歪み
禪院晴作者※いよちゃんとのコラボ小説です。
※カザリの名前だけ出てきます。
彼女はそう、言い放った。
虎杖悠仁が少年院で死亡した。しかし、その後劇的な復活を遂げた。現在は極秘で修行に励んでいる。そして両面宿儺。禪院晴により自由を得た。表向きには事故で処理されているが、晴が故意的にやったものである。とはいえ五条悟などの実力者の監視が必須であるので、完全な自由とは言えないのだろう。
晴「小学校の呪霊討伐?」
五条「そう、晴をご指名だって」
そんなある日、晴に任務が舞い込んできた。小学校の呪霊…晴が行くまでのものなのだろうか?
宿儺「晴にそんな暇はない。貴様が行け」
五条「僕にそんな余裕ないの。それに僕と宿儺は任務だから」
「は?」と宿儺。彼ら2人が行けばどんな呪霊でも勝てはしないだろう。しかし果たして2人は仲良くできるのだろうか?
晴「…悟くん、私が宿儺のことは見てるわ。任務にも連れてくから。いいでしょう?」
五条「…いや、でも」
晴「悟くん」
五条「……分かった。気をつけてね」
晴の操り人形と化した五条悟は晴の「お願い」を断ることはない。
晴「ありがとう、悟くん(ニコッ」
五条「〜〜〜ッ////!く、詳しくは伊地知に聞いてね!」
顔を赤らめながら慌てて出て行く五条。それを「キッショ」という目で見送る2人。小学校の呪霊討伐のため、伊地知が運転する車に乗り例の小学校へ向かう。
伊地知「今回の呪霊は準一級、晴さんなら大丈夫だと思いますがご注意を」
晴「ご注意ねぇ…何かあるの?」
目が見えないはずの晴の瞳が伊地知を見る。見えてない、見えてない…と自分に言い聞かせながら心を落ち着かせる伊地知。それを晴の後ろで不機嫌そうに見ている宿儺。
伊地知「はい…調べた所、死者が一人もいないんです。出てくる情報は行方不明者だけ…」
宿儺「つまり入ったら出て来れんかもしれん、と」
伊地知「ヒッ!(喋った…)そ、その通りです。おそらく呪霊の術式によるもので脱出が困難になるかも知れません。だからこそ、晴さんや宿儺さんが呼ばれたのだと」
晴「…そう。厄介な術式だから呼ばれた…ふーん、そういうことにしておくか」
伊地知「?」
「ありがとう、伊地知さん。帳よろしくね」そう言って中に入る晴。それに続く宿儺。そして帳が下りる。小学校は夜なだけあり静かで、下級な呪霊の声だけが聞こえる。
晴「2階ね」
晴の呪力感知能力は常人とは桁違いだ。怪我の功名というのだろうか、聴覚と呪力感知が抜きん出て優れている。入ってすぐさま例の呪霊の位置がわかったようだった。
??「だぁれ?」
晴「…こんばんは。お姉さんは…うーん、そうね。先生かな?」
??「せんせい?!あたらしいせんせい?!わたしいよ!いちねんいちくみのたなかいよです!よろしくおねがいします!」
人型の呪霊。歳は小学一年生くらいだろうか。会話が出来ることが驚きだ。だが様子からして自分を人間と認識しているようだ。
晴「(この様子じゃ術式を聞き出すことは困難かしら。だったら魂だけ見れればいいわ)」
魂霊呪法で魂を見て、術式と術式に関する記憶を自身に刻んだ。
…なるほどそう使うのね。と晴は理解し、それと同時に戦闘で使用することは不可能に近いことが分かった。
晴「貴方本当に呪霊?ほぼ人間よね…試してみようかしら。「解」」
いよ「きゃあああぁぁぁぁ?!!!!」
宿儺の術式、御廚子を使って右腕を切ってみた。腕は吹き飛び、いよは信じられないという顔でこちらを見ている。そして走り去ろうとしていた。腕は再生している。やはり呪霊か。
晴「あらあら、逃げないで〜」
呪力感知が届く範囲のギリギリまで逃がしてあげた。そして、晴の口元に蛇の目と牙の呪印が現れる。その後、晴と宿儺以外の小学校内にいる者達へ、ある言葉が向けられた。
晴「死ね」
パァン!と、至る所で破裂音がした。呪霊が皆死んだのだろう。いよも、ただの紫色の血溜まりとなっていた。
晴「…さ、帰りましょうか」
宿儺「ん」
帳が上がり、待っていた伊地知の車に乗って帰る。
晴「…伊地知さん、少し頼みたいことがあるのだけれど________________」
後日、伊地知に頼んでいたとある情報について報告された。
五条「なになに?あの小学校で何かあったの?」
晴「えぇ、少し不可解な点があって伊地知さんに調べてもらったの」
「不可解な点って?」と五条。正直話すのが面倒なのだが。そう思いつつも話し始める晴だった。
晴「会話ができたのよ。相手は準一級、そんなに強くはないわ。なのに出来る…少しおかしいでしょう?」
五条「確かに…会話が可能な呪霊ってそこまで多くないよね。最近出てきたけど」
晴「さてここでクイズ。今まで会った呪霊の中で会話が出来たのはどんな呪霊でしょう?2パターン言ってね」
五条「…1つは等級の高い呪霊でしょ?この前会った富士山頭のやつとかね」
五条が会ったとされる富士山頭の呪霊。中々の実力者で、特級相当らしい。奴もまた、会話ができた。ではもう1パターンは?
五条「もう1つは…あぁ、カザリみたいな元人間パターンか」
晴「正解、流石ね」
紫藤カザリ、晴よりも前から生きる元人間の呪霊。彼女も会話が出来る。もちろん彼女も特級なのだから出来ないわけないのだが、元人間という点も大きく作用しているのだろう。「それで、結果は?」と晴が伊地知に聞く。
伊地知「晴さんの言う通りでした。××小学校付近で「いよ」という少女の失踪事件がありました。つまり、晴さんが祓った呪霊は…」
晴「元人間、ってことね」
やはりカザリと同じ元人間の呪霊であることが判明した。
晴「もう一つの方は?」
伊地知「はい、それも晴さんの言う通りでした」
五条「何?まだあんの?」
伊地知「…はい。晴さんに頼まれた後、すぐに情報が出てきました。調べる必要が無かったので」
五条「それって…」
晴「上層部はいよが元人間であることを知ってて私にやらせたって訳ね」
「はぁ?!」と五条がキレた。聴覚が優れている晴の耳元で叫ばれるのは途轍もなく不愉快だった。
晴「上の人達は私を人殺しにして、精神でも病ませようとしたのかしら。でも私平安時代に大量虐殺した人間よ?そんなの気にもしないのに」
苦笑いを浮かべる伊地知と、返しに困っている五条を尻目に晴はある所へ行く用事が出来たから、と出ていってしまった。
××小学校付近の家についた晴はインターホンを押す。表札には本田という文字が書かれている。
ピーンポーン
??「どちら様でしょうか?」
晴「こんにちはー、本田いよちゃんのお母さんでよろしいですかぁー?」
いよの名を口にした瞬間、母親は血相を変え晴に詰め寄った。
母「あの子ことを何かしってるんですか?!」
晴「(子供が絡むとそんなに焦るんだ)えぇ、知ってますよ」
胡散臭い笑みを貼り付けながら呪術について話し、いよの末路を教えた。
母「そんな…嘘ですよね?あの子がもう居ないなんて…」
晴「嘘なんかじゃないです。いよちゃんはどこかで死に、呪いに転じた。そして小学校に住み着いて人を不本意かも知れないが殺めた。そして私が祓いました」
なんとも思わない彼女の態度は、母親の神経を逆撫でしたようだった。
母「貴方はなんでそんな平然といられるの?!!愛する我が子を失った悲しみがそんなに分からないの?!!」
晴「子供いませんから」
母「じゃあ大切な人は?!それくらいいるでしょ!その人を失った悲しみが分からない訳?!!」
晴「大切な人、か」
晴にとって大切なのは宿儺だろう。それを失う…恐ろしいな、と思った。しかし同時に人はいつか死ぬ仕方のないことだ。という考えも浮かんだ。そして、ある結論に達する。
彼女はそう、言い放った。それを聞いた母親は理解できないのかその場にへたり込んだ。
晴「愛する人が居ないのなら、死んだ方がマシよ」
晴は母親をまるでゴミを見るような目で見た後、踵を返し去っていった。
ことは数日もしないうちに起きた。晴が徐にスマホでニュースを見ているとあるニュースが出てきた。
あの母親と父親が首を吊って死んだらしい。晴の言葉を間に受けたのだろうか。そのニュースを読み終わると、晴はほくそ笑んでいた。
虎杖「先生、なんかいいことあった?」
晴「あら、バレちゃった?」
虎杖「え、なになに?!」
晴「内緒よ」
虎杖「教えてよぉー、ねぇー!」
そのいいことが他人の死であることを虎杖はまだ、知らない。