溺れるえりーと1
ユカリ砂糖堕ちルート序章==================
コチラの概念を、一部参考にしました。読む前に目を通しておくとより楽しめると思いますので是非ご一読ください
Part75・36番さんにこの場を借りて感謝の言葉を述べさせていただきます
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調停、それは一方的に悪を糾弾するものではありません
調停とは、公平で中立な第三者が当事者の間に入ることで事態を解決することを指し示す言葉
【百花繚乱紛争調停委員会】の一員となった者であれば、それを可能にできる実力と広い視野を伴わねばなりません
【百鬼夜行での争いを調停する】という立派な務め
そしてそれを遂行する強くて素晴らしい先輩方の背中を追い、身共は百花繚乱へ足を踏み入れました
現在は委員長のアヤメ先輩も、副委員長のナグサ先輩も不在ながら…
身共は調停委員会としての役割を決して捨てることなきように、日々精進し続けて参りますわ!
この身は勘解由小路家の令嬢であるものの…百鬼夜行自治区の治安を守り、諍いや事件等を“調停”する者として!
勘解由小路ユカリは、今日も百鬼夜行の見回りを始めますの!
(とはいえ使用人の皆様には申し訳ないと感じていますが…)
うむむ、意気込んだのは良いですが今日は割と平和な気がしますわね?
いつもならすけばんの方々が悪さをしていたり、へるめっと団が悪巧みをしていたり…魑魅一座が──
(ガシャーン!)
ほら言った側から!
ユカリ「むむ!?早速事件ですわねっ!百花繚乱のえりーと勘解由小路ユカリ!出動ですのーっ!」
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魑魅一座A「百夜堂の店主!最近良質な材料を仕入れたそうじゃないか!私たち【魑魅一座手作流】にも寄越せ!」
シズコ「あーもう!折角新メニューの案が出そうだったのに邪魔しに来て…てかその流派は何!?貴女達も自力で商談すりゃいいでしょ!人が苦労とお金払ってやっと手に入れた珍しい材料を奪おうとすんなー!」
B「何だとぉ!?私たちに商談できるほどの財力あると思ってんのかコラ!」
「知りませんよ!身を削ってまで手作りに拘っても首が回らなければ本末転倒もいいところですよね!?別に否定はしませんけどその辺考えた上で行動してくださいって話です!ましてや他人から奪うなんて言語道断ッ!無理して手作りするくらいなら既製品を間に挟んだ方がいいと思いますけどぉ!?」
C「くっそぉ…正論なだけに腹立つ…!ええいもういいや!やっちま…」
(ズダァンッ!)
C「おわっ!?なんだ!?」
ユカリ「そこまでー!百花繚乱紛争調停委員会ですわ!争いはおやめなさい!」
A「げっ!百花繚乱は今機能不全だったはずじゃ…?仕方ない、ここはズラかるのみ!逃げろーっ!」
C「ちょっ!置いてかないでー!」
魑魅一座は瞬く間に店から逃げ去った
「相変わらず逃げ足は一丁前ですわね…お怪我はございませんこと?」
「あ、はい大丈夫です!助かりました!ちょうどフィーナ…ああ、従業員が外出中だったんで1人で対処する羽目になる所でした…」
「災難でしたわね…調停する前にお相手様が逃げてしまいましたが、結果無事で何よりです!では身共はこれにて」
「あーちょっとすみません!その、時間があるようならお礼代わりに新メニュー食べていきませんか!?今なら取り寄せたばかりの砂糖で作れるので、もしよろしければ是非!」
「なんと!?今日は身共のらっきぃで〜というものでしょうか!ありがとうございます!そうですわね…あの魑魅一座が戻って来ないとも限りませんし、お言葉に甘えさせていただきましょう!」
数分後
店内の席に座り、期待した様子で待ったユカリの前に置かれたのは白い饅頭
「ふむ…一見真っ白なお饅頭に見えますけれども…こちらは何というお菓子なのです?」
「これはかるかん饅頭って言いまして、簡単に言えば砂糖と米粉と山芋を使った生地の中に小豆餡を入れたものです!」
「なるほど!噂に名高い百夜堂の新作をいただけるなんて幸せですわ〜…では、いただきます!」
そう言いながら一つ手に取ってぱくりと口に入れた…
「…んんぅっ!?」
その瞬間、ユカリの口内に広がるとてつもない甘味の奔流
今まで気取った店の高級菓子などをたまに食べた事があったユカリだが、それらを遥かに上回る美味に圧倒されて言葉が出て来なくなる
「も、もしかして、お口に合わなかったとかですか…!?一応私自身も味見して問題ないと判断したんですけども…!」
「いいえ、これは身共の人生で…
いっちばんの美味ですわーっ!!!」
「ほ、ほんとですか!?あーよかった…実は他にも既存メニューと違うぜんざいとか、飴とかも考えてるんですよ。もしよろしければそっちも食べます?」
「ええ!是非ともお願いしますわ!」
目をキラキラ輝かせ、ハイテンションで他メニューも希望するユカリ
シズコは相手の素性が、百花繚乱の部員という事以外知らないものの、初来店で凄く褒めてくれたお客に気を良くした事で新メニュー案の菓子を振る舞う
ユカリはその味に魅せられうっとりしながら味わっていく
その幸せな光景が、地獄の入り口だとも気付かぬまま…
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【~3日前~】
シズコ「今日はD.U.にて年一で行われる物産展…“キヴォトスふるさと物産展”の日!フィーナとウミカは、留守番がてら新メニューの案を出してもらってるけども…今回は思った以上に賑わってる?」
この日D.U.に訪れたシズコは、百夜堂のスイーツを宣伝がてら新たな材料の取引先を増やそうと物産展へ参加した…
しかし今回の物産展は、前回までと違う箇所が2つほどあった
一つは、例年に比べて一般参加者の人数が多くて賑わっていたこと…
もう一つは、いつもかなり繁盛しているはずの百夜堂目当てのお客が、例年より圧倒的に少なかったこと…
「ってちょっと待てー!なんでこんなに賑わってるのに私のところは今までよりお客さん来ないの!?…これは何かあるわね…よほどのお店が出てきた可能性が高いっ!こうなりゃ視察するのみ!」
そう考えたシズコは、雇った臨時の店員に一旦店を任せて特に賑わっている区画へと潜入する
そしてシズコは、一番賑わっている店を発見した。なんとそこは
「え?ア、アビドスのお店…!?」
最早何年この物産展へ出場していないかさえ分からないほど不参加だった地区の店が、百夜堂を差し置いて大盛況という異様な状況
席は当然のように満席…長蛇の列は建物からはみ出ているほど長い…メニューのチラシを手に取れば、内容は自分の出すスイーツと違い洋菓子系がメインである事以外、値段等は百夜堂と大差ない様子
だと言うのに、あの砂しか残っていないようなアビドス自治区の出店がこれほどの集客を成し遂げたという事実に思考が止まり、手を離したチラシはどこかへと飛んでいった
強い敗北感と理解し難い現実に打ちのめされたシズコは、とぼとぼと自分の店に戻ってきた
「…何なの、アレ…意味が分からない…アビドスのお店があんな大盛況って…」
ぶつぶつ呟きながら頭を抱える店主に、臨時店員は困惑しながらも自らの仕事を物産展閉会の時まで頑張って続けた
その数時間後、物産展終了のアナウンスが流れる
臨時店員「あの〜、シズコさん…物産展もう終わったんですけど、撤収し終えたら給料下さいね?」
「…ん、あぁそうだった…ごめんなさい後でちゃんと払います。私が動けてない間やってくれたのでボーナスもあげますね、とりあえずプラス…」
その時
???「失礼します河和シズコ様、少々お話があるのですが、よろしいでしょうかぁ?」
「え、スタッフさん?はい、大丈夫ですけども…」
「では少しこちらの方で…あぁ、すぐに終わりますのでご心配なきよう」
「何から何までごめんなさい。撤収作業は私が戻ってからやるから、一旦休んでいてくださいっ!」
「は、はぁ…」
シズコは、小柄なスタッフの案内で人気の無い会場の隅へ連れて来られた
「それで、話ってなんです?」
「…手前様、悔しくはありませんかぁ?今まで物産展で最っ高の売り上げと評判を我が物としていたはずなのにぃ…突然何も無かったはずの自治区が出した店にぜぇんぶ奪われて!」
「…はい?」
「あぁ…私達は今まで散々物産展で評価を上げ続けてきたのに!キヴォトス一の店になるための足掛かりとして、必死に努力し続けてきたのに!あんな何も無い地区の出店に大敗して…大事なプライドを粉々にされたという気持ちでいっぱいなのでは、ありませんかぁ…?」
「なっ、何を言い出すんですか!?私は別にそんな事これっぽっちも!」
「では何故、手前様は視察から戻った後魂の抜けた置物のように項垂れていたのです?」
「っ!?」
「手前には分かりますよぉ…?あの連中のせいで店の人気はガタ落ち。夢だったフランチャイズ化や店舗拡大もこのままでは本当に夢物語になってしまう…そう感じたのではありませんかぁ?」
「そ、それ…は…」
スタッフは、この世のものとは思えない悪しき笑みを浮かべながらシズコの耳元で脳へ直接語りかけるように囁く
「そんな手前様にぃ、良き知恵を授けて差し上げますよぉ…?猫の手がご入用とあらば…手前の知恵をお貸しします♪」
「………お、教えて…下さい…」
「あぁっ!名も知らぬスタッフの知恵に頼る手前様の姿、とても素敵ですねぇ…よろしいですか?何年ぶりの出店かさえ分からぬ程不参加だった地区がこれほどの成果を出したのならば…相手の秘密を探るのが一番でございますよぉ?」
「秘密を探る…」
「簡単に言えばぁ、アビドス自治区の店と業務提携をするのです♪」
「業務提携…ですか!?」
「えぇ!秘密はきっとアビドスの出したスイーツにあります、手前はしっかりとこの目で見ましたので♪」
「ちょ、ちょっと待ってください!貴女の言った内容が事実だとしても、なんで私にそんな肩入れするんですか!?」
「手前はぁ…同郷である百夜堂の甘味が大好きだからです♪だからこそ、アビドスに負けないで欲しいという親切心で助言した次第ですよ♪」
「…うちの店のファンだって事ですか?そっか、そうだよね!ぃよーし!そうと決まれば交渉するぞーっ!河和シズコ!新生百夜堂爆誕のために、アビドスとの業務提携を始めますっ!これで商売繁盛すれば、今度こそフランチャイズ化とか出来るかも!あ、ありがとうございますスタッフさ……」
シズコが気合を入れ、拳を上に突き上げながら宣誓した後再度振り向くと…あの小柄なスタッフの姿は影も形もなかった
「えっ…?今の人どこに…?も、もしや商売の神様!?私の商才を認めて助言をしてくれたのかも!よーっし!ますます気合い入ってきたーっ!アビドスが撤収する前に交渉しないと…!」
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???「は、あはっ…あははははっ!」
会場の屋根を支える巨大な梁の上に座り高らかに笑う小柄なスタッフ…否、彼女はスタッフにあらず
その名は箭吹シュロ。百鬼夜行に伝わる噂程度の存在、花鳥風月部の部員である
思い描く“風流”を求め暗躍せし、悪意に満ちた恐ろしき少女であった…
シュロ「儲けと名声を求めし俗なる店主様…手前様の思い描く世界は、必ず訪れる事でしょう…しかし手前様の理想が、この先多数の人間達を狂わせ堕とす恐ろしき地獄を形作ってしまう未来が見えますよぉ…♪その上間抜けにも、手前の話を商売の神から賜った託宣と受け取ってしまうだなんて…ほんっとに滑稽で♪
手前が望む“百鬼夜行を焼き尽くす風流”とは些か違った形ではあれど…これならきっとコクリコ様も歓喜なさる!砂糖に狂いしキヴォトスの姿…手前達は特等席からじぃっくりと、眺めさせていただきますね!あはははははははっ!」
シュロはそう愉しげに嗤うと、乗った梁から跡形もなく消え去った──
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シズコ「たのもーっ!」
商売の神様が授けてくれた知恵の通り、私は撤収直前だったアビドスの出店へと赴き高らかに吼えた
アビドス生徒「な、なんだ!?」
「ここの店長さん…責任者的な人がいるのならお会いしたいです!ご心配なく!クレームではなくビジネスの話です!」
???「ふ〜ん?おじさんとビジネスのお話したいの?」
その時奥から現れたのは、自分より小柄でのんびりした言葉遣いの生徒
「貴女が責任者ですか?」
ホシノ「うん、私は小鳥遊ホシノ。今回は大盛況だったから色々働きすぎて疲れちゃったしサボろうとしてたんだけど、商談とあっちゃおじさんが受け応えするしかないよね〜。君は確か百夜堂の店長さん…確か、シズコちゃんだったよね?これからよろしくね」
「ど、どうぞよろしくお願いします…」
どっから見ても少女なのになんで自分をおじさんと呼んでるのか気になりつつ、私はホシノさんと奥の片付け途中の椅子に腰掛け商談を始めた
「ズバリ聞きますホシノさん!アビドス自治区は今までこの物産展に長年不参加だったはずですが、何故今回これほどの大盛況を実現したのでしょうか!」
「おぉ、直球だね〜?んまぁビジネスな関係になるなら、隠す必要もないかな。ちょっと待っててシズコちゃん。おーい残ってた分を冷蔵庫から少し出してきてくれる〜?」
「了解でーす!」
「?えっとホシノさん、何を持ってくるのでしょうか?」
「うちのメニュー知ってるかな?お宅の百夜堂と同じスイーツとか甘味モノなんだけどさ、あれにはちょっとした秘密があるんだよね〜」
秘密…!あの商売の神様が言っていた事かもしれない!
「と、言いますと?」
「こればっかりは体感した方が一番簡単だと思うから…お、ちょうど来たね」
先ほど指示を受けた生徒が持ってきたのは、普通に切り分けられただけのロールケーキとコーヒーだった
「残り物で悪いけど…ひとまず味わってみてくれないかな?」
「は、はい。ありがとうございます」
渡されたフォークでロールケーキを切りその一部を口に含んだ
な、何これ…!?
信じられない美味しさが脳を駆け巡る
これまで沢山のお菓子を作ってきたが、圧倒的に上回る甘さ
それでいて、甘過ぎるくどさも殆どなく余裕で何個も食べれそうな勢い
「何ですかこれ!?普通のロールケーキにしか見えないのに、どうやったらこれほどの味を!?」
間髪入れずコーヒーに手を伸ばす
なんとコーヒーから漂う香りは苦さより甘さが優っていた
それを一口啜る
ああ…信じられない程の味わい深さ
今までうちで出していたお菓子は、一体なんだったのだろうとさえ思える
「うへへ、どうやらお気に召したみたいだね〜?なんでそんなに美味しいのか…その秘密、聞きたいでしょ?」
「は、はいっ!」
「実はこれには、うちだけの特別な砂糖を使用してるんだよね」
「砂糖…つまり原材料が普通と違う?」
「そゆこと。ここにちょうどあるけど、アビドスだけの特別なお砂糖を使ってるからこそあの美味しさを出せるってワケなんだ〜」
「これが…」
ホシノさんが椅子に座ったまま近くの棚から引っ張り出した大きい袋には、市販されてる砂糖より綺麗に見える魅力的な砂糖がたくさん入っていた
「ビジネスって言ってたけど…うちとの業務提携をするならこの砂糖を百夜堂に送ってあげる。そっちからは…まだ最初だからこれくらいの金額でいいかな」
そう言ってホシノさんが取り出した電卓には、市販のものより圧倒的に安い金額が提示されていた
「はぁ!?いやいやそんな安値って普通ありえます!?どう考えてもアビドス側大損しそうなんですけどぉ!?」
「あははは、そうでもないよ〜。なんせこの砂糖は結構簡単に作れる上に、量も100年以上は尽きないくらいあるから…その辺全然気にしなくて大丈夫。あぁ、一応言っとくけど詐欺ったりしないから安心してね?おじさん詐欺とか騙すとか嫌いだしさ〜」
「うむむむ…そこまで仰るなら…」
少し不審感は拭えないものの…これさえあれば新生百夜堂は安泰するはず!
「どうか百夜堂との業務提携を、何卒よろしくお願いします!!!」
「うへ、交渉成立だね〜」
私達は力強い握手を交わした
その後ホシノさんは、
「今回使いきれなかった砂糖の袋は全部あげるよ〜。商談成立の記念的な感じで持って帰ってちょうだいね〜」
と、滅茶苦茶気前の良い言葉と共に大量の砂糖を譲渡してくれました
私はそれを台車で運び、物産展の百夜堂区画へ戻ってくれば待ちぼうけしていた臨時店員さんと急いで撤収作業を行ってから、運送トラックを借りて大量の砂糖と共に百鬼夜行へ戻った…
そして今日
砂糖を奪いに来た魑魅一座を追い払ってくれた百花繚乱の人に、試作品の和菓子や挑戦してみた洋菓子を色々振る舞う
ここ最近の百花繚乱は活気がかなり低くなっているみたいだったし…この素敵な砂糖で元気になってくれたらいいなぁ
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ユカリ「大変美味しゅうございました!しかし、これほどまでいただいてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいですわ…」
シズコ「いえいえ!どうか気にしないでください!また来た時はちゃんと完成品を振る舞うので、その時はお代を払っていただけると」
「勿論ですわ!では身共はこれにてっ!見回りの続きに行って参りますっ!」
「頑張ってくださいねーっ!」
百夜堂から出た身共は、今まで感じた事のない高揚感や幸せな感情に満たされていました
まるで身体が軽くなったような、まるで夢見心地のような、そんなふわっとした気持ちが身共の心を支配していって…
「はぁ…甘味は至高の栄養です…」
そう呟いて空を仰ぎ、解放されたような気分に浸りながら目を閉じます
次々辞めていってしまった部員の皆様
行方知れずのアヤメ先輩とナグサ先輩
青春を探しに何処かへ行ってしまわれたレンゲ先輩
部室の中で1人苦悩する様子をお見せしていらっしゃったキキョウ先輩
身共が見てきた百花繚乱の辛い実情が、今なら一時的でも忘れられる気がして
同時に、心の奥から言葉が聞こえる気がして
『悪は滅ぼすべし』
「…?今のはなんです?…気のせいですわね!幽霊の声なんてそんなものありませんもの!…あり得ませんわーっ!」
ただの幻聴だと自分に言い聞かせつつ、身共は再度百鬼夜行の見回りを始めます
──過ちはここから始まりました
気づいた時はとっくに遅くて
身共はあれほど憧れた調停の志を
素晴らしき先輩達を見ていたあの頃を
取り返しのつかない行動で穢したのです
身共の全てを、自分自身の愚かな行いで裏切った…
えりーとだなんて到底言えない
外道で悪辣な塵へと成り果てたのです
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