汚して、押し付けて。罪過の中で

汚して、押し付けて。罪過の中で

辻斬り侍

「あ…あるとりあ…?」

「はぁ……っはぁ……え?」

見られた、見られてしまった

なんで?オベロンの術は完璧だったはず。

どうして?なんで起きてるの?


「…ぁ……あ…あれ?」

まだ身体は動かせない。意識だけが目覚めた様子

でも、この状況をどう説明したらいいの?

リツカの上に跨っていて、わたしの髪は乱れて、からだも火照ってる


だれが見ても、夜這いをしているようにしか見えない


わたしは今何をしてるのか、彼が目覚めてようやく気づいた。いや気づいてしまった

そしてもう前のようには話せないと。確信してしまった


「あれ…おかしいな…目がかすんできた…」

好きなヒトに嫌われたかもしれない。そう思った途端涙が溢れてきた

「っ…痛」

わたしはすぐ彼から離れて、襟を正した

こわくて、彼の顔がみれない


「アルトリア…どうしたの?」

彼はそんな私を心配そうに尋ねてくるが、今の私にはそれが苦しかった。

はやくここからでないと。

「きょうのことは…わすれて…」

今にも消えそうな声で、たったそれだけを言い残してわたしは部屋を出た





「……っぁぁあ…あぁぁあああぁあ!」

自分の部屋に戻って、ひたすらに泣いた。

自分の一夜の間違いが。これまでに築いてきた関係を壊してしまったから…


ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい


最低なわたし











次の日


わたしはあまり人の少ないタイミングを狙って食堂に行った。

彼に会いたくなかった。


藤丸立香。わたしと共に旅をしてくれて、お出かけもしてくれて、アクシュもしてくれた大切なヒト


ここしばらくは。彼と顔を合わせたくなかった

そのはずだったのに




食堂に、彼がいた、幸い遠くにいるので気付かれることはなかったものの、気分は晴れなかった。

ここまできて何食べないのもどうかと思うので、軽食を頼んだ


彼とは遠い席に座り、軽食を食べながら、ちらりと。彼の顔を見る

彼は誰かと話をしていた。もちろん、女の人。

ここには彼を好いているひとが多いのは知っているから、さして驚きはしなかった。

でも驚くべきは彼の方


『昨日のアルトリア、どうしてあんなことをしたんだろう…』

『でも、オレもどうしてアルトリアと何も話さず、こうして別の子と喋ってるんだろう…これじゃ2人に申し訳ない…』

彼は女の子と喋っているのにも関わらず

昨夜のことを考えていた


やっぱり、覚えられてる。でも彼は優しすぎるから、昨夜の事でさえ許してしまうだろう


そして、そんな甘い考えを持ってしまうわたしが憎かった


『オレは、アルトリアを、どう思ってるんだろう…』

いちばん、見たくないものが見えてしまった。

いつもは心地よい彼の心が、今日だけはとても耐えられないくらいに嫌だった


なんか、食欲なくなってきたな…

軽食で正解だった。これ以上は食べれる気がしなかった。



食堂を出て、一人寂しく自分の部屋へ戻ったわたし


昨日のことを、思い出していた



事の発端は、わたしが彼に抱いた感情がわからなくなってそれを詳しそうな人に相談したことだ


「ふむ…お前が抱いてるものは複雑なものだが、本質は単純だ。お前はマスターをどう思っている?」

「まぁ!素敵な悩みね!きっと貴方はかけがえのない何かを、マスターから貰ったのね!」

「マジ!?それ激エモじゃん!その気持ち、大事にした方がいいぜー?」


何人かに話を聞いて、わたしの感情がなにか気づいた

きっとわたしは、彼に恋をしている


彼の事は尊敬していて、安心できて。なによりわたしをわたしと見てくれる


だから…行動に移すことにした。

「へぇ…驚いたなー、まさかアルトリアが彼を好きだなんて」

わたしの数少ない知り合い、オベロンに相談した

「なんだぁ!好きになって悪いかぁ!」

「いやぁ、別に?素晴らしいと思ってね…それで、本当にやるのかい?」

「だって、こうすれば手っ取り早いかなって…」

正直、ほかにいい方法はあったと思う。

でもここはライバルの多いカルデア。先手を打つほかなかった

「…いいとも!君の頼みだ。人肌脱いでやるさ!」

「ありがとうオベロン!」

わたしはすぐさまその夜に備えて準備をした。

きっとわたしは増長していた。絶対に大丈夫だと思っていた。





「…あ、もし彼が起きたら、ちゃんと話し合うんだよ。嫌われてしまっては、元も子もないからね…って聞いてないな、アレは」





「りつか、りつかぁ…!!」

そしてこの結果がコレだ。

わたしはなにをしたかって、ただ無防備な彼を眠らせて、思いのまま貪っただけだ。


こんなの嫌われて当然だ。


「…水とってこよ」

わたしは部屋を出て、食堂へ水を取りに行った。





誰とも会わないまま水をとり、再び自分の部屋に帰ろうとしていた時。

ついに鉢合わせてしまった。


「アルトリア…?」

「リツ…カ……?」

最も最悪な瞬間、でも。もう後戻りはできない

「っ……来てっ…!」

わたしは後先考えずに彼を部屋に連れ込んだ




部屋に入ってわたしは彼を押し倒した

「アルトリア…一体どうして急に…」

「さっき!どうしてあなたは他の子と話してたの…っ」

「待って待って、話が読めない。お昼の話?」

「答えて!なんでわたしのこと考えてたの!」

未だに状況が読めてないリツカに詰問し続ける

「わたしと話がしたかったなら、そう言ってよ…!」

「えっと…」

自分が始めたことなのに、それを彼に責任転嫁する

「わたしは…あなたと………っ好きなの!」

もう届かないかもしれないのに、彼に自分の気持ちを吐露する

「あなたが好きなの!…他の誰にも…とられたくない!だから…わたしは、わたしが……ぁぁぁ…」

大好きな彼の前で、わたしは今どんな顔をしているんだろう

くしゃくしゃになって、涙が止まらなくて、鼻も啜っちゃう

身も、心も醜いわたしなんか。彼のそばにいるべきじゃないのに、欲張ってしまう


あなたは、わたしを嫌いになりますか?

おねがいです、きらいにならないで

むちゃなおねがいなのは知っているけど


わたしには、あなたが全てなんです


「アルトリア…その、ごめん…そんなに好かれてたなんて…思わなかった」

彼は、わたしの背中をさすって謝った。

でも今はそんな安っぽい言葉は聞きたくなかった

「謝るくらいなら、わたしとつきあってよ…!!」

無理なお願いだ。あんなことしておいて許されるはずがない

わたしも、あの國の妖精と同じなんだ。

でも、わたしの心が抑えきれなかった

それに対して、彼は…リツカは……

「…アルトリア、オレ実は…」

いやだききたくない


いわないで、おねがい


わたしのわがままだけど、こんなわたしでも彼のそばにいたい


でも彼は口を開いた。彼はわたしの目をじっと見つめる

あぁ、きっとおわりだ。すっぱり切られるんだ



さいごくらい、一緒にお出かけ、したかったなぁ






「アルトリアのこと、好きなんだ」

「…ぅえ?」

期待していたわけじゃない、でも信じられなかった。

「昨日あんなことされたのは、ちょっと怒ってるけど…でも。それでも」

嘘、嘘嘘嘘

彼はそんなぬか喜びさせるようなこと言わない

「きみが、好きなんだ」

わたしをそれ以上……

「…ほんとうなの…?うそじゃない…?」

曇っていたわたしの目が、晴れていく


彼の気持ちが、見えてしまった


「うん、ほんと」

…ほんとうだった。

でも、尚更つらかった

「…!ごめんなさい、ごめんなさい!」

彼に好かれていたのは嬉しい

でも、それを許さないのは紛れもなくわたし自身だった

「わたし、あなたに酷いことをしちゃった…!好きだからって…自分の気持ちだけで…」

「うん、うん。わかってるつもり」

彼は謝り続けるわたしを真摯に受け止めてくれた。

「やっぱり、わたしは………!?」

とんでもないことを言おうとした寸前、口がふさがってしまった。

もちろん、彼の口で。

はじめてのキスだった。

「…そんなことを言われると、少し寂しいな」

「あぁ……ぁぁ……」

唇と唇が遠ざかる、彼は悲しそうな顔でわたしの方を見つめている

「…君じゃないと、ダメみたいだ。アルトリア」

「オレと、付き合って欲しい」

夢にも思わなかった、わたしの春は。まだ続いていた

「よろしく…おねがいします…」

わたしは、泣きながら彼に抱きついた

きっと酷い顔をしている。鼻水とかも垂れてきた。

明日、やばいだろうなぁ……




「…それで、アルトリア…」

少しして、落ち着いて横になったわたしの隣で、彼は優しい顔で話しかけてきた

「…その………ごめん!!」

「うぇぇえ!?」

彼は起き上がって。すぐさまわたしに覆いかぶさった

「…昨日あんなことしたんだから、覚悟は…出来てるよね…?」

「え、あ~…はい。その…おいしくいただいてください…?」

何を言ってるんだわたし









昨夜の独りよがりな行為とは違って、今度は、一緒に身体をかさねた。






















「はぁ~…やっとかよ、ホンットにめんどくさいな」

「ま、終わり良ければそれでいいんじゃない?オレはメロンでもいただこうかな」

Report Page