泥中の花 ー夢の四層目ー

泥中の花 ー夢の四層目ー


【…あの世界があんな事になったのは、これが原因だったのかな……。】

「……マスター、レイシフトしたことのある世界の記憶だったのかい?」

【レイシフトした時はもう殆ど壊滅状態だったから、流れてくる映像が直ぐにレイシフトしたことのある場所だって分からなかったんだよね。それに今まで一緒に行動してたあのヒトと会ったのは最後の方だから、会話する機会が無かったから直ぐに分からなかったんだ】

階段を降りながら思わずポツリと呟いてしまう。落ち込んでいる自分を気遣ったのかフィンが優しく問いかけてきた。

かつてはレイシフトしたことのある、崩壊間際の古代インドの特異点を思い起こしながらそう言葉を紡ぐ。

「・・・遅いぞ!・・・全く。俺は肉体労働が嫌いなんだ、歩かせないでくれ」

「君の方に敵が行かないように立ち回っていたんだけどなぁ・・・」

【アンデルセン、アレキサンダー、無事だったんだね。】

「ところで、そんな風に顔を突き合わせて何かあったのだろう?話してみろ、面白ければ小説のネタにしてやろう。」

【カクカクシカジカ】

→【えぇと、実はね…】

階段を下り切ることなく顔を突き合わせて話して居た所、聞き覚えのある声が階段まで響いてくる。そちらへと振り向くと洞窟内を歩き、怒っているような表情で話すアンデルセンと困ったように笑うアレキサンダーが居た。

アンデルセンはこちらが暗い顔をしていたのに気が付いたのか、階段の上り口まで近づき面白いことでもあったのかを矢継ぎ早に問いかけてくる。アンデルセンに話せば何か解決策が思い付くのでは無いかと思い、今までのことを一つ一つ伝えていった。

「・・・なる程な。それで、お前はどうしたいんだ?」

【あんな寂しい記憶を持ったまま終わって欲しくないんだ…。エゴだって分かってる。それでも、放おっておく事は出来ないんだ。】

「私からもお願いです。・・・どうにか新しい物語を紡ぐことは出来ませんか?」

「物語を紡ぎ、先に進むことが出来るのは生きている人間だ。マスターで足りないのなら上の層に居た彼の力も借りればいいと思うんだが・・・。」

考え込んでいるのか腕を組みながらアンデルセンは続きを促す。自分が思っていることを隠さずに伝えると、トネリコも思うことがあるのか言葉を重ねてくる。ジークも似たような気持ちなのか、別の手立てがないのかの意見を出してきた。

【今からこの階段を戻るのも、彼らに協力するのも許してくれるかな・・・】

「・・・階段を戻るのはやめた方がいいかな。けれども、今までと違うこともある。マスター、シャクニから受け取った髪飾り、まだ手に持っているだろう?」

「そういえば、今までのように髪飾りが吸い込まれずに扉が開いたな。どうしてだ・・・?」

「!!多分、それはシャクニ個人に分け与えた鍵であって、今までのカギと違い扉を潜ったと認識されていないみたいですね。それに、私であれば1つ前の層に1人送るぐらいなら目を掻い潜って行うことが出来ます」

ちらりと後ろを振り返り、見えもしない潜ってきた扉を思い浮かべる。フィンがその言葉を聞いてしばらく考え込み首を振る。だが、同時に思い付いたことがあったのかこちらを指さしてくる。ジークも先程の扉の開き方の違和感に気が付いたのか首を傾げたのを見て、特に疑問に思うことなくつい流れ作業でポケットにしまったカギを慌てて掌に乗せ、全員に見せるようにして広げて見せた。

トネリコはすぐさま魔法で髪留めを解析したのか驚いたように声を上げ、誰にも分からないように1人だけなら戻らせることも出来ると口にしてこちらを見つめてきた。

【アンデルセン!お願い!力を貸して!】

「名を与えるなら誰でもできる。それでは虚勢を煮詰めた張りぼてと何ら変わらん。貴様が求めているのはそうではないのだろう?」

『時間稼ぎが必要ならわしも手伝ってやれるぞ』

形の定まっていないものを固定し、新しい個として実体化したことのあるアンデルセンであれば何とかなるのではないかと思い頭を下げる。アンデルセンは今のままでは不可能だとでも言うように首を左右に振るが、その言葉を遮るようにしてどこからともなく言葉が聞こえてきた。

「・・・何時から聞いていたのかな?」

『なかなか気配がその階段から移動しないんだ、気になりもするだろう。因みにあのお方は、階段の中の出来事関しては目を向けていないからこの会話も伝わっていないだろう。現に追い出されないのがその証拠だ。』

「俺たちに協力するという事は、あなたにとって本来なら留めておきたいドゥフシャーサナ達に協力するという事だ。・・・それでも、いいのか?」

『わしはわしのやりたいように動くだけの事よ。・・・最終的にわしの愛しい甥が笑っていればそれでいい。』

【・・・なんていうか、ドゥリーヨダナの血縁者だなぁ・・・ってかんじがするね・・・。】

フィンが声が聞こえた方向へと厳しい口調で話しかけると、扉から動かずにこちらと会話をするためなのか、半透明のシャクニの姿があった。やれやれとでもいうような口調で話すシャクニは先程会った姿とは変わりがない。

ヒントすらもこちらに与えるような話をするシャクニに、ジークは理解できないとでもいうような顔で問いかける。「他人のことなど知らん」とでもいうようなシャクニの話し方は、カルデアに居るドゥリーヨダナそのものだったので、思わず気が抜けて少し笑ってしまった。

「・・・さて、とりあえず。話は纏まりましたね。まずは私がジークを1つ前の層へと送り出します。」

「そして俺がドゥフシャーサナ達に合流し、シャクニと戦い正規のカギを使い扉を開けてもらうことでマスター達が門を潜ったと誤認してもらう。」

「ジークを送り出すと同時にこちらは彼らに気が付かれないよう目くらましの術を掛けつつ奥に進む。・・・今までの層に出てきたのと似たようなエネミーには効かない可能性もあるからそれも考慮しないといけないがね。」

『門番としてやすやすと通す訳にはいかんから、そこらへんは先程と同じく手加減はせんぞ。・・・お前たちが居る層にある扉が最後であり、その先は最奥だ。さすがにそこに立ち入る権限をそのカギには与えられていないから、実力行使で押し通るしかない。そこの門番は凝縮された怒りの具現と言ったところだから強力だぞ。』

「その先は出たとこ勝負と言ったところか。貴様の逸話が変に影響を与えなけらばいいがー・・・いや、失言だったな。聞かれていないとはいえ、可能性が形になってはすくわれんからな。」

「もしかしたら、彼の宝具が必要な可能性もあるから、僕は護衛として彼と一緒になるべく後方に下がって待機。・・・そんなところかな・・・?」

【・・・ありがとう皆。それで行こう。・・・皆、宜しくね!】


~銅素材が一番多くドロップするボスはカリ化ドゥフシャーサナ、銀素材が一番多くドロップするボスは魔性化ドゥフシャラー。取り巻きはカリ~


「マスター見えてきたよ、例の洞窟だ!」

そういって先を示すアレキサンダーのに倣って目を向けた場所には岩山とそれを隠すように立ちふさがる黒い巨人が存在していた。


ー消す。全て消す。全て壊す。全て潰す。すべて・すべて・すべて・すべて!!!ー

ー無意味だった、無価値だった。何もかも、もう全て残らないのならー

ー消えて、無くなれ!!!ー


FAINAL BATTLE 1/1

「女神の怒り」というエネミー名の黒い巨人がアヴェンジャークラスで1体(追加で3ゲージ)

パーティーはジークは編成不可能だがそれ以外は自由に編成が可能。


ー苦しい。痛い。・・・なんで重さを増やすことをしたの?ー

ー辛い。悲しい。・・・どうして私が責められるの?結局何もしてくれなかったのに。ー

ー寂しい。哀しい。・・・いっそのこと何もかも放り出せればよかったのに。ー

ー眩しい。暖かい。・・・どうしても嫌いになんて、なり切れなかった。ー

ー寒い。冷たい。・・・いやだ。嫌だ。嫌だ!!!どうして?どうして!?ー

ーだから、どうしても・・・許すことなんて、できなかった。ー


「興味を向けないようにしていたのに、希望に魅せられたからこそ絶望が深かったのでしょうね・・・。」

「人間を愛したことで返ってくるのは不理解であると分かっていたのに手を伸ばさずにはいられない。・・・難儀なものだな。」

「・・・神様については、ノーコメントとさせてもらおう。本当に・・・色々な方が・・・いるからね・・・。」

巨大な黒い巨人が恨み言のように聞こえる言葉を呟きながら光となって消えていく。

それを最後まで眺めてからトネリコは悲しそうにつぶやく。対してアンデルセンは呆れたような口調であるものの、だれか別の人物を思い浮かべたのか同情するかのような言葉を漏らした。フィンはかつて生きてきた間に遭ったことのある神々やカルデアに居る神々を思い起こしたのか一人遠い目をしていた。

【扉が開いたね・・・みんな準備はいい?】

「行こう!」

「はい、もちろん」

「・・・過度な期待はしないでくれよ?」

「ゆこう!」

問いかけた質問に全員が頷き返したのを見てジークが追い付いてくることを信じ、そうして大きく口を開けた階段へと覚悟を決め足を進めていった。


~人物設定~

〇アンデルセン

カルデアからの救援メンバーその3。本人曰く、マスター救援部隊第1陣に不運にも残ってしまった自称最弱サーヴァント。

第3層でアレキサンダーと共に目覚めたため、戦闘は彼に任せきり。後方支援に徹していた。ちょっとした運動でも俺にとっては重労働になるんだぞ、オニめ!!とのこと。

まさか夢の世界でも物語を書かなければならないかもしれない可能性にボイコットしてしまいたい。だが、今まで面白い物語を共に見て、マスター(誰か)の為の物語を語ってしまったのが彼にとっての運の尽き。

【アンデルセン、任せた!!】「せめて納期はできる限り伸ばせ!!!」

書こうとしてくれる意思はある模様。


〇アレキサンダー

カルデアからの救援メンバーその4。

第3層でアンデルセンと共に目覚めたため、戦闘を一手に引き受けた。

「ブケファラスに乗ったほうが楽じゃないかい?」「馬に乗るなんて体力が削られそうなことやるくらいなら自分で歩いた方がましだ!!」という会話もあったため地道に徒歩で移動していた。

前線に出たい気持ちはあるものの、適材適所があるためアンデルセンの護衛に徹している。




この世界に未来はない。既に終わりは確定した。

それでも恨みは消え失せず、分身を作り出しては一つ一つ壊していく。

私の怒りにふれたのか、動物達が狂暴化していき、そのせいで消えたこともあった。

機構が暴走しているせいか、カリがどこからか発生し蹂躙しているのも視た。

ある時から神々の静止が聞こえてきたが、それを無視して壊していく。

どうせ全てがなくなるのなら、先に消してもいいでしょう?

異物がここに紛れ込む。気にせず次を”手”にかける。ヒトがどんどん逃れていく。

壊れ果ててなくなるのだから、何処に逃げても無駄なのに。

あの子の花を守る為の結界が壊されたのを感じて、慌ててそこに転移する。

ちに伏していたはずのあの子の花は、気丈にしゃんと此方を向いた。

嘆きの底に沈んだあの子が力を振り絞るようにして立ち上がる気配がした。




◯パーンタヴァの5王子

聖杯の影響を一番最初に受けてしまった。最初に表出したのはビーマだが、他の5王子も同じ時期に感情操作されている。インドの神々による対策がプリトヴィーが表に出てきたタイミングでようやく効果を発揮し、自分たちが行った”良くない事”を正しく理解してしまった。

自分達を人として見てくれていたヒトはもう何処にもいない。メンタルはめちゃくちゃ。逃げ惑う無辜の民がまだいるため、その民を守る為に立ち上がることができている。カルデアが去った後は生き残ったほんの少しの無辜の民と共に崩壊が決定づけられてしまった大地で苦しみながら生きていた。

 

◯バーヌマティーを除いたドゥリーヨダナのかぞく

最後の方に影響を受けたため、直接害した回数は他の者に比べたらだいぶマシ。ドゥリーヨダナ()が蹂躙した現場を見続けたショックにより聖杯による呪いが解けた。

自分の命そのもののような存在であり、自分を照らしてくれた光であった大切な人物はもう何処にもいないということを理解してしまうのを拒んでいる。特に99王子+一姫はかつては一つだった長兄を排除してしまったため、発狂してないのが不思議な精神状態をしている。

捨ててしまった・壊してしまったドゥリーヨダナの大切な物を探し出して修復し続けている。

謝ったら許してくれたので。謝ったら抱きしめてくれたので。

カルデアが去った後も暫くは最愛がいなくなってしまったことを受け入れられず現実逃避をし続けていた。

 

◯バーヌマティー

最後まで聖杯による感情操作の呪いを受けなかった。見る見る萎れていく夫を献身的に支え続けていた。全てから隠れるために夫と逃げる準備をしていたが、途中で計画がバレてしまった。シャクニに致命傷を負わされて意識不明の重体に。カルデア一行の治癒により意識を取り戻し、夫を取り戻すべく立ち上がった。

最後まで強くて恰好のいいドゥリーヨダナの花として大地の女神の記憶に刻まれた。


◯プリトヴィー

神が介入するとろくな事にならないのは知っていたので、見るだけで干渉するつもりはなかった。

ヒトのことを嫌いになっていたが、ドゥリーヨダナのことを見ているうちに昔のことを思い出したので、少しでも笑って生きて欲しいと願っていた。

聖杯が原因で弱っていく姿に憤り続けた。ドゥリーヨダナの絶望による発狂・精神崩壊(san値は僅かに残っている)と女神自身の憎悪が共鳴し繋がりができ、変質した。ドゥリーヨダナを器としたためアヴェンジャー霊基ではなくプリテンダー霊基だったが、ヴィヤーサ以外はもしかしたら気が付いていないかもしれない(カルデア一行が現地で相対したのは、最後以外は弱体化はしていたものの第4層の番人のような形をしたプリトヴィーの怒りの具現化だった)。

バーヌマティーの説得に折れ、ドゥリーヨダナ本人が望んでいることもあり、ヒトを減らすことを止めた。

「大地の女神である自分が表出ている≒大地の崩壊」であるため大地の崩壊を止めることはもう出来ない。本来なら大地の”中”にあるものを表に出すには、めちゃくちゃにして、ひっくり返さないといけないので。

静かに眠って終わりたいため、カルデア一行に見つけた聖杯(黒幕が使った聖杯)を雑に手渡した後バーヌマティーと共にどこかへと消え失せた。

壊れたものは元には戻れないが「大地の女神が存在し続けているのだから、大地が壊れるはずがない」という説を無理やり押し通し、特異点が崩壊するまで大地が完全に崩壊しないように誰にも見つからない場所で静かに延命し続けている。

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