淫紋ネタ

淫紋ネタ




マスターとともにやって来た景虎は、ずいぶん体調が悪そうだった。

レイシフト先でエネミーに呪いをかけられたらしい。足元も覚束ない様子で、マスターに支えられて立っている。それも精一杯で、荒い呼吸を繰り返していた。

「あの。あんまり知らないひとに見られたくないだろうから、晴信さんのところに連れてきたんだけれど……」

「医者には診せたのか?」

「うん。少し強い呪いみたいで、丸一日は解けないらしいんだけど、解呪するにも……その、いくらお医者さんとはいえ、ちょっとどうかと思って……」

マスターの言葉は歯切れが悪い。そうしている間にも景虎がふらついたので、マスターから女の体を預かって横抱きにする。寒いのか、ぶるりと体を震わせた。胸元しか覆わないインナーにホットパンツ姿だ。具合が悪ければ寒気もするだろう。

「とりあえず、部屋の中に入れる」

「うん。あの、詳しくは本人に訊いてみて。それからどうするのかは2人に任せるから」

マスターはそう言って、晴信の部屋には入らずに背を向けてしまった。晴信は首を傾げる。普段サーヴァント思いのマスターにしては妙に冷たいように思えた。

そうは言っても、本当に具合の悪そうな景虎を休ませる方が先だ。細い体をベッドまで運んで静かに横たえる。いつの間にか息まで上がって苦しそうだ。

「おい、大丈夫か? なんの呪いなのかわかるか?」

話しかけると、ゆっくりと視線がこちらを向いた。萌葱色の瞳が潤んでいて、熱があるようだ。額に手のひらを当てると鼻から小さく息が漏れる。さらに顔が赤くなった。

「……いけま、せん……さわら、ないで……」

荒い呼吸の中で、小さく拒否された。

「熱くらい測らせろ。喋れるならお前の異常状態も報告しろ」

「……魅了の呪い……」

景虎が小さく言った。晴信は一瞬動きを止める。それは、つまり。

「…………………わかった。できるだけ触れないでおく」

晴信が額から手を離すと、景虎は小さく息を吐き出した。その吐息が熱っぽい理由を知ってしまって、晴信は混乱の渦に落とされる。どうする。部屋からも出た方がいいか?

「……強いもの、らしく……紋が体に、浮かんで……います……」

景虎が辛そうに腕を腹の上から退かす。そこには桃色の魔術印が刻まれていた。噂に聞いたことがある、淫紋というやつだ。

「……誰も解呪できなかったのか?」

「ん……ます、たぁが……きを、つかって……」

なるほど。こんな状態の景虎を、医療関係者とはいえ他人に見せていいのか判断に困ったのか。

先ほど感じたマスターへの違和感は解けたが、だからと言ってなぜ自分のところへ連れて来るのか。別にこの女と自分はそういった関係ではない。

「……あなた、なら……へんな、きを、おこさないと……」

そういうことか。それならまあ、納得するしかない。

──少し複雑な気もした。

「…………へんなきって、なんですか…………?」

「………………………」

晴信は目を閉じた。ああ、そこならなのか。この女はそこからわかっていないのか。

頭痛を感じたが、先ほどから景虎の様子はますます苦しそうになっていて、話す声は吐息混じりになっている。辛いのは本当なのだろう。

「……ちなみに、お前は自分でしたことはあるか?」

「?」

首を傾げられた。なにをするんですか? といったところか。クソが。

こうなったら仕方がない。

「……俺が解呪する」

紋を見て、そこまで複雑な術ではないのがわかった。あまりこういった魔術は得意ではないが、やってできないことはないだろう。

景虎が、できるのか、といった目で見てくる。俺を誰だと思っている。甲斐の虎、武田晴信だぞ。

笑って景虎の頭をそっとなでると、それだけで息をつめた。相当過敏になっているらしい。

「少し我慢しろよ」

指の腹で、淫紋のある臍の下に触れる。つ、と紋に沿って指を這わせると、細い体が逃げるようにしなった。

「ゃ……!」

「頼むからじっとしてろ」

晴信の知識では、紋を見ただけではどうやって解呪するかわからない。紋を辿って術の構造を理解し、象を壊す必要がある。壊し方を間違えれば状況が悪化したり、最悪二度と解呪できなくなったりする。簡単な術だからと言って、不慣れな晴信には気を抜いていられない。

紋をゆっくりとなぞる。景虎の肌は白く、くっきりと浮かぶ紋をたどるのは難しくない。ただ意識を集中させる。なめらかな肌は指を滑らせるのに心地よいくらいだ。

「アっ、ゃ……! おなか、あつぃ……!」

景虎が逃げようとするので、思わず腰をつかむ。その刺激でも感じてしまうのか、細腰がびくびくと跳ねた。熱った白い胎が艶かしく動いて、嬌声が大きくなる。

「やだ、はるのぶ、さわらないで! へんなんです! へんに……にゃあ!」

体を押さえつけて、まず紋を一周。まだ術の構成要素がつかめない。もう一周する。指先でそっと肌の上をなぞった。

「おなか、あついッ……! ンぁ、おく、いたいですよぉ……!」

景虎は必死に腰をよじって、両手で晴信の肩を押す。離れようとしているらしいが、いつもの力の何百分の一と出ていない。これは重症だろう。まるで普通の女のような抵抗だった。

「やら、もぅやら……! むずむずして、あたままっしろに……にゃあん!」

紋を3周して、全体像は把握した。が、まだ解けそうにない。一度紋の全体、下腹部をそっと手のひらでなでた。

「ひゃああああああッ」

高い悲鳴が上がる。それよりも、紋全体を通しての方が魔力の流れがわかりやすいことに気がついた。女の胎をていねいに手のひらで覆って、円を描くように動かす。

「んにゃぁあああんッ」

景虎の全身がひくひくと痙攣している。解呪への抵抗だろうか? 景虎の症状が悪化している気がする。

「アッ、アッ……なで、にゃぃ、でぇ……」

「景虎、じっとしてるのは無理か?」

「む、りぃ……ッ!」

景虎は驚くことに、泣いていた。ぽろぽろと瞳から雫をこぼしている。よほど辛いのだろう。哀れに思って、体を抱き上げ、後ろから膝の上に抱えた。上半身を拘束して、胎に手を添える。

「もうちょっとだから、いい子にしてろ」

耳元で囁くと、それだけで女の全身がびくついた。抜け出そうともがいているのを無視して、改めて胎の紋に集中する。

紋のある下腹は丹田と言う、人の気が集まる場所だ。魔術的にも意味がある。たしかこの女は処女のはずだし、なおさら効果が高かったりするのだろうか。今回の術を覚えておいて、また後日調べてみようか。

そんなことを考えながら、紋に少しずつ魔力を流してみる。紋に通っている魔力の流れがよりわかりやすくなるだろうと考えたからだ。

「ッ、ぁ……ぁつィ……!」

「ああ、そうだな。すまん」

晴信の魔力は『火』の属性だ。特に直接的な焔を扱うので、晴信の魔力を熱く感じてもおかしくはない。

手のひらで、こねるように胎を押してみる。瑞々しい肌と筋肉がきゅっと抵抗してくるのを感じた。魔力の流れも多少変化する。

「ふぁ……あ、ンん……ッ」

景虎が泣きながら腕の中で身悶える。体が汗でしっとりとしてきた。体温が上がって景虎の香りが匂い立つ。

何度か臍の下をこねるように触れると、女はその度にあッ、あっ、と小さく悲鳴を上げ、びくびくと大きく体を震わせたあと全身を弛緩させた。

「はぅ……の……」

「ん? どうした」

耳たぶのそばで話すと、細い肩がぴくんと跳ね、臍もひくひくと震えた。はぁはぁと繰り返す呼吸も湿って聞こえる。

「も、やめ……」

「あと少しだから、我慢しろ」

紋の全体がようやくつかめた。ここに魔力を流せば解呪できるはず。

「少し熱いが、じっとしてろ」

「ゃ、まっ……て……はる、の……」

腕に縋りついてくる景虎を片腕だけでそっと拘束して、臍の下に手のひらをぐっと押し当てて魔力を流す。女の体が電流を流されたみたいに跳ねた。

「んにゃああああぁあッ♡」

景虎は全身をガクガクと痙攣させて、次にくったりと体を晴信に預けてきた。

景虎の腹を見る。淫紋は消えていた。解呪は成功したらしい。

「よし、これでいいぞ。大丈夫か、景虎?」

改めて腕の中の女を見ると、全身を真っ赤に染め上げて、ふぅふぅと荒い呼吸を繰り返していた。とくに己の手がある下腹から伸びる脚の間は、ホットパンツ越しでもわかるほど濡れている。泣いて涙のたまる瞳に睨みつけられて、晴信は我に返った。

──強い淫紋だと言っていた。

それなのに、素肌に触れて腹を撫で、揉んでと好き勝手に弄り続けた。魔術に集中していたが、嫌だやめろとも言われていた気がする。

どっと冷や汗が背中を流れた。

「いや、違う! 俺はお前が早く楽になればと思ってだな!」

「……そう、ですね……」

景虎の声は擦れていて小さかった。こんなになるまで矯声を上げていたのか、と思うと今更ながら体の一部が反応しそうになる。

──いや、どうやらもうしていた。

意識が向いていなくても、景虎の声や肢体に勝手に体が反応していたらしい。我ながら正直過ぎる。

「かいじゅ……でき、たん……ですか……?」

「あ、ああ。そのはずだが……」

しかし、景虎は少しも楽になった様子がない。部屋に入ってきた時以上に全身が火照って、体に力が入らないように見える。何度も自分で膝頭を擦り付けているので、なにを欲しがっているのか一目瞭然だった。

「……ぜん、ぜん……さっきから、ヘンなッ……まま……なんですが……」

抱きかかえている晴信の腕の中、景虎が身悶えている。思わず音を立てて生唾を飲み込んだ。

いや、しかし──

「……お前、それどうしたらいいか、わかるか?」

「わか……り、ま……せ……ンっ」

ふと腹に手が触れただけなのに、景虎は快楽に息を詰めた。感じ過ぎだ。これはもう、ある程度発散させてやらなければダメだろう。

「……お前、処女だよな?」

景虎は、こんな時になんだ、という目をして睨んでくる。

「……そう……、です……」

「……抱かれたい奴がいるなら、今から連れてきてやる」

もしこのカルデアにいれば、だが。

しかし、そんな奴がいたらいたで晴信としては穏やかではない。別にこの女相手に色恋を持ち出す気はさらさらなかったが、自分以外の男に目が向く長尾景虎など、解釈違いもいいところだ。

思わず抱きしめる腕に力を込めると、景虎がふにゃぁあ♡と甘い声を上げた。その声だけで背筋がぞわぞわと痺れる。

この声を、ほかの男に聴かせるのか? 怒りで腑が煮え繰り返りそうだ。

「……景虎?」

「……ょく、わかりません……」

そうだ。お前はそれでいい。

「……でも……」

すっかりとろけた瞳で見上げられて、晴信は息を止めた。

「……もしだれかに、からだをあずけるなら……。わたしは、はるのぶが、いいです……」

ないはずの心臓が激しく動き出した。思うように息ができない。頭の片隅では、淫紋の影響で言っているだけだと警鐘が鳴らされている。それでも、景虎に求められた現実で脳の大部分が占められた。

「……わたしは、ずっとむかしから、はるのぶだけですよ……」

苦しげな吐息ととも吹きかけられたその言葉で、晴信は理性をくずかごに入れて燃やした。

口付けて舌を絡ませる。小さく狭い口腔はねっとりと熱く、薄い舌は辿々しいのに情熱的だった。ぴちゃぴちゃと唾液を絡ませながら晴信の舌に吸い付いてくる。

「んふ、ちゅ、ちゅううっ」

「ン、こら、がっつき過ぎだ」

ようやく離れても、景虎ははっ、はっ、と飢えた犬のようにこちらを物欲しげに見上げてくる。

これは一度満足させてやらないと、真っ当に会話もできなさそうだ。晴信は景虎のホットパンツの中に手を差し込んで股間を撫でる。すでにそこはぐちゅぐちゅに濡れそぼっていて、パンツの外まで滲んだ愛液が太ももを伝っていた。

「……ずいぶん我慢してたな」

「……やめてって、いった、の、に……ひゃあ!」

「悪かった。もう我慢しなくていいぞ」

晴信が中指を膣に挿入すると、ぐぷぷぷぷ、とたっぷりと湿った音を立てて飲み込んでいった。

「ふあぁあぁァあああん♡」

「……気持ちいいか?」

景虎は泣きながら何度もうなずいた。これは、あまりにも……。

思わず興奮した晴信は、未通の膣内をもっとよくほぐそうと、中指をぐちゅぐちゅとかき回してみる。景虎はその都度甘く達しているようで、晴信の体にしがみつきながら甘い声を上げ続けていた。

「にゃぁ♡ にゃ♡ きもちぃ♡ はぅのぶ、きもちい♡♡♡」

「ん、そうか」

「もっと♡ もっと♡」

ねだられたので指を増やすと、きゅううううっと膣が指を締め上げてきた。

「……処女が指でナカイキするなんざ、とんでもない術だな」

「? んにゃ♡ なか、ずっとあつくてぇ♡ こんにゃに、はいるんですね♡」

「……もっと奥までほしいか?」

「ほしいです♡ いっぱいください♡」

甘ったるい声でねだられて、晴信は一度指を抜いて景虎のホットパンツをずり下ろした。

そこは愛液まみれで、無毛の恥丘からホットパンツまでねっとりと糸を引いていた。

「ぐちゃぐちゃだな」

「や……」

景虎が、力の入らない手のひらで晴信の顔を塞ごうとする。見るなと言いたいらしい。その手を奪って手のひらに口付けると、それだけで萌葱の瞳がとろりととけた。

膝裏を持ち上げて蜜まみれの秘部を開かせる。ぱっくりと開いた肉の花を眺めて、興奮に大きく肥大したクリトリスに目を付ける。指先だけでくすぐると、それだけで女の細腰が卑猥に捩れた。

「んにゃぁあッ♡」

両脚が力んでぶるぶると震える。蜜がぷしゃりと吹き出したので、軽く達したのだろう。そこからさらに肉豆を押し潰しながら指を挿入して膣壁を擦ると、ニチャニチャと愛液が泡立って女の匂いを強くした。

「あっ♡ んァ♡ ふにゃぁあああ♡ も、ナカ、あつくて、いたいです、よぉ……♡」

「わかった」

晴信は景虎のおねだりに負けて、スラックスの前をくつろげて興奮し切った剛直を膣口にあてがう。早くも圧迫感を感じているのか、景虎の呼吸が浅くなるのを感じた。

「景虎、こんなに濡れてたら大丈夫だ。力抜け」

「ん……」

そう言ったところで、初床では難しいだろう。晴信は景虎の手を自らのそれで覆って、指先を絡めた。ゆっくりと口付けると、景虎が満足そうに呼吸するのを感じる。息を合わせて一気に膣内へ押し入ると、細い体は電流が走ったかのようにびくびくと痙攣した。

「ッ♡♡♡♡♡♡♡」

キスで声を奪って、両手を甘く拘束して、晴信は景虎の胎内を蹂躙する。熱くうねる膣肉にきゅうきゅうと甘えられながら、浅い部分を陰茎で捏ね回し、気まぐれに奥へと押し込む。晴信が動く度に景虎の脚がびくびくと震えて晴信の腰に絡みついてきた。ああ、堪らない。

舌を合わせて互いの肉を甘噛みしては舐めて絡め合う。それだけでも恍惚感で背筋が震えるのに、剛直を飲み込んだ膣肉は熱くぬめって動く度にきゅうきゅうと締め付けて子種汁を催促してきた。早く出して。奥に出して、と甘く誘われて、つい亀頭をぐりぐりと膣奥へ擦り付けてしまう。

「ん♡ んンぅ♡ ん〜〜〜〜ッ♡♡♡」

景虎が弱い嬌声を上げて果てるのがわかった。初物が膣奥でナカイキするなんて、本当に淫紋さまさまだ。

合わせたままの唇の端を上げ、晴信は自らも精を吐き出そうと腰を大きく動かした。何度も甘イキしてぴゅっぴゅと蜜をこぼす膣に血管が浮かぶほど太ったペニスを出し入れする。奥を何度も何度も突き上げて、ふと蠢く白い腹を手のひらでなでる。己の肉棒が目一杯詰め込まれた気配にほくそ笑んでいると、激しい膣の収縮がはじまった。

「ン♡ んぅ♡ ンにゃ♡ 〜〜〜〜〜〜〜ッ♡♡♡♡♡♡」

「ッ、〜〜〜〜〜〜〜ッぅ!」

あまりに激しく膣壁に雄肉を揉みくちゃにされ、晴信は強烈な射精感に襲われる。そのままビュルルルッと音がするほど思い切り精液を膣奥にぶち撒け、その快感に目の前が真っ白になった。


息を整えて景虎を見ると、女も浅く呼吸を繰り返していた。赤い顔でぐったりとしているので、体のことが心配になってきた。

あまりに善過ぎて、初めての女を十分に気遣ってやれたとは言えなかった。

「景虎、大丈夫か?」

声をかけると、ゆっくりと視線が晴信をとらえた。潤んではいるが、先ほどよりも女の意思を感じる。

「……淫紋の方は大丈夫そうだな」

「……おかげさまで……」

景虎は、なぜか少し不機嫌そうだった。一応合意したつもりでいたが、やはり不服だったのだろうか。どう切り出したものかと思案していると、景虎が抱きついてきた。まだ体に力が入らないのか、弱々しい様子に思わず晴信も抱きしめ返した。

「……今日私が言ったことも、今日したことも全部忘れなさい」

──ああ、やはり。

淫紋に狂って、本心ではないことを言ったのだろう。自分に抱かれることは本意ではなかったのだ。

そう思うと、なんだか無性に悔しくなってくる。相変わらず俺のことをめちゃくちゃにしやがって。俺がどれだけ浮かれたかもわからんのだろうよ!

晴信の瞳は苛立ちに燃えて、そのまま強引に腕の中の女に口付けた。抵抗はなかったが、離れると驚いたように目を丸くしていた。

「……嫌だ。絶対に忘れてやらん」

「……さすがに悪趣味ですよ。こんなので私を脅したり負けをつくってやろうなどと……」

「そんなんじゃねぇ」

もう一度口付けて、軽く舌を絡ませる。離れる時にも舌先で薄い唇を舐め上げると、女の白い顔が赤く染まった。

「……なにするんですか」

「俺は忘れたくない。忘れる気もない」

忘れてたまるか。

──わたしは、ずっとむかしから、はるのぶだけですよ。

たとえ邪な魔術で正気を失った上での言葉でも、絶対に忘れてなどやるものか!

意固地になった晴信に、景虎は困ったように眉を下げた。

「……私、貴方の愛人など御免ですからね?」

「あ? 誰が愛人だって?」

「私の気持ちを利用して体を弄ぼうなど、我が宿敵も閨では下衆な男と成り下がるのですね。見損ないました!」

「は⁈ 別に弄ぶつもりなんざ……」

「なら、今日のことを忘れない、などと意地悪言うのは何故ですか!」

「うれしかったからに決まってるだろ!」

つい、本音が転がった。しまった、と思っても晴信に時を戻す術はない。思わず顔を背けると、景虎に頬を両手で挟まれて強引に見つめ合わされた。

「……晴信」

「………………なんだ」

「今日は、一部貴方のせいでもありますが、7割ほどは助かりました」

「3割はなんだ。俺はなにもしてないだろうが」

「自覚なかったんですか? 最悪ですね。……それで、晴信」

「………………なんだ」

「前から私のこと、抱きたいと思っていたのですか?」

──最悪だ。最悪だ。最悪だ!

おそらくつい先ほどまで『抱く』の意味も朧げだった可能性のあるこの女に、こんなことを訊ねられるとは!

晴信は屈辱の中、景虎を睨みつけた。

「…………そうだ」

景虎が満足そうに抱きついてきたので、晴信は思い切り抱きしめた。

「……晴信。男が一度言ったことです。忘れないように」

「どの話だ」

「絶対に忘れない、というやつです」

「ああ。……まあ、2度はなさそうだからな」

「……欲しいなら言ってあげますけれど」

「……なら今言え」

「言ったらどうします?」

「正気になったお前をもう一度抱く」

景虎は満足そうに笑って、晴信の耳元に唇を近付けた。







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