流行りなんだろ?
迂闊なグエル疲れているのだろうな、とラウダの顔を眺めながらそう思った。いつもの凛々しい目の下にくっきりと浮かぶ隈、いらいらと髪をいじる指。全てが痛々しく見えて仕方がなかった。
「ラウダ」
「……なに?」
「おっぱい揉むか?」
最近流行りなんだろ、疲れたら揉ましてやるの。癒されるらしいし。そんなことを呟く。まぁ本音は、最近忙しくて構ってくれないラウダといちゃつきたい、という下心しかなかったのだが。
同時に、ラウダの手の中にあったボールペンがぼきりと真っ二つに折れた。
ベッドにお互いに正座で向き合いながら、俺は肩にかけていた上着を脱ぐ。よし、 と背を正し、胸を張るようにしながら肩の力を抜けば、ラウダの方を見る。
「いいぞ」
どんとこい、と言えば、ゆっくりだがラウダの手が俺の胸の方に伸びてきた。おずおずと、何度か触れそうになる手が、戸惑うように止まったり動いたりしている。ラウダは顔を真っ赤にし、あーだとかうーだとか、唸りながら何かと戦っている。世の中には脳内に天使(理性)と悪魔(欲)を飼っているとか飼っていないとか、なんたらかんたら。あまりにも焦れったいので、ラウダの手を掴んではそのまま自分の胸を触らせた。
「〜〜〜〜?!?!」
真っ赤に染ったラウダは同じ言語なのか分からない言葉を発しながら手を引っ込めようとする。許さん。
「逃げんじゃねえよ、揉むって決めたら揉めたなら揉め、男だろ」
「い、今の時代にそんなこと言う?!時代遅れッ」
「じゃあもう揉まないのか」
「揉むが?」
結局揉むんかい。
ラウダは失言したのに気付いてないのか、真っ赤になった顔のままうぅ、と唸っている。はよ揉めと視線を向けていれば、観念したのか片方の手も伸ばされ、ふに、と胸に触られた。輪郭を崩さないよう、外側を撫で下から持ち上げる。
「お、わぁ…」
歓喜の声。
下からたぽたぽと揺さぶられ、ちょっと恥ずかしくて目をそらす。なんというか、揉めと言っときながら結構恥ずかしい。下着外した方が良かったかな、とぼんやり考えていれば「もんでいいですか…」と今にも消えそうな声が聞こえ、俺はうん、と頷いた。
両手で胸を寄せられる。ふにゅりと崩れた胸を、パイロット科らしいごつごつとした手がむにゅむにゅと揉みしだく。やっぱ恥ずかしいことしたかも。今更ながらに提案したことを後悔するが、これでラウダが癒されるならいいと腹を括った。ええい女は度胸だ。舐めるなよレンブラン家の女を。今だにミオリネと義父のえげつないレベルの口喧嘩についていけない女だが、度胸とその場の勢いだけは誰にも負けてないつもりだ。いやそれっていいのか?ダメなのではないか?つまり猪突猛進なだけでは???だめだ現実逃避がおかしな方向に走り出した。揉まれだしてから何だか体がゾワゾワする。あとラウダの表情が読めない。だってさっきから無なのだ。目線だけが胸に注がれ、無の表情で胸を揉みしだいている。怖い。え、怖い。そしていたたまれない。さっきみたいに顔を真っ赤にしたりするならまだしも、その無はなんだ?!
「…ら、らうだ、ほら、もう満足したろ。おっぱいはおしまいっ…」
これ以上はイケない。色んな意味で、やばいかもしれない。
そう思い胸を隠すように両手でカバーし、ラウダの手から逃げる。体を捩り、背を向ければそのまま肩を掴まれ、ラウダの胸板に背を預けるように凭れかからされる。顔を上げれば、あまりにもガンギマリを決めたラウダと目が合う。
「僕はまだ満足してないんだけど」
「ひっ」
「癒してくれるんでしょ?」
「あ、あの」
「僕が癒されるまで、揉ませてもらうから」
あまりにも低くすぎる、有無を決めさせない声。俺は断るすべを失い、「はい」と震える声で答えることしか出来なかった。
「っ、あ、ぁッ…」
甘い声が零れる。
背後から伸びてきた手は、先程までのおずおずとした手つきではなく、しっかりと胸の柔らかさを味わう手つきだった。しかもこいつ揉んでる最中にブラジャー外した!!!前ホックだったのが敗因?それはそう。いやそんな事ねえよ!!いいだろ前ホック!楽なんだよ前ホック!脳内で「お前が悪い」と指さしてくるもう1人の自分にツッコミを入れながら、何とか自分を保つ。そうでもしなきゃ恥ずかしさで死んでしまうのだ。
だってだって、ぐにゅ、ふにゅ、と胸を、その、なんか、伸ばしたり、こう、搾るみたいな、そんな揉み方聞いてないもん!揉むじゃねえもん!俺は悪くない!そんなことを考えていたせいか、ぢゅぅ〜とうなじを不意打ちで吸われては悲鳴をあげた。
「ひゃああ?!」
びくびくと体が揺れる。
前のめりになって、やぁと甘ったるい声を上げてしまっては、情けなさに顔が真っ赤になった。やぁではない。やめろと言え俺。だが正直今声を上げたら変な声しか出ない。甘ったるくて、どろどろした声しかきっとでない。あれ?おかしいほんとにおかしい!たかが胸、脂肪の塊。なのになのにっ
「ぅ、う゛〜……」
きもちいい。お腹の中が、キュンキュンして、息が上がってしまう。
「ふふ、グエルの乳首、勃ってる」
「は、?」
インナー越しに、かりかりと爪で乳首を引っ掻かれる。がくん!と体を跳ねさせてはぱちぱちと瞬きを繰り返した。
「ぇ、な、んれ」
「インナー越しだからかな?よく分かるね、ここ」
つんつん、と指で突っつかれる度に太ももが震える。やだやだと首を振れば、それを叱るようにうなじに歯を立てられ背筋をピンッと伸ばした。うなじに歯を立てられ、乳首を爪でかりかり。掌は器用に胸を揉みしだいており、その器用さに悲鳴が上がる。さっきまでの可愛い可愛いラウダは何処。え、俺がその可愛いラウダを壊した?そっかぁ…。
爪がかりかりと乳首を虐める。ラウダの口がうなじを噛む。腹の奥に溜まっていく熱が、どんどん膨らんでいく。あーまずい、これはまずい。むにゅ、むにゅっと揉み続けられる胸も、熱くて熱くてしかたがない。
「ぅ、う゛〜ッ…?!」
あ、これ、まずいのがクる。はっ、はっと息が上がり、下半身がグッと重くなる。まずいまずいまずいと脳が信号を出している。必死になって逃げようとするも、ラウダにがっしりと捕まっているせいで逃げれない。バカ加減しろ!と引き剥がそうとラウダの腕を掴む。ラウダは気にも留めず両胸を寄せながら乳首をすりすりと指の腹で擦り上げている。それ、キツい、っ
「や、やぁ!ああ、あ、ッ!だめ、だめだっきちゃ!」
「えっ?」
「い、く、いっちゃ、やだ、いく、いッ………〜〜〜〜ッ!!」
ラウダの腕の中で体が大きく跳ねる。
爪先をピンッと伸ばし、体を弓なりに仰け反らしながら胸での絶頂を、極めた。
お腹がキュンキュンして、体が痙攣する。絶頂の波が引けば硬直した体から力が抜け、ぽひりとラウダの胸元に再びもたれ掛かった。ふ、ふ、と呼吸を整えていれば、再び胸に手が迫っており俺は逃げるように前のめりになる。シーツを掴みラウダの懐から逃げる。ダメな極め方をした、絶対まずい、これを続けられたら、死ぬ。色んな意味で!そんなことに考えを割いてたせいなのか、ラウダの手が俺に迫ってることなんて全然気付かなくて。
「ひっ?!」
ずるる、と足首を掴まれては引き戻される。体格差と力の差が悔しい。あっさりとラウダの下に戻されては、そのまますっぽりと檻の様にラウダの腕が俺の顔の横に置かれる。ラウダに見下ろされ、己がラウダ見上げる構図にそれはそれでときめきながらも、そんなトキメキをぶち壊す硬い物の存在にふるふると弱々しく首を振った。
「ラウダ、やだ…」
「グエル」
「ひゃいッ」
「男はね、止まれって言われて止まれるほど高性能なモビルスーツじゃないんだよ」
ラウダの眉間に、少し青筋がたってる。
あ、怒ってる。珍しいな、かっこいいな…なんて現実逃避が過ぎると思うが、これから行われるであろう長い長い地獄を待つ間なのだから少しは許して欲しい。
ふー、と腹の底から吐かれている息は熱く、それに応えるように当たっているラウダの硬い欲が、びきっと揺れる。
「グエルは1回、自分が起こすアクションがどれ程『僕』に影響を起こすか、身をもって知るべきだ」
ねぇ?と甘ったるい声とは裏腹にブチギレている顔をしているラウダに、ひゅっと息を飲む。明日立てるかな…と再び現実逃避をしながら、近づいてきたラウダの唇を、とりあえず大人しく受け入れるのだった。