歴史的共闘

歴史的共闘


虚夜宮・第五の塔近辺


「修行の成果を見せる時だな」


 そう言って笑ったルキアにカワキは修行中のことを思い出して頷いた。

 あの時はわからなかったがルキアに修行に誘われて嬉しかったのは、きっと「仕事がやり易くなるから」という理由だけでは無かったのだと今ならわかる。


『……そうだね。さ、手短に済ませて次へ行こう』


 カワキの言葉に答えるようにガシャン! と音を立て、腕に纏わりつく氷の粒を振り払いながら、ルドボーンは言葉を紡いだ。


「それは何より。こちらも貴女方二人の為に割く時間は無い」

『それはお互い様だ。単刀直入に訊こう。ソレ……君の能力だろう?』


 カワキは“ソレ”と言いながらルドボーンの背後に立つ破面を撃った。ポップコーンが弾けるように破面の頭が破裂する。


『大方、何かを兵士に作り替えるか、生み出す能力といったところかな』


 撃ち抜かれた部下を気にも留めず、感心したような声でルドボーンが訊ね返す。


「! ほう……何故そう考えたのです?」

『捨て身で向かってくる癖に、命を捨てて何かを為そうとする気魄が無かった。操り人形の動きだ』

「フフフ。お見事です……勘の良い方だ」


 笑い声を上げながら、ルドボーンが賞賛の言葉を送る。


「その通り……私の能力は無限に兵を生み出すもの。もっとも……それがわかったところで貴女方に勝ち目はありません」

『それは誤りだ。大言壮語が過ぎる。無限なんて事ありはしない。勝ち目が無いなら作るまでだ』

「…………」


 どこか不愉快そうな空気を滲ませながら斬魄刀を構えたルドボーンが静かに解号を口にする。


「……生い上れ、“髑髏樹”」


 斬魄刀が木の蔦のように変化して腕や下半身に巻き付いて覆っていく。

 樹木のような形状となったソレは、背中から枝を伸ばして髑髏の実をつけた。


『こういうのは本体を叩くのが定石だ……今居る兵士の相手は任せたよ、朽木さん』

「ああ、背中は任せよ!」


 背中合わせになってルキアが答える。

 滅却師と死神が共闘する姿にルドボーンが揶揄するように首を傾げた。


「ほう、これは奇妙な光景だ。貴女の種族——滅却師は死神に滅ぼされたと聞いていましたが……」

『それも誤りだ。滅却師は滅んでいない』

「我々は過去を乗り越え貴様を討つ。覚悟は良いか、破面」


 カワキはゼーレシュナイダーを仕舞い、新たにもう一丁、神聖弓を構成する。

 二丁の銃口を持ち上げたカワキが双眸に危うげな光を灯して口を開いた。


『的にするには脆いけど君で我慢するよ』


 瞬間。

 光の雨がルドボーンに降り注いだ。


「ぐ……ッこれは……! 何という……」

『私が滅却師だと知っているなら飛び道具を警戒するべきだ。やはり勉強不足だよ』


 そこからは一方的な展開だった。

 放たれた神聖滅矢は一発たりとも外れることはなく正確無比に実を撃ち落とす。


「ぬう……!」


 盾となる兵士たちを前方に展開するも、凄まじい威力の弾丸は兵士の体を貫通し、枝ごともぎ取る勢いで実を穿った。

 新たな兵士は生み出せず、盾に使った者たちは滅却され、追い込まれていく。

 “的”という言葉通り、あまりに一方的な展開は最早、シューティングゲームのような有り様だ。


「くっ……おのれ……! 奴を狙え!!」

「そうはさせんぞ!」


 生き残った兵士をカワキに殺到させようにもルキアがその動きを阻む。

 兵士たちが数を減らし、まばらになった頃合いでカワキはルキアと入れ替わるように攻撃対象を変えた。


『攻め時だ、朽木さん。君の能力は彼とは相性が良い』

「ああ! これで終わりだ!」


 カワキが兵士を相手取り、ルキアが本体のルドボーンを目掛けて凍気を放つ。

 足場を伝って地に突き刺した枝の先からルドボーンが凍りついていく。


「くそ……!」

「……貴様の能力が果実の様に兵士を生む能力なら、簡単な事だ。果実を生む枝ごと凍りつかせてしまえば良い」


 根、枝……そして遂には体まで分厚い氷に覆われたルドボーンが悔しげに呻き声を上げた。


「凍った枝に実が生らぬのは、自明の理。その能力、私達の目の前で見せるべきではなかったな」


 身動きの取れぬルドボーンを斬り捨て、ルキアは刀を納めた。


***

カワキ…霊子操作が得意なので弾の威力がクソ高い。当たると敵は死ぬ。


ルキア…死神と滅却師の歴史的共闘を実現させた四大貴族。


ルドボーン…通り魔に襲われた。トドメはルキアなので辛うじて生死不明。殆ど何も出来ずに友情パワーの前に敗れた。

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