歌姫と騎士前編

歌姫と騎士前編


ここは海軍本部内の式典会場。ここでは現在海軍に関わる記念パーティーが開かれていた。そこには多くの各界の著名人や報道関係者海軍の将校達が参加している。

「フゥー…」

会場の隅の椅子でようやく報道陣の取材やお偉いさんの挨拶が終わった(けつを触ったエロ親父は足を踏んづけてやった)七武海の一角海賊嫌いの歌姫ウタがドレスがシワになるのを気にせず座り休息をとっていた。

パーティーは嫌いではないがこういう挨拶や関係者への応対はいつまで経っても苦手だった。せっかく楽しみたいのに下手な海賊退治の仕事より疲れる…

「お疲れ様ウタちゃん。」

ふと名前を呼ばれ顔を上げると海軍将校たしぎがノンアルコールカクテルが入ったグラスを差し出しながらそこにいた。普段のきっちりとした軍服ではなくドレスコードをしていて大人の女性を醸し出してる。

「ありがとうございますたしぎさん!」

ウタはお礼を言ってグラスを受け取って疲れた喉を潤した。彼女とは特に仲が良かった。海賊退治での共闘や提出書類の書き方や事後処理こう言った式典でのマナー講座などさまざまなことを教えてくれてウタは彼女を姉のように慕っていた。

そういえば彼女と初めて会った日もこういうパーティーだったっけ?ウタは初めてパーティーに参加した時を思い出した。あの時は子供のようにはしゃいでしまって会場中を子供のように歩き回ったり皿いっぱいに色とりどりの料理を盛っていた時だ。

「あのすみませんウタさん?こういう場でのマナーは…」

と彼女からやんわり注意を受けてあの日は自分の行動にベットでシーツにくるまって赤面したなぁ。思い出して思わず顔が紅潮したウタにたしぎが話しかける。

「最近忙しいけど大丈夫?また傷増えたんじゃない?」

左手とは違う右手首の白いアームカバーを見て心配そうに彼女は言った。こういう場のためなるべく目立たないように巻かれた包帯が見えないように配慮したのだが彼女には筒抜けだったようだ。

「大丈夫ですよかすり傷です。」

ウタは笑顔で右手首をぷらぷらさせて返答した。頂上戦争後世界情勢は悪化の一途を辿っており海軍はどこも人手不足で忙しく海賊対処の鎮圧活動を行っており七武海もジンベエや黒ひげが裏切り脱退しゲッコー・モリアが消息不明その後ロッキーポード事件で暗躍した死の外科医と呼ばれる男などの新規加入者が入るなど何処も大変な状態だった。たしぎ自身もウタ以上に忙しいだろうに他人の心配するところが彼女の優しさ所以だ。ウタはそんなところを尊敬していた。

なんとなく空気が重くなりかけたのでウタは話題を変えた。

「それよりたしぎさん素敵なドレスですね?」

ドレスを褒められたしぎは顔を少し赤くしながらお礼を言った。おべっかではなく実際彼女の姿は美しかった。青を基調とした布地の少ないドレスに引き締まった体と豊かに育った胸と臀部すらりと伸びた太ももが強調されて同性であるウタでさえその妖艶さに見惚れて自分の子供っぽさが残るドレス姿にコンプレックスを感じるほどだ。

スモーカーさんに見せるんですか?とからかったりと楽しく談笑する。その際たしぎさんみたいに異性を振り向かせられる大人になりたいと愚痴ったら「それを見られる人はきっと素敵な男性でしょうね?」と言われた。

それを言われふと敵となった幼馴染の顔が浮かんだ。今はあの時より怒りはおさまったが未だにショックは残っている。この2年間あらゆる場所に派遣されたが彼と会えてはいない。父シャンクスの件も相まってぶっ飛ばしたい気持ちもあれど会って話したい気持ちもある…もし私が大人の女性になれば…素敵なドレスが似合う女性になれば…彼も私の元に戻ってくるのだろうか…12年前のように…

そんなことを考え出してキリがないと頭を切り替え彼女はたしぎとの話に戻った。


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