漢デイビット、サバフェスを楽しむ
「サーヴァント、フォーリナー……デイビット。そう呼んでくれ」
「……デイビット?」
「そうだ、マスター。いつか出会う君を助けに来た」
「よく、分からないけど……お願いデイビット!マシュを助けて!こんなところでひとりじゃ大変だよ!」
「分かった。君たちの旅の助けになろう」
紅く燃え盛る街でいつか出会う彼女に呼ばれた。表情は幼く、理解出来ない事態に怯えている。逃げ出したくなる足を堪えて泣きながら縋る。
その気持ちは自分のことのように理解出来る。このオレが生まれた時、染み付いた影を見て何を思ったかは覚えていない。
それが、これが、ありふれた少年少女がありきたり壊され、戻れなくなるのだから。
これから得る(得てしまう)君の強さを。これからも変わらない人としての当たり前の善性を。
いつか敵対するのが分かっている君よ。
それでも、星を探して進む君の力になりたかった。人を人たらしめる『善いこと』を知りたかった。
この身はもはや人ではなく記録の帯。分かりきった終わり/白紙に向かう人類にとって恥の旅路。
愛しいと思ってしまった君のために、いつか戦う君のために。
これは君の旅であり、君を愛した男の旅だ。
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照りつける太陽。蝉の声。青々とした街路樹は僅かな風にそよいでいる。氷と麦茶が入ったコップは結露しコースターを濡らしている。
清潔なシーツに少年は寝転び、少女を見上げている。サラサラとした夕焼けのような髪が少年の頬を掠め、艶やかに濡れた唇は笑みを浮かべる。
「キスは初めて?」
「……うん」
「というか初キス私でいいの?同い年の子の方が良かったんじゃ」
「ボクは立香ちゃんがいい」
「ん……じゃあ、もう1回、ね」
再び重なる唇はうっとりするくらいに柔らかく、少年の心に刻まれる。白い首筋に伝う汗に目が眩み、思わず指で拭う。
「ひゃっ……ん、もう。くすぐったいなあ」
「……立香ちゃん!」
「あっ」
それは本能だ。男の性に突き動かされ少女の唇を舐める。思わず空いた少女の口内に舌が入り込み、舌と舌が触れ合う。
「あ……やあ……ん」
「立香ちゃん、立香ちゃん」
「あん、あ……デイビットくん」
「もっと……立香ちゃん」
唇を離し、荒い呼吸で少女は喘ぐ。艶やか、色っぽいなんて言葉の意味を知らない少年は破裂しそうな鼓動のまま少女を見詰めた。
「ねえ、デイビットくん」
少女はおもむろにキャミソールをたくし上げる。露になる白い腹とレース柄の下着。女しか身に付けないそれから目を離すことが出来ず小刻みな呼吸は治まらない。
「あ、あ……」
「デイビットくん?おっぱい触ってみたくない?」
手を握り細い指を胸に近づける。汗ばんだ柔らかな胸に指が沈み。その感触に堪らずに手のひらで握る。
「あん……もっと優しく、ね」
「……うん」
「もっと触りたい?」
手を後ろに回し、ホックが外れる。胸の先端は立ち上がり、紅く染まっている。そこは赤ん坊の時に吸ったことのある場所であり、小さい時母親とお風呂に入った時も見たはずだ。
でも、どうしてこんなに──下半身が痛いくらいに疼いて熱くなっているのか。
「触らせて、立香ちゃん」
初めて実感した欲のまま、少年は胸に唇を近付けた。
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「おい兄弟」
「どうした 」
「俺の貯金減ってるんだが」
「ああ、それならサバフェスで同人誌を買うのに使った」
「は?????」
「サバフェスで同人誌を買うのに使った」
「繰り返せとは言ってねえ!なんでだよ!あれは会社の運営資金!というかなんで口座番号知ってんだよ!」
「ジェームズ・モリアーティから教えて貰った」
「あの教授!」
n回目のサバフェス特異点。
前回のサバフェスでモブぐだ︎︎ ♀前提の(以下略)同人誌を手に入れてしまったデイビット少年は吹っ切れた。
近年の同人誌とは2次元の『薄い本』と呼ばれるものが大半を占めているが、それ以外のものもたくさんある。
それ以外とは作家サーヴァント合作の詩集。ウィリアム・テルやロビンフッド、ジェロニモによるキャンプ&サバイバル特集。葛飾北斎やゴッホによる画集などなどたくさんだ。
言ってしまえば同人誌はサークルの汗と涙の結晶なわけだから否定するのは善くない。
一目見て分かる地雷は避ける。サークルに迷惑はかけない。一期一会の出会いを楽しむ。それが即売会の最低限のマナー。初参加のデイビットはそれが分からなかったからモブぐだ︎︎ ♀(以下略)を手に入れるのに戸惑い、罪悪感を覚えたわけだ。
それは善くない。
そもそも本は記憶制限があるデイビットにとって必要不可欠。覚え切れないものを本で再確認する。ならば躊躇う必要はない。
「だから俺の貯金使って散財したってか?」
「QPを稼ぐ方法をシバの女王初め金銭に詳しいサーヴァントに相談してな。そしてジェームズ・モリアーティに相談しろと言われた、そしたら
『お金?ならあの全能神の口座番号と暗証番号教えるヨ?サバフェスでしょ。マスターの本が欲しいんだって?私はマスターの味方だからね!何かしらのきっかけでキミとマスターが進むなら私協力しちゃう!』
とのことだ」
「兄弟とお嬢が進むことに関しては構わねえがなんで俺の口座を挟むんだよ……」
「いいものをたくさん買えた」
「そりゃよかったな!だったらその通りにお嬢との関係進めろ!」
「そ、それは」
「そこはR-18同人誌のお前並にがっつけよ」