潔七

潔七


 潔は隣を歩く七星の手に自分の手を重ねた。するりと手を取って軽く握る。友達同士が戯れて握るような軽さ。それでも七星は肩を跳ねさせて勢いよく潔の方を振り向いた。頬はぽぽぽと赤くなり、目は見開いて、見ている方も思わず照れが移ってしまうような、いっそ大袈裟なほどの照れ方だ。

「ど、どうしたっぺ、潔さん!?」

「えーと、繋ぎたかっただけ。ダメだった?」

「ダメじゃないっす!! ダメじゃねえがら、放さないで欲しいっす」

 七星が繋がれた手にぎゅっと力を込める。そんなことしなくても放したりしないのに、と思いながら潔はすり、と指先で七星の手の甲を撫でた。別に何を思うでもなく、なんとなく指を動かしただけだったのだが、七はそうは思わなかったらしい。肩をまた跳ねさせ、繋がれた手に目線を落とす。

「なんか……潔さんの触り方、ちょっとえっちだ……」

「えっちって」

 突拍子もない評価に潔は吹き出すように少し笑ってしまったが、七星が顔の赤さを耳まで広げたものだから、仕方ないなあ、と笑みの種類を変えた。

 初心なところは可愛らしい。しばらくは優しくしてやりたいと思う。潔も恋愛経験が多いわけではないが、七星よりは免疫がある。七星が初心すぎるのかもしれないが。今までの様子を見るに、あんまりやりすぎると目を回したりしてしまいそうだし。

 しかし潔だって若い男であるので、ずっとこのまま我慢してやる自信はない。今のところは我慢出来ているけれど、少しいじめたくなってしまう時もあるし。何分七星の反応はとても良いので。まあ、ここまで真っ直ぐ自分を好きだと示してくる人間が可愛くないわけがないし、さらにそれが目の前でニコニコしていれば、ちょっかいの一つや二つ掛けたくなるってものだ。

 つまるところ、潔の我慢はいつ限界が来てもおかしくはないのである。

「なあ七星」

「はい?」

 繋いでいない方の手で自分の顔をパタパタ扇いでいた七星が、目線を上げて潔を見る。顔の赤みは少し治ってきている。

「頑張って慣れような。俺も七星ともっと色んなことしたいし」

 潔は繋いだ手を持ち上げて、七星の手に口付けた。一瞬触れるくらいのそれは、しかし二人にとってはかなり踏み込んだ行動だ。今までは潔が極力そういった接触をしないよう気を遣っていたので。驚きのあまり目を丸くして固まっている七星に、潔は笑いかける。少し意地の悪い表情になった自覚はあった。

 再び七星の顔が朱に染まる。俯いて顔を隠したまま、七星が搾り出すように声を上げる。

「潔さんってやっぱりえっちだ……」

 その言葉に、今度こそ潔は声をあげて笑ったのだった。

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