気狂いティーパーティー。

気狂いティーパーティー。

#R-18G #パロディ #天童アリス #伊原木ヨシミ #杏山カズサ #小鳥遊ホシノ #聖園ミカ #宇沢レイサ #百合園セイア #桐藤ナギサ #??? #才羽モモイ #才羽ミドリ #小鈎ハレ #浦和ハナコ #古関ウイ #柚鳥ナツ

「ここが!ここがラストダンジョン!最後の決戦です!」

 隊列を組み、アビドスに侵攻し、立ちはだかる障害を軒並みなぎ倒していった勇者、アリス。

 砂に埋もれた校舎を見て回りたどり着いた最後の部屋。

 これで終わる。これで、全てにケリがつけられる。決心して開いた重苦しい扉。その向こうには、砂糖に侵され、操られた、絡繰の天使たちが茶会を開いていたのでした。


 酷く耳障りな音楽が響く部屋の中。

 ソース塗れのフォークや、クリームが付いたままのナイフが机の上に直に転がり、倒れたティーポットからは紅茶が溢れ、踏み潰されたケーキが砕けた小皿に載せられていた。

 その周りでケタケタと愉快そうに笑うアビドスメンバー。幾人は席につき、また幾人かは床に落ちた食器をさらに砕くように、机の周りでドタドタと暴れ回っている。

「あははは!ホシノ様クリームまみれじゃない!あの時のカズサみたい!」

「ちょっと!私はいいけどホシノ様のこと笑わないでくれる!?」

「もー、やめてよ〜。無礼講じゃな〜い」

 ……ボスは?止めるべきエネミーは、どこにいるのでしょう?

「へえ、レイサちゃんってお星様好きなんだ?」

「はっ、はいっ……そのミカ様の羽飾りも大変お綺麗で……」

「そんなぁ、レイサちゃんの髪留めだって──」

「ミカ、飾りに触れるフリをして手札を覗くのはやめるんだ」

「そうですよミカさん。イカサマはいけません」

「ちぇ〜」

「み、見ますか……?」

「あっ!ごめんねいいのいいの!」

 狂乱、狂騒、狂喜の中、誰かがノイズ混じりのレコードに合わせて、あやふやな歌詞を歌う声が聞こえる。

 ふとレコードプレイヤーに目をやると、その隣で右腕が透き通った白髪の少女が、力なく倒れていた。

「あれ?アリス?」

 笑顔で殴り合っていた双子が勇者の名前を呼ぶ。

 百の貌をした狂気が、いっせいにそちらを向いた。傷だらけのレコードから流れる、古臭い歌だけが鳴り続ける。

 会議室に間違って入ってしまったような、授業中の教室に遅刻して入ってきた時のような、ばつの悪い雰囲気。

 茶会の主催者であろう小鳥遊ホシノが口を開くまでそれは続いた。

「あれ〜?お客さん?まあ座って座って〜おじさんの隣とかどう?」

「随分息切らしてるじゃない。紅茶でも飲む?」

 つと弛緩する空気。がしゃん。ティーポットが砕かれて、カップの乗っていないソーサーに、ほこりだらけの紅茶が注がれます。

 なんなのですか、これは。

「やあ、よく来たね。お茶請けにエナドリでも……」

「うふふ♡飲み物と飲み物で被ってしまいますよ♡ここはパンをお一ついかがですか?甘〜いですよ♡」

 ぼとり。手元に転がされた、釘の刺さったパンでした。

「あ、あのぅ……。へぁっ……。す、すみません。紅茶がお嫌いでしたら……こちらを」

 並々とインク壺に溜まった洋墨がおずおずと差し出されます。

「ふふ、パンだけじゃ味気なかろう?牛乳……はあげられないけど、代わりにこれを。特製マーマーレードだぜ」

 キラキラとやたらに輝くマーマーレドには、嫌というほど画鋲が入っていました。

「上がりだ」

「私もです」

「あれ?私の負け?えっ……あの手札から……?あっ!!セイアちゃん!すり替えたでしょ!!」

「……さて、なんのことやら。ほら、早くレイサのカードを引くんだ」

「ごっ、ごめんなさい……!」

「あっ!いやいやいや!レイサちゃんには怒ってないからね!……はい!……あーあビリになっちゃった」

「さて、では一位の特権として、パイを盗んだ盗人には私が裁きを下そう。……それっ!」

「わーお!セイアちゃんお見事!」

 勢いよく刎ねられた生首が、足元に転がって、目が合いました。

「では、罰ゲームとしてミカさんのケーキ、お客人に出してしまいましょう」

「はいはーい。……こほん。初めまして!こんなところまでご苦労様!ケーキあげるね!」

 横から机に置かれたのは、形が崩れたおがくず塗れのケーキ。

 理解ができない。

「あのっ!」

 声を上げた勇者の口に、魔王の指がそっと添えられる。

「お願い、今だけは狂ったままでいさせてよ」

 さっきほどまでの笑みが嘘みたいに消えて、代わりに現れた酷く悲しげな表情にアリスは面食らう。

「さっ、踊ろう!!」

 何がなんだかわからない。手を取られ、まだ何も手をつけていないのに立ち上がらさせる。


 狂気の波に飲まれ、汚らしいノイズに溺れて、立ち向かう敵をも見つけられず、されるがまま、アリスは踊り続けたのでした。

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