気が付かないままで
転生したら馬になった。
けど待望の存在として産まれたらしくチヤホヤされて育てられたから悲観することはさほどなく、ちょっと成長したくらいになると『別に馬でもいいかな』と思うようになれた。
けど…、
『え…あの…?』
『かわいい…すき…俺のモノに…』
『ひっ!?』
まさか自分がメッスだとは思わなかったよ、ジーザス!!
新馬戦ってやつに堂々出走じゃ〜い!と思ったらコレだよ。
いきなり乗られたと思ったら5本目の脚がコンニチハ!してんの。
内心は『キェエエエエエエ!?!?!?』って暴れ回ったワケだが当の肉体はそうはいかず。
恐怖で動けないでいると気づいた人たちが何とか引き離してくれた。
ありがとうございます…。
んで新馬戦を何とか走り終えたけど、そのコンニチハ!してきたヤツに負けました。ちくせう。
そうして何とか未勝利戦から勝ち上がったあとの自分は、…牝馬限定戦に突っ込まれることが終ぞないまま会うオス会うオスにコンニチハ!されまくった。
泣いた夜もまぁあるにはあったが周りの人たちが細心の注意をはらってくれたからね。
でもそれはそれとして牡馬がいる中で走った方が自分のポテンシャルが出るからって言ってたらしい調教師さんは許さん。…が、
『久しいね』
『は、はひっ…!』
このイケウッマと会えたのはよかったなぁ…。
"彼"は芦毛のイケウッマである。
元々は牡馬になんて抱かれるかバーカ!!!!してたのに"彼"と出会った瞬間にコロッと行ってしまった。
だってカッコイイんだもん!
『痛くない?大丈夫?』
『は、はい…っ、だいじょぶ、れす…っ!』
あ゛〜やっべ〜。
やっぱ抱かれるのなら顔イイ方がいいに決まってるよネ!
*
一目惚れした牝馬がいる。
綺麗な青鹿毛の、絶妙な色香を放つ"彼女"。
そんな"彼女"と新馬戦で出会った瞬間、俺は襲いかかっていた。
ここでモノにしなくては他のオスのモノになってしまう!と。
でもすぐに人間に引き離され撃沈。
もう一回、一目だけでも会いたい…と思っていたら意外とすぐ会えた。が
『かわいい…』
『綺麗だ…』
優しめの言葉を選りすぐったがそれでも。
やはり"彼女"はオスの視線を集めた。
だがその事実にまったく気が付かない"彼女"があまりにも危うかったので、
『はじめまして、綺麗な牝馬さん。…お名前は?』
そう、周りへの牽制も含めて…自分を騙った。
***
自分:
元ヒトミミ♂現ウマメッス。
綺麗な青鹿毛だが妙にオスを惹き付けるフェロモンをばらまいている。
現役中期から現在にいたるまで芦毛の"彼"に惚れ込んでいるが、その"彼"が新馬戦にて自分に襲いかかってきたウッマと同一とはまったく気づいていないアホの子。
でも幸せそうだからいいんじゃない?
"彼":
芦毛。でも新馬戦のころはまだ栗毛が残っていた。
新馬戦にて出会った青鹿毛のウマメッス(自分)に惚れ込んでここまで来た。
惚れたウマメッスの前では新馬戦の下手人ならぬ下手馬=自分とバレないように慣れないキャラを演じてたりする。