没案
「おかーちゃー!」
「うん?どうしたの?」
我が子の呼びかけに優しく返事をする。小さな足で私の元へ駆け寄ってくる我が子に目線の高さを合わせる。
「これ!おはなあげる!」
「わ、ありがと」
感謝の言葉を述べ、手渡された花を手に取って髪に結う。
「似合ってる?」
「きれー!」
「も~!いい子すぎるでしょ私たちの子どもたち~~!」
拍手をしながら褒めてくれるものだから、思わず頬ずりして褒め返す。髪もわしゃわしゃしてあげたし、思いっきりの笑顔で思いつく限り褒め続けた。この思いを誰かに伝えたくて、一番伝えたい人の名前を呼び、共感を求める。
「ねぇルフィ、やっぱ天才なんじゃない?この子たち!」
私は何もない虚空に向かって話かけていた。当たり前だが返事など帰ってくるわけがない。その事実に気を落としている私を見て、子どもたちが口を挟んでくる。
「るふぃ?るふぃはいないよ?」
「るふぃもここくればいーのにね」
「ねー」
ルフィもここに来ることができれば。私が戻ることができれば、どれだけいいのだろう。どれだけそれを願ったのだろうか。昼も夜も分からないこの世界で星の数ほど考えた。考えたところで、どうしようもないのだけれど。いけない、こんなことばかり考えて我が子に変な影響が出てはいけない。
「...あ、ごめんね2人とも。...さっきお花積みしたし、次は大きく体動かす?追いかけっことか!」
笑顔を取り繕って、次の遊びを提案する。さて、2人の反応はどうだろうか。
「「する!」」
2人同時に目をキラキラさせて答える。
「よーし、そうこなくっちゃ!待てー!」
「「きゃー!」」
ひとしきり遊んで疲れ切った2人を休ませようとすると、ウタワールドの上空から光が差し込んでくる。
「え、もう時間なの...?」
最近気づいたことなのだが、あの子たちが夢から覚めるタイミングでウタワールドを照らしてくるのだ。
「...そろそろ時間だよ、あっちの世界に帰ろっか」
「ままはいかないの?」
「ままといっしょがいい」
寂しそうに告げる子ども達を見て、胸が痛くなる。でも、選んでしまった道なのだ。これが私の罰なのだ。
「我儘言わないの、ちゃんとあっち戻ったらルフィ達とたくさん遊べるでしょ?」
「...うん」
「...わかった」
2人とも聞き分けが良くてとても助かる。流石私の子だ。ルフィに似なくて本当に良かった。
愛しの我が子2人を見送り、独りぼっちになってしまったウタワールドで、小さく呟く。
「...ルフィと一緒に、あの子たちの行く末を見たかったなあ」
「...あの子達に親らしいこと、なんもしてあげられてないなあ」
「...こんなダメな母親でごめんね」
こんなことを言っても、自己満足でしかないのは分かっている。謝罪をしたところで、何もしてあげられないのも分かっている。それでも、言わずにはいられなかった。
「ルフィ、助けてよ...」
あの時言えなかった言葉を、泣きじゃくりながら告げる。あの時払いのけてしまった手を今更求めるなんて、なんて傲慢なのだろう。なんて自己中心的なのだろう。それに今更求めたところで無理なことは分かっている。でも、それでも。
太陽のように笑う彼なら、なんとかしてしまいそうな気がして。
「待ってろよ、ウタ」