渋谷事変舞台裏・粘液情事

渋谷事変舞台裏・粘液情事



主・両面宿儺との1000年ぶりの逢瀬。

短き邂逅だったが、裏梅にとっては待ち侘びた瞬間だった。その再会に裏梅の心身は満たされ幸福感に酔いしれる。同時に。彼女の脳髄はその幸福感を快楽と変換してしまい、下腹部にそのアオリがいく。陰茎。女の身ではあり得ぬが、裏梅には生えているそれが血脈を張り、自己主張をする。

裏梅はいま、有り体に言えば発情していた。

「というわけだ。羂索、お前の呪霊を貸せ」

「というわけだじゃないんだけど?」

顔を赤らめながらも高圧的な態度で頼み込む裏梅に、羂索ははぁ、とため息を吐く。

「千体くらいはいるのだろう?なら一体程度でごちゃごちゃ抜かすな」

「きみねえ。呪霊操術っていったってそんな便利なものじゃないんだよ?取り込むのにしたって自分で直接出迎えなくちゃいけないし、どうせ君のことだ。貸したら壊すだろ」

「......」

「ほらやっぱり!私だって壊すとわかってるやつに無闇に貸す愚行は犯さないよ」

「くっ...」

呪霊を貸し出そうとしない羂索に裏梅は歯噛みする。

そもそも。裏梅とて好んで呪霊を抱こうとしているわけではない。ただ、今の渋谷には真人や陀艮、宿儺の殺戮により生きてる人間は殆どおらず、生き残りの高専連中も多くいる。そんな最中に人間を襲い、行為中に隙を突かれてはたまったものじゃない。何より、せっかく受肉したのだから最初の相手は宿儺でなければ嫌だ。なので、本当に不服だが羂索の呪霊を代わりに使おうとしているのだ。

「...わかった。ならば『縛り』だ!もしも私がお前の呪霊を壊したらなんでも一つ言うことを聞いてやる」

「ん?いまなんでもって」

「二言はない」

「キッショ。どこまで必死なんだよ。まあそこまで言われたらいいけどさぁ」

羂索が掌を地面に向けてかざすと、ネバネバとした液体が地面にこぼれ落ちていく。やがてその粘液は宙に浮かび直径二メートルほどの正方形に形を変える。そのぷるぷるとしたゼリーのような光沢と感触はまさにアメーバのようだ。

「これは?」

「私の手持ちの中で1番弱い呪霊だよ。吸い付きが強くて部屋の掃除やマッサージなどに使えて、便利ではあるが戦闘では些か使い辛くてね。とりあえずその穴に挿入してみなよ」

ぐぱぁと空いたアメーバ型呪霊の穴に、裏梅はごくりと唾を飲み込み、袴を下ろし自身の陰茎を取り出す。その美貌に似つかわしくない凶悪な形と巨大さをした肉棒は早く欲望を解き放ちたいとばかりにビクビク震えている。

そして。裏梅は躊躇いもなくそれを突っ込んだ。

「おぉ...ッ♡」

裏梅の表情が変わる。それはまるで極上の快楽に酔っているかのような蕩けた顔。その様子に、普段の冷徹な雰囲気とはかけ離れた淫靡なものを感じさせ、見る者が見れば思わず生唾を飲み込むだろうほど。

「ん……くっ♡はぁん……♡」

ぐちゅ、ぐちゅ。と卑猥な音を立てながら裏梅が腰を動かす度、肉茎がアメーバの中で暴れ回る。そして、その快感を貪り続ける裏梅に声がかけられた。

「で、どうだい具合は」

「んぅっ♡悪くない……ッ♡な♡」

「それはよかった...くくっ」

「な、なにを笑っている」

「いやすまない。きみもそういう顔をするんだと思ってね。私のことは気にせずどうぞ続けて」

「ふん……っ♡」

そう言われ、裏梅はさらに激しく腰を動かす。じゅぷじゅぷと音を響かせ、アメーバの中に陰茎が出入りしているさまはまるで性行為をしているかのようだ。その激しい動きに呼応するかのようにアメーバ型の呪霊も蠕動し、裏梅の性感を的確に刺激する。そしてそれがまた新たな快感となって裏梅を責め立てていく。

「ふーっ♡ふぅぅ♡」

息を荒げ、抱き枕のように呪霊にしがみつき腰をへこへこと打ちつける裏梅。

その美貌は快楽に歪み、口の端からは涎が垂れている。

「あっ、あぁっ♡」

快感で頭がおかしくなりそうなのを必死に堪えながら、裏梅は快楽の奔流に抗い続ける。そして。限界は唐突に訪れた。

「んあぁっ♡」

びゅく!びゅるるるる!!!と勢いよく放たれた精液がアメーバの中へと放出されていく。それは瞬く間に呪霊の中で泡立ち、液体のようになっていくが、それでも裏梅の射精が止まることはない。

「あひっ♡ひぃぃいぃいっ♡」

裏梅の陰茎からは壊れた蛇口のように精液が放出され続けている。それはアメーバの内部をどんどん白く染め上げていくが、一向に止まる気配がない。

「んおおぉおおぉおお♡♡♡」

射精が終わる頃には、すでに呪霊の中の半分以上は白い液体で埋め尽くされていた。しかしそれでもまだ足りないとばかりに裏梅のペニスは萎える様子もない。それどころかさらに硬度を増していき、さらなる快感を求めているようだった。

千年分溜まり切った劣情はこの程度では収まらなかったのだ。裏梅はアメーバ型の呪霊を再びペニスへとあてがうと、ゆっくりと挿入していく。

「んおおぉおお♡♡♡」

じゅぷぷっと音を立てながら再び肉茎が挿入される感覚に裏梅は歓喜の声を上げる。待ちきれないとばかりに一気に腰を落とすと、先ほどとは比べ物にならない程の衝撃が脳髄を駆け巡った。そしてそのままぐちゅぐちゅと音を立てて犯し始める。

裏梅の細い足がバタバタを動き回る様がまた艶めかしい。

「お"っ♡おっ♡おほぉおおっ♡♡♡」

獣のような声を上げながらひたすら快楽を貪る裏梅。目の前に羂索がいることすら忘れきったような蕩け顔を晒しながらひたすら腰を振り続ける。

「おほっ♡んぉおおっ♡」

裏梅の動きに合わせてアメーバ型の呪霊もぐにゅぐにゅと形を変える。それはまるで意思を持っているかのような動きで、裏梅の最も感じる部分を的確に責め立てようとする。その瞬間。

ガキン、と呪霊の周囲が凍りつき、アメーバ型呪霊に氷の手足が生え揃う。

「誰が私を攻めろと言った...私を攻めていいのは宿儺様だけだ...♡」

裏梅の氷凝呪法で呪霊の手足を象り固定させたのだ。

「あそこまで乱れてもこうまで繊細かつ正確に術式を扱えるとはね。相変わらず凄まじい呪力のコントロール精度だ。無駄遣いにもほどがあるけど」

羂索の一人言にも耳を貸さず、裏梅は呪霊をオナホールのように扱い続ける。だが、それだけでは飽き足らないと、今度は己の両手でアメーバを掴み、上下に激しく動かした。

「んっ♡♡♡んんんんっっ♡♡♡♡」

裏梅の細く長い指がアメーバにずぶずぶと沈み込み、そのたびにじゅぷっぐぽっと淫靡な音が響く。それがさらに裏梅の興奮を煽り立てるかのようだ。理性の欠片もない様子で獣のような声を上げながらひたすら快楽を求めるその姿は最早淫獣とでも呼ぶべきなのかもしれない。

「ふーっ♡♡♡ふぅぅっ♡♡♡」

「そろそろイキそうだね」

羂索のその言葉に裏梅がびくりと震える。そしてアメーバを握る手に力を込めたかと思うと、さらに激しく腰を動かし始めた。

「あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡」

腰の動きの早さに合わせるかのように喘ぎ声も早さを増していく。さながら列車のピストン運動の如し。パンパンと肉のぶつかり合う音が響き渡る。

「イクッ♡イクッ♡イッ……くぅううっっ♡♡♡♡」

裏梅が果てるその直前。

「あ」

呪力の流れが変わったのを肌で感じた羂索が声を漏らすももう遅い。

千年溜まった劣情。下半身の雄に与えられる至上の快楽。アメーバから与えられるふにふにとした感触。自分が攻めているという優越感と支配感。それら全てが重なり合った果てに生まれるのは、裏梅を持ってしても制御しきれない、術式の暴発。

「射精るっ♡ふーっ♡」

放たれた精と共に周囲が凍てつき世界が凍る。

出力最大限の『霜凪』である。


「やっぱり壊しちゃったねえ」

氷像と化した己の呪霊を見ながら羂索はぼやく。

「...返す言葉もない」

一方、性欲を発散し終えた裏梅は一周回って冷静にーーー俗にいう賢者モードに入り、遠い目で己の所業の結末を眺めていた。

「さあ、何でも言え。できる限りのことはしてやる」

『縛り』まで結んだ以上、ここで約束を反故にするわけにはいかない。性格の悪い羂索だからロクでもないことを頼んで来るだろう。そんな覚悟を決め、いつでも来いと言わんばかりに構える裏梅であったが、当の相手はと言うと。

「じゃあここらいったいを探して食料品とか服とか持ってきて。しばらく電気が使えなくなると思うからさ。はいこれメモ書き」

そんな、子供のお互いのような調子で欲しいものを書いたメモと袋代わりになる呪霊を持たせると、「そろそろ真人のとこの決着つきそうだから行ってくるよ」

と言い残して去っていく。

裏梅は縛りに従い、メモに書かれたものを探しているうちに思う。

別に重たい罰を求めていたわけではないが、こうもパシリ同然の願いを託されるのもなんだか腹が立つ、と。


この数十分後、対面する張相たち相手に彼女の機嫌が悪かったのはいうまでもなかった。

Report Page