温泉旅行4-1
774-1さて、食事が終わったとしても、魔法のように食器類が片付くわけもない。
コレらは食堂にでも持って行けば良いのだろうか?
部屋に食事が運ばれるような、豪勢な旅館に泊まった経験などないため、そのあたりをどうすればいいのかがわからない。
モルガンならその辺の作法も知って......いや、ブリテン出身の人に頼ることではないな?
とりあえず片付けようと、席を立とうとした時
「我が夫、この部屋には、家族風呂があります。
一緒に入りませんか?」
入りません。
それに、食後直ぐにお風呂に入るのは、健康に良くないって言うしね。
「では、卓球などどうでしょう。
こういうところではそれがマナーだと聞きましたが」
マナー...? まあ、温泉といえば卓球というイメージはあるかもしれない。
家族風呂よりは......という事で、遊戯室に向かった。
食器類はそのままで良いらしい。
「我が夫、ちゃんと手加減はするので安心してください」
まあ確かに。
サーヴァントと人間じゃ基礎性能が違いすぎる。
本気でやられたら死人が出かねない。
そのあたりはちゃんと、普通の人間並みにセーブしてくれるようで、ちゃんとラリーが続いていた。
っと! 卓球をするのも久しぶりだよ!
「タブレットや訓練室はありますが、卓球等球技の設備はありませんからね」
最初はどれくらいで打ち合えば続くのか、お互い測りながらゆっくりラリーを続けていた。
しかし、今は持てる技術を注ぎ込み、全力で打っている。
モルガンのプレースタイルはシェークドライブ型。
前中後、どこからでもドライブをかけれるこの戦型は、かつてヨーロッパで生まれた攻撃し続ける事で相手に反撃を許さない万能の攻撃型と言えるだろう。
対するこちらはカットマン型。
主に後陣に位置どり、相手のミスやチャンスボールを狙って攻撃を行う防御特化の戦型だ。
基本的に相手の消耗を狙う戦型なのだが、相手はモルガン。疲労によるミスはまずないだろう。
時々軽口を挟み合うも、その集中が途切れる様子は一切ない。
まるでそういうマシーンであるかのように、どの距離に返しても打ち返される。
かなり厳しいが、勝つためにはあれを狙うしかない...!
そう考え、少し手前にボールを返す。
モルガンは前陣にボールが来れば、フォアドライブでクロスに打ってくる。
なので、先にそちらへ動く。
モルガンの目ならその動きも理由も手に取るようにわかるだろうけど、コレはあくまで遊びで、普通の人間並みを想定しての卓球だ。
わざわざ戦術を変えはしないはず......!
その予想は的中し、狙い通りに球が返ってくる。
回転しながら斜めに打ち込まれた球は、卓球台の横から飛び出していく。
ココで卓球のルールの説明なのだが、返球のさい、実は球はネットの上を越える必要はない。
真横を通ろうが、台の上に落ちさえすれば問題ないのだ。
本来なら狙って打てるような球じゃない。
だが今の集中具合と、相手がどう打つかがわかっている今なら...!
「ゼロバウンドですか......
資料で見た事はありますが、実際に見たのは初めてですね」
打ち返した球は跳ねることなく、卓球台の上をコロコロと転がっていく。
極限の集中状態が解け、ドッと汗が湧き出てくる。
打ち返す高さ、威力、回転。
その全てが正確、且つ運がなければ成功しないのだが、今回は見事に成功したようだ。
息切れしながらモルガンに挑発的な笑みを向ける。
「......これならもう少しギアを上げても大丈夫そうですね」
その後ボッコボコに負けた。
そりゃそうだ。
もちろん卓球の球がモルガンの胸に挟まったり、胸元が緩んで谷間に目が奪われるようなトラブルはなかった。