決戦
空色胡椒強化され、姿の変わったキングダルイゼンの前に6人のプリキュアが並ぶ。ダルイゼンが腕を横なぎに払うようにしながら斬撃状の攻撃をプリキュア達目掛けて放つ。それによって生じた土煙の中から姿を現すプリキュア。ステッキを構えてぷにシールドを発動した3人…そしてその煙を目くらまし代わりに上に飛び上がった3人。
「バリバリカッターブレイズ!」
十字の形で飛んでくるヤムヤムの攻撃を防いだダルイゼン。そこへプレシャスとスパイシーのダブルパンチが繰り出される。咄嗟に両手でそれぞれの拳を受け止めるダルイゼン。ぐぐぐっと両者の動きが止まる。
「他のプリキュア達…お前たちもやっぱりおれの邪魔をするんだ?」
「あなたが何者かは知らない。けど、私たちの大切な友人を気づ付けようとしたことに違いはない!」
「それにレシピッピのことも傷つけた。あたし達の大切なものを守るために、あなたを止めるよ!」
「守る…ね。やっぱりそういう連中か、プリキュア!」
掴んだ拳を引っ張るようにしてプレシャスとスパイシーの体勢を崩したダルイゼンが自身の腕を交差するようにさらに引っ張る。その影響で互いにぶつかり合ってひるんだ2人をまとめて蹴り飛ばし、振り向きざまに飛び上がっていたヤムヤムを狙い連続で光弾を放つ。
「させないよ!プリキュア・ヒーリングフラッシュ!」
咄嗟に割り込むように来たスパークルが自身の技で光弾を相殺する。その隙にダルイゼンの背後からフォンテーヌが接近する。ダルイゼンは振り返ることなく自身の尻尾を叩きつけるように振るうのを、間一髪、まるで高跳びをするかのような綺麗な飛び方で尾を回避したフォンテーヌが接近してステッキからエネルギーを放つ。咄嗟に腕で防がれたため大きなダメージにはならなかったものの、ダルイゼンの姿勢をわずかに崩すことに成功する。
「ちっ」
「グレース!」
「っ!キュアグレース!」
「はぁっ!」
間を置かずに飛び込んできたグレース。ダルイゼンは腕についた刃を向けるようにグレース目掛けて振るうも、実りのエレメントボトルの力で形成されたエネルギーを剣状にまとめたグレースがそれを受け止める。
「みんな助け合って、だっけ?本当にそんなのでおれに勝てると思う?」
「勝つよ。だって、みんなで一緒に地球の元気を守りたいって、強く思ってる。1人じゃないから、力を合わせて、もっと大きなことができるの」
「へぇ~。けど、おれも力を合わせてるさ。純粋な力を、おれに合わせてね。最後に残ったテラビョーゲン、キングとして、お前たちを倒して、ビョーゲンズの世界を作る!」
力を込めて振り抜かれたダルイゼンの腕の力に押されるように、グレースが弾き飛ばされる。咄嗟にそれを受け止めたのはローズマリーを運び終えたフィナーレ。
「ありがとう、フィナーレ」
「少し遅れてすまないな。だが、ここからは、私たちも!」
フィナーレがクリーミーフルーレを構えるのに合わせてグレースもステッキをダルイゼンに向ける。
「プリキュア・フィナーレブーケ!」
「プリキュア・ヒーリングフラワー!」
同時に放たれた2つの技が迫るのを、ダルイゼンは避けるそぶりも見せずじっと見つめるのみ。ゆらりとその右手を上げると、真正面から技を受け止める。まるで技を掴むように広げられた手を徐々に閉じていき、最後に力を込めて握りつぶす形で完全に技を防いだ。
「っ、あっさり防がれるとは」
「ダルイゼン…すごく強くなってる」
「はあああっ!」
ダルイゼンの背後から今度はアースが攻撃を仕掛ける。近接戦闘に持ち込むアースだったが、ダルイゼンの方は高い柔軟性をもってその攻撃を回避する。その動きはまるでかつて現れた彼の弟と言える存在、ケダリーのそれだった。
「なっ」
「同じ相手から生まれたんだぜ?これくらい、おれにだってできる」
身体をしならせるようにしながら繰り出された蹴りは通常のそれよりもキレがあり、アースを防御の上からひるませ、後退させる。巨大な姿になったわけでもなく、広範囲の攻撃を仕掛けてくるわけではない。それでもプリキュア達の連携をものともせず、近接戦闘を得意とするはずのアースやパワーがずば抜けているプレシャスさえも手玉に取る様は、まさしくキングを冠するだけのことはあった。
「かつて戦った時の暴走したダルイゼンとは違う方向で強くなってるわね」
「攻撃が全然効いてない」
「はわわ~、強すぎるよ」
「単独の技ではダメージを与えることも難しそうです」
「なら、アタシ達の使える最高の技で勝負するしかなくない?」
「一か八かの勝負というわけか。確かに、それしかないかもしれないな」
「あたし達とグレース達、みんなの技を合わせよう!」
「そうだね。みんな、やろう!」
再びハートジューシーミキサーを構えるプレシャス達3人。今度はその隣にクリーミーフルーレを手に取ったフィナーレも並んでいる。3人がエナジーをチャージするのに合わせて、フィナーレもフルーレにエネルギーをためるようにフルーレを絞る。
一方グレース達はヒーリングステッキ、アースウィンディハープ、そしてヒーリングアニマル達が合わさることで現れるヒーリングっどアローを手にとり、スペシャル・ヒーリングボトルをセットする。力を最大限に高めることによって、最後の大技を使うための姿、スペシャルヒーリングっどスタイルへと姿を変え、アローにエネルギーをチャージする。
その様子をただ見ているだけのダルイゼン。特に邪魔するわけでもなく、逃げることもなく、ただじっと待っている。それは強者ゆえの余裕の表れなのか、それともビョーゲンズのキングとなり、プリキュアに立ち向かうただ1人になったが故の矜持なのか。
「「「プリキュア・MIXハートアタック!」」」
「プリキュア・デリシャス・フィナーレ・ファンファーレ!」
「「「「プリキュア・ファイナルヒーリングっど・シャワー!」」」」
プレシャス達の4色の光と、グレース達の4色の光。それぞれが螺旋状に絡み合いながらダルイゼンへと向かう。眩しいくらいのその光の奔流にほんのわずかに目を細めたダルイゼンは、自身の両の掌を合わせてから徐々に開く。手の間にたまった黒いエネルギーを両手に収束させ、手の先からまるで黒い雷撃のような形で放つ。
プリキュア達の浄化技とダルイゼンの雷撃がぶつかり合う。押しては返され、また押し返すと一進一退に見える。が、
「なんだ…こんなものだったのかよ」
それはあくまで現在の出力においてということだった。プリキュア達はこの一撃にかけるつもりでありったけのパワーを込めて放っている。それに対してダルイゼンは迎え撃つ分だけの力を使っている、逆に言えばまだまだ本気にたどり着くまでは余裕がある。
「ぐっ…うぅ」
「なんて奴だ…」
「わたくし達の力では、足りないのですか?」
「くぅっ」
「キュアグレース…生きるってことが戦いなんだってことならさ…おれの勝ちだね」
力むように顔をしかめるグレースを退屈そうに見やってから、ダルイゼンはもう少し攻撃の本気度を上げる。威力が上乗せされた黒い雷撃は、確実にプリキュア達の攻撃を押し返していく。まばゆいほどの輝くを放っていた技も、徐々に徐々にと黒い雷撃で塗り替えられる。そして、
「みんな!」
「っ、くっ」
少し離れた場所から戦いの様子を見ていたローズマリーとブラックペッパー。その視線の先で、完全に雷撃が押し切り、プリキュア達の近くで大きな爆発が起こったのだった。
立ち込めた土煙が晴れると、そこには変身こそ解除されていなかったものの倒れ伏しているプリキュア達の姿が見えてくる。
「あ~あ。さすがにもう終わりかな?まさかキングビョーゲンがこんなやつらに負けるとか、正直信じられないんだけど。それとも、おれがキングビョーゲンよりずっと強くなってるってこと?」
片手を握っては開いてをしながら自分の力を改めて確かめるかのような様子のダルイゼン。そのトーンはやはりダウナーであるものの、よりテンションが低くも見える。まるで拍子抜けしたような、がっかりしているような。
「グレース、しっかりするラビ!」
「まけ、られない…から…っ」
ぐぐっと腕に力をこめながら立ち上がろうとするグレース。しかし上手くいかない、途中で肘からガクッと力が抜けて再び地面に頬が付く。それでもなお立とうとするが上手く力が入らない。
「…立たないの?」
冷たく投げかけられるのはダルイゼンの声。なんとか顔だけでもそちらに向けると、ダルイゼンは普段よりもずっと冷めた目で─因縁のことを知ってからは一度も見せたことのないような、冷たい目で彼女を見下ろしている。
「どうしても、守りたいものがある。そう言ったよな?立たなきゃ、何も守れないけど?」
「生きるための戦い…結局おれの勝ちではい終わり、ってことでいいの?まぁ、おれはこの地球が過ごしやすいものになってくれるならそれでいいけどさ」
「負けた者は消える。前のおれや、キングビョーゲンがそうだったように。だから今度はお前たちの番ってことだね。そしてお前たちがいなくなったら、次はこの星の番。全部蝕んで、全部おれの好みに染めて…おれだけが勝者として生き続ける。その時に初めてちゃんとお前と同じ意味でこう言えるよ」
「『生きてるって感じ』…ってね」
そう言い放って、ダルイゼンはグレースに向けた人差し指の先から黒い雷撃を再び放ち、グレースを狙い撃った。スペシャルデリシャストーンを使えないローズマリーが追いつける速度ではなく、飛ぼうとしたブラックペッパーも体力が回復しておらず動き出しが遅れた。シールドを張ろうにも2人のパワーが必要なのにグレースは今それどころじゃない。絶体絶命。グレースは自身の身を穿とうとする雷撃に備えて目を閉じた。
「ん?」
聞こえたのはダルイゼンの驚くような声。全然自分に雷撃が届く様子がないことを不思議に思ったグレースが瞳を開くと─
「まだっまだぁ!」
咄嗟に発動した自身の技、プリキュア・プレシャス・トライアングルで雷撃を受け止め、グレースを庇うように立っているプレシャスの姿だった。
「プレシャス!」
「大丈夫だよ、グレース。あたしはまだまだ、元気いっぱい、だからっ!」
チラリとグレースの方へ軽く顔を向けて笑顔を見せるプレシャス。大地をしっかり踏みしめながら、プレシャスは気合を入れるように雷撃を押し返そうとする。
「別のプリキュア…たった一人で何ができるっていうのさ?さっき負けたばかりだろ?」
「負けてない!まだ、負けてない!」
「はぁ?」
「…プレシャス」
ぐっと力をこめるプレシャスの声に反応するように、スパイシー達もフォンテーヌ達も顔を上げる。
「おばあちゃん言ってた。料理は心持ちって。最初は上手くできなくても、諦めずに挑戦し続ければ、きっと最後は美味しい笑顔が待ってるって。何度倒れたっていい。絶対に諦めなければきっと、その先にはみんなの笑顔が待ってる。でしょ!?」
自分だってダメージがあるはずなのに、その言葉を告げたプレシャスは強気な笑顔で、真っすぐにその言葉をグレースへと届ける。
「そうだ…そうだよね…生きるために戦うのは、勝つためじゃない…私たちは、絶対負けないために戦うんだ!」
その言葉に奮起するようにグレースは立ち上がる。ネオキングビョーゲンとの戦いで自分達が見つけた覚悟、それを胸にプレシャスの隣に並ぶようにステッキを構えて、ヒーリング・フラワーを放つ。
「ありがとう、プレシャス」
「えへへ。やろう、グレース!」
「うん!」
「「はあああっ!」」
2人の技を合わせるようにしながらダルイゼンの雷撃へ対抗する。負けない気持ち、諦めない心、強い覚悟。それらをもって自身の技を限界まで高めて放つ。ただそれでも先ほどみんなと共に放った技ほどの力はどうしてもでない。
「何やってんのさ。さっきも勝てなかったくせに、たった2人でどうこう出来るわけないだろ?無駄だよ」
ため息一つと共に、ダルイゼンが指を1本から2本へ増やす。それだけで雷撃の威力が増す。より強い抵抗を感じながらも、それでも2人は折れない。
「無駄じゃない!」
「負けない…命が繋がって、みんなで生きてる地球を、みんなを守りたいから!」
「ご飯はみんなの想いを、出会いを結んでくれる!一緒に食べる人を元気にしてくれる!その笑顔を、あたしは大事にしたいから!」
「だから絶対に諦めない!それが私達─」
「「プリキュアだから!」」
いつの間にかプレシャスとグレースは互いの手を取っていた。気持ちを重ね合わせ、力を重ね合わせ、共に立っている。押されかけていた光が再度黒い雷撃を押し返す。自分たちが信じる者のために、精一杯生きているその姿に、
「っ、消えろ!もうおれの勝ちは決まってる!これ以上、めんどくさいことさせるな!」
思わず冷静さを失うダルイゼン。ついに2本指から5本指へ一気に出力を上げる。激しい雷撃が先ほどまでよりも勢いよく光を押し返す。2人も負けじと力をこめるがその差は圧倒的だった。
「プレシャス…グレース…」
視線の先に立っている2人を見つめて、ローズマリーは思わず涙が頬を伝っていた。こんな時に力が使えないこと、あまりにも自分が無力で情けなくなる。立ち上がっているその姿はあまりにも強く、美しく、眩しい。
「ローズマリー」
「?ブラペ?」
そんなローズマリーの肩に手を置いたのは共に戦いの様子を見ていたブラックペッパー。ローズマリーを見るその視線には強い決意が現れている。
「聞きたいことがある」
「何かしら?」
「…デリシャストーンは、私が思ったような能力を色々与えてくれた。こいつには、使用者の考えたことや思ったことを形にする力がある、そう考えていいか?」
「え、ええ。確かにそう言えるかもしれないわ。実際スペシャルデリシャストーンが使えれば、それこそ空間の移動や物質の変換、エネルギーを物質として形成・使役することができるわ。通常のデリシャストーンだと流石に出力が落ちるけれども」
「…そうか。だったら、私にも、できることがまだある!」
「できることって、何をする気?もう戦闘に加わるのは─「負けたくないんだ」!」
まだ少しふらつきながらもしっかりと自分の両足で大地を踏みしめながら、ブラックペッパーは視線をプレシャスとグレースに向ける。
「私も、あの2人と同じだ。負けないために戦う…だから、今立たないで、いつ立つんだよ!」
その言葉に込められた決意に、ローズマリーもハッとさせられる。視線を向けると、他のプリキュア達もブラックペッパーと同じように、立ち上がろうとしている。決して折れない強い心と人々のために戦う優しい心。プリキュアも彼も、そして自分だってそれは変わらない。
「そうね。そうよね!今できることがあるなら、やらないと!」
ブラックペッパーとローズマリーが頷きを交わし、共にプレシャス達の下へと向かうために地面を蹴った。
「2人共、まだ立てる?」
「立つしか…ないじゃん!こんなの!」
「グレースが頑張っているのですから、わたくしだって」
「相変わらず、プレシャスのフィジカルには驚かされるな…くっ」
「でも、私たちも…同じプリキュアだから」
「プレシャスとグレースと、想いは一緒だよ!」
身体を起こし、なんとか立ち上がる6人。しかし、
「邪魔すんな!」
空いている方の手からダルイゼンが放った雷撃が彼女たちの周囲に降り注ぎ、2人のもとへ近づくことを許さない。思わず膝をついてしまう6人。
「なんとか2人のところへ行ければ」
「でもどうすれば」
「みんな!」
その声に振り返ると、離れていたはずのローズマリーとブラックペッパーが駆け寄ってくるところだった。
「マリちゃん、どうして?」
「ブラックペッパーさんも、まだ怪我が」
「私は大丈夫だ。ダメージだって、今の君たちとそう変わらないだろう。いや、そんなことより、君たちの力を貸してくれ」
「アタシ達の力を?」
「はにゃにゃ?どうするつもり?」
「説明は後よ。とにかく今はみんなの力をプレシャスとグレースに届けて頂戴!」
「私たちの力を…」
「グレース達に」
「ああ。頼む!」
真剣な様子の2人の言葉を受け、6人は顔を見合わせ頷きを交わす。
「プレシャス、これを!」
「ヤムヤム達の力、ましましに受け取っちゃって!」
「頼んだぞ!」
「グレース、負けないで!」
「アタシ達のパワーも、め~っちゃあげるから!」
「信じてますから!」
スパイシー達は胸のハートから、フォンテーヌ達はそれぞれにステッキとハープを通してエネルギを2人へと送る。みんなのプリキュアの光が集まり2人を照らす。そのエネルギーから力が湧いてくる。徐々に、しかし確実にダルイゼンの攻撃と拮抗する程にその力は増していく。
「ブラペ、今よ!」
「ああ!」
ローズマリーの声に応えるようにブラックペッパーは自身の帽子に取り付けられていたデリシャストーンを手に取り、2人へとかざす。
(…頼む、デリシャストーン。オレの…オレ達の気持ちに応えてくれ!あの2人に力を…負けないための力を…生きてるって笑顔に届くための力を!)
その真摯な願いに反応するように、デリシャストーンが輝きを放つ。それは2人に向けて注がれていたプリキュア達の光と混ざり合うように、そしてプレシャスとグレースを包み込むように輝きを増す。
「この光…みんなの気持ちがこもってて…暖かい」
「うん。みんなで繋がってる…もちろん、プレシャスとも」
「おばあちゃん言ってた。人の力も出汁も、合わせるのがミソって。ね、グレース」
「うん」
歩く時のように握り合っていた手を、結び直す。指と指が絡むように、より強く繋がるように。掌と掌が合わさる形に。
「っ!いい加減、終わりだ!」
その光を本能的に危険と感じたのかダルイゼンはいよいよ両の手を使って最大レベルの雷撃を放つ。その黒い光は先ほどまでとは比べ物にならない勢いで光のエネルギーを押し返す。もうすぐプレシャスとグレースに直撃するところまで技が迫ったその時─
「何っ!?」
繋がれた手を起点に2人の周囲を強い光が包み込んだ。まるで光エネルギーの壁が球体になるように2人を覆う。その球体が大きくなるように光が拡散する。先ほどまで2人のそばまで迫っていた黒い雷撃も簡単に押し返しながらその光がどんどん広がる。思わず攻撃の手を止めて距離を取るダルイゼン。その光の中心をにらみつける。
その光の中にいた2人は変わらず手を握り合っていた。でも徐々に光が収まり見える姿は先ほどまでとは少し違う。
濃いピンク色だった2人の髪は今はどこか桜を思わせる淡い桃色のグラデーション。グレースの右耳には金色のスプーンの、左耳には緑の葉っぱのイヤリング。プレシャスは左耳に金色のフォークの、右耳には緑の葉っぱのイヤリング。プレシャスの衣装には花の意匠が、グレースの衣装には和服の要素が加わり、またその色合いにはそれぞれ青、黄色、紫のラインが追加されている。繋がれていない方のグレースの手にはヒーリングステッキ、そしてプレシャスの手にもコメコメが同化した同様のステッキ。繋がれている方の手にはそれぞれ、中指に金色の指輪がはめられている。極めつけは頭部。グレースには狐耳、プレシャスには兎耳がそれぞれ付き、互いのパートナーのモチーフが入れ替わっている。
「これって、まるであの時の」
「でも、また違う、新しいグレースの姿!」
「はい!」
「プレシャスが、変わった!」
「はわわ!あれってグレースのパートナーの耳!?なんで!?」
「私たちの力と、グレース達の力が混ざった、ということなのか?」
「やったわ、ブラペ!成功よ!本当にすごいわ!」
「私だけの力じゃない…この奇跡を掴んだのは、諦めなかった彼女達全員だ」
「そうね。2人共!頑張って!」
「なんだよ…なんなんだ…お前は!?」
新たな姿で自分の前に立つ2人へ驚きを隠せずダルイゼンは問う。その視線を受け止めながら、互いのステッキを交差させるようにしながら、2人はその問いに答えた。
「「重なる2つの笑顔のパワー!キュアグレーシャス!」」