いは揺らいだ感情のせいか。

その漏れ出た弱さを受け止めるように、裏梅は虎杖の胸に顔を埋める。

「世の中には仕方のないことはあるのだ。私が託す立場であれば、ここまで頑張ってきた貴様をなぜ責められようか。悪くない。誰も、悪くないのだ」

慰めるような言葉に、思わず抱きしめ返しそうになってしまう。だが、頭の隅に残っていた理性がそれを押し止める。

「やめろよ」

震える声と身体はもはやただの強がりでしかない。意思とは裏腹に、その両腕は裏梅を包み込もうとしてしまう。その胸に顔を埋めたまま、裏梅の口角が邪悪に吊り上がる。

「虎杖悠仁。仕方のないことなのだ。こうして、貴様が私の口から温もりを得ようとするのも、な」

裏梅は顔を上げると、そのまま虎杖の唇を奪う。

そして、そのまま口内を蹂躙し始める。じゅるじゅると舌と唾液が絡み合う音が漏れ、冷たさで痺れていた唇が瞬く間に熱されていく。

(あ...)

冬の寒さで凍えきった身体に与えられる人肌の温もりは実に甘美な毒だった。

(仕方のない、こと...)

裏梅がしきりに言っていた言葉が脳内を反芻する。どの道、こうも凍え切ってしまえば抵抗すら叶わないのだ。ならば、与えられる温もりに流されるほかない。そんな言い訳じみた思考すら生まれ始める。

「んっ...はぁっ...」

長く続いた口付けが終わり、裏梅の唇が離れていく。離れる唇と唇を繋いでいた糸が切れる。蕩けるような眼差しで見つめてくる裏梅に、虎杖は身体に熱が灯っていくのを感じた。

「心地いいだろう?」

再度、抱き寄せてくる腕に逆らわず身を任せると、背中を優しく撫でられる。一度開いた扉はそのまま開き続けるだけで止まることはない。もうすでに虎杖の一挙手一投足は裏梅の支配下にあるも同然だ。

「虎杖悠仁。仕方のないことなんだ。こうして、私の胸を目の当たりにして吸い付いてしまっても...な」

裏梅は着物をはだけさせ、その胸を虎杖の眼前に見せつける。小ぶりではあるが、整った形と桃色の山頂に虎杖の意識は釘付けになる。

「ぁ...」

気がつけば、舌を突き出していた。その先端が触れ、裏梅の乳首から伝わってくる温もりがそのまま脳を痺れさせる。

「ぁむ……んっ……んぅ……」

赤ん坊のように夢中でしゃぶりつき、裏梅の胸に顔を埋める。柔らかな温もりに包まれているような心地良さに、気がつけば涙が滲んでいた。

(ダメだ……)

頭の片隅で僅かに残った理性が警告するも、一度火のついた欲望は止まることがない。

「かわいい奴だな、貴様は」

覚えはないが、母の温もりとはこういうものなのか。撫でる掌と優しい声がじわじわと心に染み渡っていく。

「ふふ...ここも、元気になってきたではないか」

裏梅の指が、虎杖の股間に触れる。そこでは、ズボンの上からでもわかるほど勃起した逸物が山を作っていた。

「安心しろ、私がしっかりと温めてやろう」

着衣を剥がされ、外気に晒された肉棒を裏梅の細い指が包み込む。痺れるほどの快感に腰が浮いてしまうが、それを逃さぬようにと裏梅の腕が虎杖の頭をガッチリと抱え込む。そしてそのまま上下に優しく手を動かし始める。「あっ……あ……」

「どうだ、温かいだろう」

裏梅の掌から与えられる快楽に、もう抗うことができない。目まぐるしく襲い来る快感に神経が焼き切れてしまいそうだ。

裏梅の胸から与えられる温もりと肉棒を優しく包み込む掌の感触に、段々と射精感がこみ上げてくる。しかし、その寸前で裏梅の手が離れてしまった。

「ぁ...」

「そんな悲しそうな顔をするな。私も、久々に楽しみたくなってな」

裏梅はそのまま虎杖を優しく押し倒し、己の股座を虎杖の顔に向け、自らは虎杖の肉棒へと顔を乗せる。地面は雪のはずなのに、何故か冷たさを感じなかったが、いまの虎杖にはそこまで考える余裕などなかった。

「ふふっ、こうして見ると殊更に大きいな...私の口に入るかどうか...」

裏梅はうっとりとした眼差しで目の前の肉棒を見つめ、大きく口を開けてそれを咥え込んだ。

「うあっ」

ぬるりとした口内の感触に腰が浮いてしまうが、その腰はしっかりと裏梅に押さえつけられており、逃げることは許されない。

「んふっ……んっ……」

裏梅の舌が竿全体を舐め上げてくる。吸い上げるような動きと絡みついてくる舌に翻弄され、腰が蕩けそうな快感が脳へと襲いかかる。裏梅も口に含んだ逸物の大きさを実感しているのか、時折苦しげな声を漏らしながらも懸命に奉仕をしてくる。

「くっ……ぁっ……あぁっ!?」

裏梅の舌が亀頭に絡みつき、ぐりぐりと尿道を刺激する。その動きに虎杖は思わず声を上げてしまう。

「ぷはっ...虎杖悠仁...私のも舐めてくれるか?」

裏梅は左手で己の膣をくぱぁと広げ、虎杖の顔に愛液を垂らす。鼻腔を刺激する濃厚な雌の匂いに、虎杖の脳が焼かれる。

「ここを舐めてくれると...嬉しい」

裏梅の言葉に逆らえない。舌を伸ばし、滴る愛液を掬い取るように舐め始める。舌先で感じる女の香りと味が理性を焼き切っていく。

荒れ狂っていた吹雪の勢いは弱まりしんしんと降り積もる雪の様相が戻り始める。

静寂が戻りつつある中、ぴちゃぴちゃと男女が互いに舐め合う淫靡な水音が染み渡る。


「はぁっ……はぁっ……」

裏梅の膣から顔を離すと、ぬらりと光る糸が互いを繋ぎ、切れて滴り落ちる。それがもったいなく感じられ、再度裏梅の膣に顔を埋める。

(すげえ匂い……)

嗅覚を刺激する蒸れた雌の匂いにイヤでも興奮してしまう。もっと嗅ぎたい。もっと舐めたい。そんな欲望に支配され、必死に舌を動かして愛撫する。

「ふふ……いいぞ、虎杖」

裏梅は優しい言葉をかけながら、その口を大きく開けて勃起した肉棒を喉奥まで咥え込む。裏梅の口内は驚くほど熱く、狭く、そして柔らかい。その全てが男根を刺激し快楽をもたらしてくる。

裏梅の舌が竿全体を包み込むように舐め上げ、喉奥がキュッと締め上げてくる。それがもたらす快感は今までの比ではない。

「んっ……ふっ……」

裏梅の口淫は徐々に激しさを増していき、その速度は徐々に速くなっていく。

(もう……ダメだ……!)

股間の奥から熱いものが込み上げてくる感覚に思わず腰を引こうとするも、もう遅い。裏梅はそんな虎杖の腰を両手で押さえ、そのまま喉奥で肉棒を締め上げてくる。

「ぁ……んぅっ……!」

その強烈な刺激に耐え切れず、とうとう限界を迎えてしまう。裏梅の口内に精液をぶちまけてしまうと、彼女はそれを一滴も零すまいと口をすぼめながらゆっくりと顔を離していく。そしてごくんと喉を鳴らして飲み込んだかと思うと、再び逸物にしゃぶりつき残りを吸い尽くすように吸い上げてくる。

「んんっ...んっ...」

裏梅はその姿勢のまま虎杖の陰嚢を揉み、刺激を与えてくる。その快感に腰が浮き、すぐに再度射精感がこみ上げてくる。

「んぅっ!」

裏梅が肉棒を強く吸い上げた瞬間にまた射精してしまう。もう我慢などできなかった。

「ふふっ、沢山出たな」

裏梅は口を離し、くちゅくちゅと舌の上で転がしてから飲み込むと、立ち上がる。

「なんだまだ元気だな」

「ぁ...」

快楽で頭が朦朧としている中、裏梅の手が優しく肉棒を撫で回す。その感触に、萎える暇などなかった。

「気持ちいいなぁ、虎杖悠仁。...このまま、いただかせてもらうとしようか」

裏梅は己の女陰に虎杖の肉棒をぴとりと着けると、ゆっくりと腰を沈めていく。

「ぁあ...ぁあっ!」

「んっ...」

熱い粘膜が直接肉棒に絡みついてくる感触に、虎杖は堪らず声を上げる。裏梅も感じ入るような吐息を漏らし、そのまま腰を下ろす。やがて根元まで咥え込まれると、裏梅はゆるゆると腰を動かし始めた。

膣内が絡みつき締め付けてくる快感に、虎杖の意識は蕩けていく。

「気持ちいいか?ふふっ..そうか」

裏梅は妖艶な笑みを浮かべながら、虎杖の掌に指を重ね合わせ、恋人のように繋ぎ合わせる。

その視覚的な要素も合わさり、虎杖の肉棒は二発出したとは思えないほどの硬さを誇った。

「んぅっ、んっ……はぁ……」

裏梅は腰を浮かせては落とし、その度に艶めかしく身体をくねらせる。

その一つ一つの仕草が美しく、それでいて扇情的だ。その光景に見惚れていると、ふいに裏梅と視線が絡み合う。そしてそのまま顔を寄せてきたかと思うと、唇を塞がれた。

「ふっ……んんっ……!」

思考が停止してしまいそうなほどに濃厚な口付けだった。歯列をなぞられ、舌を絡め取られ、唾液を流し込まれる。その間にも腰の動きは止まらず、上下に激しく動かされる。裏梅の口内を貪っていると、逆に貪られているような錯覚に陥る。

「んっ……ふぅっ……!」

「んっ……!ふっ……!」

口付けの快感がそのまま下半身へと直結していくかのようだった。裏梅が腰を動かす度に蜜壺から愛液が溢れ出し、それが潤滑油となって動きが加速していく。

(ダメだ……もう……)

身体から力が抜ける。完全に快楽の波に飲まれてしまっている。

「んっ……いいぞ、出しても……んぅっ」

裏梅も限界が近かったのだろう。腰の振りが激しくなる。

そして、ついにその時が来た。裏梅が絶頂を迎えると同時に肉棒が強く締め上げられ、その刺激で虎杖もまた果ててしまう。

びゅるびゅると精液が吐き出される度に膣壁が蠢き、一滴残らず搾り取られるかのような感覚に陥る。

「ぁ...ぅぁ...」

声が萎んでいく。意識が快楽に溶けていく。

今までの優しい温もりが嘘のような邪悪な笑みを浮かべる女を前にしても抗えない。

極寒の中で与えられた優しい温もりに、深く、深く沈んでいくーーー



【オマエほどの漢が、小さくまとまるなよ】


消え去る寸前、脳裏に過ったのは、かつてどこかで聞いたそんな言葉。


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