氷雪の悪夢

氷雪の悪夢



🛌


「クソッ...!」

裏梅は冷や汗と共に悪態を吐く。

最悪だった。

宿儺のためにと始めた残りの指探し。ようやく残り一本まできたところで、その不幸は訪れた。

心臓を押しつぶすような圧倒的な圧力。

目を離せぬ程の輝かしいほどの存在感。

「気晴らしに散歩に出掛けてみたら思わぬ拾い物だ。なあ、えっと...宿儺の腰巾着」

五条悟。現代最強の術士が、いま、目の前に立っていた。

「……なぜ貴様がここにいる?」

「その見た目で耳年増か?散歩してただけだって言ったろ」

「……チッ」

「舌打ちなんて行儀悪いよ~。ま、別にいいけどさ」

軽薄な態度でヘラヘラと笑うその姿には嫌悪感しか湧かない。

だが、悔しいがこの男を黙らせることは裏梅にはできない。現状、宿儺でしかこの男を斃すことは叶わない。それほどまでに裏梅と五条の力の差が歴然としているのは身をもって思い知らされている。

逃げるか。だが、果たしてこの男がそれを許してくれるかどうか。

「どうせ宿儺の指探しだろうから教えてやるよ。最後の一本はここにある」

裏梅の微かな希望も、五条によって塞がれる。

懐から出された宿儺の指。それを見せられれば、裏梅から逃走という選択肢は奪われる。

ーーー出力最大・霜凪。

裏梅から放たれる極寒の冷気が五条に襲いかかる。

まともに受ければ宿儺とて無傷では済まない。

だが。

「こんなん効くわけないじゃん。お前の力量じゃ僕には届かないよ」

まるで、暖簾に腕押し。

凍てつく吹雪の中を悠々と歩く五条に、裏梅は戦慄する。

そして、五条はおもむろに裏梅に向かって手を伸ばしてきた。

裏梅はそれを反射的に避ける。

しかし、避けたところでなんの意味もない。

「っ!?」

直後、強烈な衝撃が裏梅を襲う。

ただの呪力の放出。何の工夫もないただの力押しになすすべもなく。裏梅はその身体を吹き飛ばされた。

地面に叩きつけられ、そのままゴロゴロと転がっていく。


ーーーわかっていた。どう足掻いても、自爆覚悟でも敵うはずがないことは。


ざっ、ざっ、と足音を立てて死神が近づいてくる。


「くそっ...」


脳裏に過ぎる諦めの感情から目を逸らすように歯を食いしばり立ち上がる。掌を地面に着け、生み出されるは全長二十メートルはあろう正方形の氷の壁。五条の視界を塞ぐと同時、壁を倒しそのまま押し潰そうとする。だが、そんな小細工など通用しない。

五条は手をかざすと、たった一撃でその壁を粉々に打ち砕いた。


ーーーわかっていた。数少ない希望に縋り逃げるべきだったのは。


壁を砕かれるのは想定済み。

裏梅はその隙に背後にまわり込み、両の拳を氷のグローブで纏い威力を増し、五条へと殴りかかる。だが、

「これが全力ならガッカリだよ」

裏梅の拳が五条に当たるよりも先に、裏梅の視界はぐるりと回りーーー気づけば地面に倒れ伏していた。


ーーーわかっていたのだ。一矢報いるなど夢のまた夢だという事も、全て。


歯を食いしばり、立ち上がると印を結ぶ。

「領域展「領域展開」

最後の奥の手、領域展開ですらも五条のソレに塗りつぶされ、無量空処で思考・動き・感知の全てが止められた隙を突かれ、腹部への蹴撃で吹き飛ばされる。

激痛。流血と共に全身を苛む激痛により感覚が戻り、たまらず込み上げるものを地面に吐き出す。

しかしそれでもと、最後まで抵抗しようと両の腕で身体を支え起き上がろうとするも、目の前まで歩いてきた五条に頭を踏まれそれを阻止される。

「諦めな。お前が僕に対して出来る事なんて何一つない」

事実だった。裏梅の全身全霊は、五条の前では何の意味も成さない。それでも裏梅の目は五条を睨み続ける。

宿儺への忠誠心。その一念が諦めを殺す。たとえそれがどれほど虚しい行為であったとしても。

そんな裏梅を見下ろしながら五条はぽつりと呟く。

「...こんだけ日本やみんなを荒らしておいてこのまま宿儺の忠臣気取りで綺麗に死なれるのもムカつくな」

「……なに?」

裏梅が困惑の表情を浮かべると同時、五条の足が裏梅の両の掌に乗せられ、グリィと躙られる。

「ッ...!」

走る激痛に顔を歪めるが、耐えられないほどではない。だが、いかに裏梅が高度な反転術式の使い手といえど、五条悟に壊されたこの掌を治すのにはそれなりの時間を有するだろう。

眼前の男がそれを待つはずもないが。

「さて。これでお前は章印を結ぶこともできない木偶になったわけたが...お前の大好きな宿儺様に忠誠を捧げるためにはどうすればいいと思う?」

「貴様、何が言いたい!?」

「あれ。わかんない?お前の役目は宿儺の指を持ち帰ることだろ。その為には生きてあいつのところに帰らなくちゃいけない。僕に絶対に敵わないお前がやれることは一つだ。媚びを売れ。機嫌を取れ。余計なプライドも捨ててへつらえ」

ギリ、と裏梅の歯が屈辱に噛み締められる。

五条の言うことは正しい。勝てないどころか生殺与奪を握られている以上、裏梅に取れる手段はただ一つ。五条悟に『見逃してもらう』ことだ。

「...どうか、この場はお許しを」

裏梅は、両膝を着け、その額を地面につけ。額を地面に擦りつけながら懇願する。土下座。古来より伝わる降伏のサインだ。

「どうか、この場だけは。見逃しては頂けないでしょうか」

裏梅の精一杯の懇願に、五条はわざとらしく考える素振りを見せる。

「どうしよっかなー」

「っ……ご慈悲を……!」

裏梅はさらなる懇願を重ねる。そんな懇願する裏梅の姿を見下ろしながら、五条は気の抜けた声で、しかしはっきりと告げる。

「いいよ。この場は見逃したげる」

「…………?」

五条の言葉に裏梅は思わず顔を上げる。何を言っている?五条程の実力があれば、いつでも自分を殺せるはずだ。まさか本当に情けをかけようというのだろうか?困惑する裏梅に構わず、ただし、と付け加えて五条は続ける。

「僕を満足させてくれたらね」

カチャカチャとベルトを外しながら。

裏梅の目に、天を衝かんばかりに怒張した五条のソレが映る。

天上天下唯我独尊。誰もが目を奪われていく完璧で究極の魔羅がそこにあった。

突然の展開に思考が止まっていた裏梅も、鼻先にまでソレが近づけば嫌でも理解する。この男はコレに奉仕しろと言っているのだ。

「ふ、ふざけるな!こんなこと...!」

「あれ、いいの?じゃあ殺しちゃうか」

裏梅の頭を押さえつけ、怒張した肉棒を口元にあてがう。

「お前なんか居なくても代わりはいるからさ」

五条の言葉に裏梅の全身に走る強烈な悪寒。それは死への恐怖か、はたまた……。

「くそぉッ……!」

屈辱に塗れながら、裏梅は五条のソレを恐る恐る口に含む。むわりと鼻腔に広がる雄の香りに眉を顰める。

「歯は立てるなよ」

裏梅はいま、手を痛めていて使えない。その為、自然と口だけを使ったノーハンドでの口淫奉仕となる。

「そうそう、それでいい」

裏梅は口全体で味わうように、唾液をたっぷりと絡めた舌を動かし始める。初めての奉仕に戸惑いながらも懸命に奉仕する姿。その懸命な姿に少しばかりの満足を覚えながら、五条は次の要求をする。

「そろそろ慣れてきただろうから、次は喉の奥で咥えてみな」

いきなりの要求に裏梅は目を見開くが、覚悟を決めて喉の奥まで肉棒を咥える。えずく程の奥まで来たソレに吐き気を催しそうになるもなんとか堪える。

「はい、そのまま舌を動かす」

息苦しさを堪えながら裏梅が舌を動かそうとした瞬間、五条の両の手が裏梅の後頭部に回され思い切り引き寄せる。当然、喉奥に肉棒が突き刺さるわけで。

「ふごっ……!?」

呼吸の手段を奪われたことによる生命の危機に裏梅は狼狽えるも、そんなことはお構い無しで五条は腰を前後に動かし始める。

「歯を立てるなよ?噛んだら殺すからな」

苦しい。息ができない。死にたくない。

その思いに裏梅は必死に歯を立てぬよう意識しながら奉仕を続ける。

「下手くそだなお前。宿儺にはやってあげなかったの?」

頭上から降る罵倒の声と共に、更に怒張が一回り大きく膨らむ感覚を覚える。裏梅は諦めずに奉仕を続けるが、やがて喉奥に熱い液体を流し込まれる感覚を味わったところで肉棒を引き抜かれる。

「げほっ、ごほっごほっ……」

嗚咽感にえずき咳き込む裏梅の口元からは、飲み込みきれなかった精液が垂れている。

「ははっ。酷い顔」

熱に浮かされたような表情で裏梅を見下ろす五条の顔には嗜虐的な笑みが浮かんでいた。

「じゃあ今のでコツは掴んだと思うから。ほらもう一回やってみ?」

五条はイキりたつソレで裏梅の頬をペチペチと打ち、再度裏梅の喉奥まで押し込んだ。

「んぐっ、ごほっ……」

二度目の口淫奉仕にもたつきながらも裏梅は懸命に舌を動かす。

「もっと音を立てるように激しく動いて」

指示通りに裏梅は口をすぼめ、顔を前後に動かし始める。ぐちゅぐちゅという唾液の音が鳴り響き、その淫靡な音が裏梅の鼓膜を刺激する。

「そうそう。さっきよりはよくなった。じゃ、もっと口を窄めてみな」

言われるがままに裏梅は口を窄め、五条の肉棒を飲み込むように吸い上げる。

じゅっぽ♡じゅっぽ♡といやらしい音を立てながら裏梅は口淫奉仕に勤しむ。

そんな裏梅の姿を五条は携帯のカメラで撮影し始める。

「や、やめろ……!」

裏梅は制止するも、それを聞かずに五条はシャッターを切る。

「ははっ!いい姿だね。悔しがりながら僕のをしゃぶるお前の姿、きっとみんなびっくりするだろうな!」

携帯の画面には顔を火照らせながら涙目で五条の肉棒をしゃぶる裏梅の姿が写っている。裏梅はその画面から目を逸らすように目を瞑り奉仕を続けるが、しかしその姿は男の興奮を煽るものでしかない。

「ははっ、すげぇ不細工ヅラ!」

持ち前の美貌が崩れるほどに唇を突き出し肉棒にしゃぶりつくその様、まさにひょっとこの如し。裏梅は五条の嘲笑に耐えながら、それでも懸命に口淫奉仕を続ける。

「それじゃ次は……」

肉棒を裏梅の口内から引き抜けば、その先端と裏梅の唇に先走り汁が糸を引き橋がかかる。思わず顔を背ける裏梅の髪を掴み上げ、その顔を覗き込む五条。

「お前の中にこれをねじ込む」

「......ッ!」

その意味がわからない裏梅ではない。抵抗しようにもまだ手が治っておらず実力差もありすぎるためなにもできず。あっという間に裏梅は着物を破られ丸裸にされてしまう。

「へえ。そんなナリしてるけど、おまえ男だったんだ」

「っ、見るなぁ!」

裏梅の下半身にあるモノを見た五条に、裏梅は羞恥に顔を赤らめ悔しそうに歯を食いしばり顔を逸らす。

「じゃ、こっちに入れさせてもらうから」

五条の肉棒が裏梅の後ろの穴へと押し当てられる。その感覚に身を震わせながらもなんとか挿入に耐えようと力を緩めるが、その瞬間に一気に突き入れられた衝撃で大きく仰け反り喘ぎを漏らす。

「ああっ!?やぁっ!くっ……ふぅぅッ!」

それでもなんとか挿入された肉棒を受け入れようと裏梅は懸命に耐えるが、あまりの質量と苦しさに白目を剥きそうになりながらも必死の形相で奉仕を続ける。

「うっ……はあ……っ」

しかしそんな裏梅の懸命な姿とは裏腹に、五条の表情は不満げだった。

「なぁお前さ、喘ぎ声とか反応とかもうちょっと僕に媚びれないの?」

そんな身勝手な言葉に言い返す余裕もなく耐えるしかない裏梅だったが。

「ああそうだ」

そう言って五条は裏梅を貫いたまま、近場のデパートに入り、姿見鏡の前に立つ。そして、

「!?や、やめろっ!」

なんと自分のその姿を見せつけるように鏡に映し出した。当然そうなれば自分の姿と五条の姿が同時に映るわけで。裏梅は目を背けようとするが五条の腕によって強引に正面を向かされる。

「ほら、よく見ろよ」

自らのあられもない姿が鏡に映る光景に思わず目を背けようとするも、その光景に裏梅の目が釘付けになる。そこには涙で顔をぐちゃぐちゃにした自分がいる。苦痛と恥辱にまみれたその姿に思わず目を逸らすも、その光景は脳裏に焼き付き離れない。

「じゃあ記念撮影してみよっか!このまま人差し指と中指を揃えてにっこりハイピース!」

痛めた手を無理やりピースの形にされ、五条の機嫌を損ねないように引き攣った笑みを浮かべ。尻穴を犯される反応で己の肉棒も立てて。カシャリとシャッターが切られれば、そこには五条悟に尻穴を犯されて悦び勃起し、笑顔でピースまでキメる変態がいた。「ほら、お前のケツ穴、僕のをぎゅうぎゅうに締め付けて悦んでるよ?」

そんな五条の追い討ちにも言い返せずただ耐えるしかない。屈辱のあまりに溢れた涙が頬を伝う。

「ははっ、いいねぇその顔!僕の生徒達を虐めたんだ、これくらいしてやらないとなあ!」

そんな裏梅の様子を見た五条は愉快そうにゲラゲラと笑いながら、己の快楽を求め抽送を続ける。

「あぐっ……あうぅっ……」

嗚咽を漏らしながら必死に耐え続ける裏梅だが、五条の動きが早くなるにつれ、裏梅も限界を迎え始める。

「っく...出るぞ、受け止めろよ!」

限界を迎えた五条の肉棒から熱く滾る精液が吐き出され、同時に裏梅の肉棒からも白濁液が放たれる。射精の余韻に浸りながらもずるりと己の肉棒を引き抜けば、ぽっかりと空いたアナルから収まりきらなかった精液が溢れ出る。その姿に満足したのか、五条はぐったりと横たわる裏梅に向けて携帯を向けながら言う。

「よし。僕もだいぶスッキリしたしこれくらいにしといてやるよ」

その言葉に、ようやく終わったと安堵し、痛む身体に鞭を打ちすぐに五条から離れていく。

なにはともあれ、これで宿儺のもとへ指を届けられる。忠誠を貫ける。

「獲物が狩人を信じるなよ。虚式、『茈』」

そんな呟きと共に、背後から閃光が走ったと思った瞬間、裏梅の意識は掻き消えた。


🛌


「ーーーッ!!?」


突然の覚醒と共にガバリ、と布団から起き上がり、はぁはぁと裏梅は息を荒くする。


(夢……か……?)

 

裏梅が安堵の息を漏らした途端、自分の全身にぐっしょりと汗が滲んでいることに気がつく。

トラウマ。五条悟の封印が解かれた時、一撃で負けたことが今もなおトラウマとして脳裏に焼き付いてしまっている。それが歪みに歪んだ形で夢として出力されたというのか。

「五条悟め...」

何度目になるかわからない五条への呪詛を吐きながら、裏梅はふらふらと立ち上がり、普段通りに努めようと調理場へと向かうのだった。

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