海列車潜入~ウソップ・フランキーと遭遇まで

海列車潜入~ウソップ・フランキーと遭遇まで


 海列車「パッシング・トム」。嵐の中を進むその列車の最後部で、サンジはダメもとで擦っていたマッチをポケットへと戻した。

「しっかしここはまあ、めちゃくちゃに濡れるな・・・一服もできやしねェ・・・

 大丈夫かい、ウタちゃん?」

「平気。ごめんねぇ、ベスト貸してもらっちゃって」

 少しでも濡れないようにと渡されたサンジのベストを示しながらウタが応える。

「いいってことさ~♡レディーに風邪ひかせるわけにはいかないものな~♡」

「アハハ。とにかく、早く中に入らないとね」

「ああ、どうにかしてこっそり中に潜入を・・・」

「いやァ、外はすごい風・・・」

「「「!」」」

 ガチャリと最後尾のドアが開き、顔を覗かせた政府の役人と二人の視線がぶつかった。

「“首肉(コリエ)シュート”!!」

 刹那、いい笑顔のままサンジの放った蹴りが頭部に炸裂し、憐れな役人は列車内へと吹き飛ぶ。突然飛んできた同僚とそれを行った犯人の姿を捕らえ、車内の他の役人たちは一斉に銃を構えた。

「誰だ貴様らァ!!」

「ぎゃ~~~~~!!!」

「あちゃあ・・・」


「ねえサンジ、さすがにこの侵入はうるさすぎない?」

「いや、すまねェ・・・つい勢いで」

 騒ぎ立てる役人たちを尻目に、呑気にそんな会話をするサンジとウタ。

「今の蹴りを見たぞ!ただの民間人じゃねェな!」

「コイツァ只者じゃねェぞ!!」

 何にせよ、ようやく一服できるとタバコに火を点けながら、サンジは言った。

「・・・・・・そんな事正面きって言われても、てれる」

「良かったねサンジ」

「いやホメてねェよ!!!」

 とぼけた調子の二人に、つい役人からもツッコミが飛ぶ。

「ナメてやがるな・・・!」

「おい、すぐにルッチさんに報告しろ!不審者が侵入してると!!」

「待ちナイ!!・・・ゲホ」

「「!」」

 突如、サンジとウタの頭上から新しい声が降ってきた。

「わざわざCP9”の耳に入れる様な事じゃないジャナイ・・・ゴホ。

 どんな乱暴な不審者だろうとも、恐るるに足らナイ!なぜならこの車両には・・・おれがいるジャナイ!!!・・・ゴホ、うっぷけむてェ・・・」

「ジェリーさん!!」

 二人が振り仰げば、最後尾のドアを股の下に通し、上半身を海列車の屋根に沿って曲げた大男——CP6諜報部員・ジェリーが、タバコの煙に咽ながらサンジとウタを見下ろしていた。

「ハッハッハッハゴホッ!おい小僧ども、おれは南の海”の空手が盛んなある島の『王者』なんだぜ?そう、おれは・・・」

 訝し気な表情で見上げる二人に、ジェリーはノリノリで自らの経歴を告げた。


「ボクシングチャンピオン!!!」

「「カラテやれよ(やりなよ)」」


 二人の無情なツッコミに、役人たちから「殺生な!!」という悲痛な声が上がる。それが合図になったのか、上体を折り曲げた姿勢のまま、ジェリーが攻撃を繰り出してきた。

「“ジェリ~~・オーロラフリッカージャブ”!!!」

 うねるようなパンチの雨が降り注ぐが、さらりと後方に移動したサンジ達には当たらず、逆に巻き込まれた役人たちの悲鳴が上がる。

「ん!?逃げたか・・・

 おい小僧ども!おれが長身だからって、この狭い車内で不利だなんて思ったらだめジャナイ」

「別に思ってないよ」

「股の間からなんか注意されたの初めてだ」

「おれのボクシングは狭い場所ではむしろ有利!!」

「「・・・」」

 若干面倒くさくなってきた二人をよそに、ジェリーは意気揚々と叫ぶ。

「ヨガ・スタイルだ!!」



「ヨガ1・2!1・2!!」

「リーチ短くなったぞ!!!」

 とんちきな姿勢でワン・ツーを繰り出すジェリーにサンジはツッコミ、ウタはため息をついた。

「そう、見せかけて——

 “スクリューーー・ドロップキック”!!」

「もうボクシングのルール無視かお前っ!・・・時間の無駄だな」

 吐き捨て、突っ込んでくるジェリーを交わしその上を取るサンジ。そのまま体を捻り——

串焼き(ブロシェット)”!!!」

 繰り出した蹴りが、ジェリーの頭部にのめり込んだ。

 一撃でジェリーが倒されるという事態に、車内の役人たちが衝撃で固まる。

「よ、よくもジェリーさんを!」

 それでも切り替えて銃をサンジに向ける役人たちだったが、そんな彼らの反応を許さない速さで、一つの影が微かな旋律を残しながら、風のように走り抜けた。

軽やかな舞曲”(リエーヴェ・ダンス)」

 反対のドアの前まで到達したウタが、くるりと回したマイクランスでトンと床を突く。途端に武器を構えた姿勢のまま、残りの役人全員がその場に崩れ落ちた。

「静かな侵入と戦闘って、こういうのじゃない?」

 くるっと振り向き、ハートを飛ばすサンジにウタはニッコリ笑ってみせた。


第7車両(最後尾)・制圧


~~以下しばらく原作と同じ流れ~~


第6車両(貨物車両)

「“首肉(コリエ)フリット”!!!」

「“急速な練習曲(プレスト・エチュード)”!!」

 サンジの蹴りとウタの突きで、海列車の天井と壁へそれぞれ役人が吹き飛ぶ。そんな二人を見て、ミノムシ状に縛られたウソップがつい声を挙げた。

「サンジ!ウタ!お前らがなんで海列車にいるんだ!?」

「そりゃあ・・・こっちが聞きてェよ。そこの・・・あー、名前など存じませんが、そこのキミ」

「わっざとらしいなてめーこの」

「もう、そんなこと言わない!とりあえず無事?みたいで良かったよ、ウソップ」

「!・・・・」

 顔を綻ばせるウタに対し、ウソップは表情を陰らせる。その様子を静観した後、サンジはナミたちとの連絡のため電伝虫の物色を始めた。

「お前ら・・・つまり海賊仲間か」

「「元な」」

「あなたは?」

 息ピッタリの答える二人と、見知らぬ人に名を尋ねるウタ。

「おれァウォーターセブンの裏の顔!”解体屋”フランキーだ」

 その名前を聞いたサンジとウタの反応は早かった。



「てめェがフランキーか!!!クソ野郎!!!」

「よくもあの時はウソップをえらい目にあわせてくれたね!!!」

「何枚にオロされてェんだコラァ!!!!!」

「アンタの断末魔をそのままアンタの葬送曲にしてあげるよ!!!!!」


 容赦ない蹴りと槍の打撃がフランキーの頭部に集中する。

「てんめェ~~~らこの縄解けたら憶えてろォ!!?」

「いやいやちょっと待て!あれから色々あったんだ!!こいつは一時メリー号を助けてくれたし

 ・・・そうだ、メリー号は・・・!!」

「!?」

「どういう・・・」

「おいおい待て、今しんみりしてる時か。とにかくお兄ちゃんたち頼む、縄を解いてくれ」

「誰がてめェの縄を解くか」

「一生捕まってなさいよ」

「んだとォ!人が下手に出てりゃいい気になりやがって!」

「おいてめェらやめろってのに!!グズグズしてたら見つかっちまうだろうがァ!!」

 サンジ・ウタ・フランキーの言い合いとウソップの悲鳴が第6車両に響き渡る。

 後方車両の騒がしさに、前方第5車両では、一人の男がゆらりと席を立った。

「あ!Tボーン大佐!!」


~~以下、原作と同じ流れでソゲキングと合流(?)~~

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