決断への決定打

決断への決定打



【前提条件】

エレジア崩壊:発生

ウタ:事件については何も知らない。諸事情により置いていかれなかった。

ルフィ:事件については何も知らない、相変わらずお留守番。

原作とことなる点:2回目の山賊襲来時に赤髪海賊団がフーシャ村にいる。



シャンクスはとあることで迷っていた。先日起きたエレジアでの事件以降、自身の首に懸賞金が懸けられた。それについて・・・ではない。


「お頭、どうするか決めたか」


自身の右腕であるベン・ベックマンに問われる。その内容は俺たちの娘にして、赤髪海賊団の音楽家であるウタの処遇について。

懸賞金が懸けられたことで本格的に賞金首や海軍から狙われる事は容易に想像できる。問題はそんなどうでも良いことよりも、狙われることでウタの身に万が一あった場合だ。間違いなく死んでも後悔する。そんなことにはなってほしくないのだ。

幸いにもウタは先日のエレジアで起きた事件については何も知らない故に、今ならばカタギに戻すこともできる。フーシャ村であれば俺たちの友であるルフィもいる、何より海軍の英雄の故郷でもあるため治安も良い。それでも決めかねている理由があるとすれば、エレジア出港前の夜にウタに言われたことしかない。


「シャンクスと一緒がいい」


その一言が、決断を鈍らせる。置いていけばウタに恨まれるだろう、だが無事であれば恨まれてもいい、それでもウタの願いを無下にできない。そのような考えが堂々周りして未だに決断できない状況が続いていた。

それに置いていく決断をしたのであればとっくにエレジアに置いてきているはずだ。


「なに、まだ時間には猶予がある」


自身の心境を察してか、そう言うとベックは席を後にした。


「すまない、ベック・・・」


俺たちの娘をどうするか、終わらない自問自答を巡らせていた。





きっかけがあるとすればフーシャ村での出来事だろう。酒場でひと悶着あった山賊達が再びフーシャ村に来た時だ。一回目は無視した山賊達が、再びフーシャ村に降りてきた際に村の通りで騒ぎを起こした。


「ルフィ!!!」


「ウタ!!!やめろお前ら!!!ウタを離せ!!!」


酒場にいた俺たちは外から聞こえてくる友人と娘の叫び声で飛び出した。するとそこには以前酒場にやってきた山賊達が俺たちの娘の胸ぐらを掴み上げ、友であるルフィを足蹴りにしながら下衆な笑い声を上げていた。大切な宝と友に手を出されているその状況下に怒りがこみ上げてくる。即座に駆けつけ対処しようとした・・・その時だった。


「やめろって言ってるだろうが!!!」


その一言と共に先程まで笑い声を上げていた山賊たちが泡を拭き上げながら倒れ込むその状況に、思わず足を止めてしまう。そしてこみ上げていた怒りは沈下し、代わりに困惑が浮かんでくる。


「無事か、ウタ!」


「ありがとう、ルフィ・・・」


「ウタが無事で良かった、それにしてもこいつらいきなり気絶してどうしたんだ?」


この状況を作り上げた本人は山賊達など目もくれずウタの無事を確かめるように抱きついていた。更に当の本人は気絶している山賊たちに疑問を浮かべている。

おそらく無意識だったのだろう。友であるルフィが使用した覇気、それも数百万人に一人しか素質を持たない覇王色の覇気は山賊達を気絶させていた。覇王色の覇気、それは即ち王の資質を持つ者の証だ。無意識とはいえこの年でその鱗片を表す友に、今まで決めかねていたとある問題に対する答えをベックに出した。


「なぁベック、決めたぞ」


「そうか、あいつはおおきくなるぜ」


俺の決めた答えを察したのだろう、ベックは友の方を向いて一言つぶやいた。その顔は自身と同じように期待するような、信頼するような笑みをしていた。


「あぁ、あいつなら俺たちの娘を任せられる」


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