①油断

①油断



我が家自慢の男性陣は頼もしい大食漢揃いだ。

そのため、食料ストックの不安が未だにかなりの頻度で発生する。

今回もそうで、買い出しのために近くの島に上陸することとなった我が家一行。


「みんな気を付けて。ここはすごく治安が悪いから。決して油断しないこと!」


我が家が誇る世界最高の航海士であるナミは同時に財務担当大臣も兼任しているため、島に寄って街にくりだすときに必要な予算を各自に振り分ける方式を採用している我が家では、下船時にこうして場を仕切ることが多い。


「安心してくれナミさん!ロビンちゃん!この俺がナイトになって必ず君たちを守ってみせるよ!」メロリーン


元気いっぱいメロリンしながらそう宣言するナイトサンジくん。


「私は今回の下船はパス。ロビンは?」 「そっけないナミさんも素敵だー!」メロリーン


「私も遠慮しておくわ。船でおとなしく本でも読むことにするわね。」


「ウタ、あんたはどうする?」


私はダーリンと行くよ!


「そ。いい?絶対にルフィから離れちゃだめよ。」


わかってるって!


「ホントかしら…ウソップ!フランキー!ブルック!ジンベエ!あなたたちはできれば残って!船の護衛よ。修理材も十分あるでしょ?チョッパーはどうする?何か足りないものはある?」


「全然大丈夫だ!おれも残るよ!」


「旨い酒があるかもしれねェな…」


「ナミ…?おれも行きたいなーって…このおれの天才的な閃きによって得た新しい武器のアイデアがだな?早く形にしてほしいって日々ささやいてきて——」


「それじゃ解散!」


「ナミ!?お前この前のことまだ怒ってんのか!?ちょっと予算オーバーしただけだろ!?」


「ちょっとですって!?」


行ってきまーす!










ガヤガヤ・・・


ルフィとゾロ、サンジくんの四人で買い出しを済ませていく。たしかに人が多く一見活気があるように見えるけれど、どこか陰鬱な感じを受ける街だ。


くい…


ん?


スタジャンを引っ張られて視線を向けると、小さい女の子がこちらを見上げていた。

かがんで女の子と同じ視線に合わせて問いかける。


どうしたの?


「お母さんとはぐれちゃったの…」


そっか。ねえ、みんな。この子が…


言いながら立ち上がって振り返ると、人混みの向こう、三人はすでにだいぶ先に進んでしまっているのが見えた。


…よし、お姉ちゃんが一緒に探してあげるよ。でもその前にお姉ちゃんの知り合いと会ってからね。



「ほんと!?ありがとうお姉ちゃん!」


くすっ、いいよ。じゃ、行こっか。


女の子と手をつないで歩き出す。


この時、周りの人たちのかわいそうなものを見る目が小さい女の子にではなく、私に向けられていることに気付くことはできなかった。


そして、広場で見た何組かの子ども連れの家族と、ルフィとの間に子どもが生まれたなら、こんな風に歩くこともあるんだろうか?


そんなことを考えてしまったせいで、己の警戒心も見聞色の覇気もおろそかになってしまっていたことにも————。








「じゃあお姉ちゃんはのーりょくしゃなんだ?」


そうだよー。


あ、ルフィが後ろを向いてくれた。大きく手を振ってここにいることを伝えると、安心したのかルフィはまた前を向いた。


ちょっと急ごっか。


「うん!…あ、ここ!見覚えがある!おうちにつづく道だよ!お姉ちゃん、こっちこっち!」


え!?ちょっと待って!


皆と合流するはずが、女の子に手を引かれて別の道にはぐれてしまう。


「ほらこっち!……こっち!……ここで大丈夫、おうちで待ってることにするよ。ありがとうお姉ちゃん。」


ホントに大丈夫?


「うん。お姉ちゃん、お礼にうけ取ってほしいものがあるんだ。」


そう言ってポーチからたどたどしく何かを取り出そうとする女の子。


別にいいよ。


「受け取って!私のだいじなもの!」


そ、わかったよ。ありがとね。


「じゃあ少しのあいだ目をつむってくれる?」


はい。


両手で何かを渡そうとしてくれたため、私も受け取ろうと目をつむりながら両手を差し出し——


「ごめんね、お姉ちゃん…」


え?



ガチャリ。



そう音がして何かを両手にはめこまれた。


…手錠?


認識したと同時に一気に気分が沈み込み、がくりとその場にくずれ落ちる。息をするのもおっくうで、言葉もうまく紡ぐことができない。



これ、海楼石の…それもだいぶ濃度の高いやつだ……



どうして子どもがこんなものを…?



とたん、路地裏からたくさんの男たちが飛び出してきて私を路地裏に引きずりこんでいく。

うす汚れた手で口をふさがれ、乱暴に仄暗い路地裏に連れ込まれながら朦朧とする意識の中で見えた最後の光景は、逃げてゆく女の子の背中と、我関せずと無情に通り過ぎていく人々の姿だった。





…ごめん、ナミ
























……たすけて、ルフィ…






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