欲張り

欲張り

実際この状況でこの選択しない人いるかな?私は無理

大学生になってふたりは変わった気がした

大人になった…と言えば聞こえはいいんだけど、実態は違う

高校の時色々なことがあったんだよね、オレも当然関わってた


トネリコの方はあまり詳しいことはわかってないんだけど、同級生が事故にあっちゃって一時期塞ぎ込んじゃった結果だとか…

その人、サッカー部のキャプテンだったからオレもお世話になったんだけど、ほんとにいい人だった、かっこいいし

その日以来2人は全然会話もしなくなっちゃって、オレとしてはちょっと寂しい

それからトネリコは別人のように冷たくなっちゃって、他者を寄せつけなくなってしまった。…何故かファンクラブが出来てるけど


アルトリアの方はよく知ってる。大事な友達が出来たんだけど、その子がいじめに遭って守ってたら。次の標的にされてしまった

大事になる前にオレとオレの友達でなんとか助けられたんだけど、アルトリアとその友達は深い傷を負ってしまった

それからアルトリアは負けないくらい強くなろうとして、自分を律して気高くあろうとし始めた。…たまに素の部分が出るんだけど



…と、まぁだいたいこんな感じで。ふたりが遠い存在になってしまってオレは寂しいと思ってしまってる

もう昔のように遊んでくれないのかなぁ…

「おや、藤丸。外なんか眺めてどうしたんだい?気になるあの子でもいるのかな?」

なんて思ってたら1人の友達が話しかけてきた

高校生の時から出来た友達で、たまたま同じ大学になったから普段は一緒にいることが多い

「いや、今日はいい天気だなぁって」

「…そうだね!まるで君の心のような素晴らしい天気だとも!」

今の天気は曇り、どう考えてもいい天気なわけがないから友達も苦笑いを……してないな、完全に皮肉ってきてる

「…はぁ。お前には隠せないよな…」

「そうさ!隠し事の一つや二つ、人間誰しも抱えると思うけど。あまり抱えても良いことがないぞう!」

あまりにもうさんくさい。

いや、こいつの外面はこんなんだけど、オレとだけいる時は普段絶対にこんなことは言わない

「ここじゃあ誰が聞き耳を立てているかわからないからね…空いているところを探そうか!」

「まぁ、それなら…」

オレ達は空いてる部屋を探しに今いる場所を出た






「…へぇ~?じゃあお前、アイツらが気になるんだ?」

「…いやそれは!!…そうかも?」

「否定しろよ!」

オレとこいつで見つけた秘密の空き部屋

外からは部屋の中が見えない上に防音性にも優れている為オレ達はよくここを使ってる

「大体さぁ、何でそれを俺に言うわけ?本人達に言えばいいだろ」

「いや、2人に悪いかなって…」

「はぁ~~~~~~……コイツホンッット……」

2人には2人の人生があって、それなのにオレのわがままに2人を付き合わせてしまうのも悪いと思ってる

思ってるんだけど…なんだかなぁ

「別に君がそれでいいならいいんじゃない?俺には関係ないし」

…それもそっか、ふたりには申し訳ないけど、やっぱりオレは…

「…そうだよなぁ、じゃあオレ…」

「おっと、そこまで。急用を思い出したんだ!じゃあね~」

「あ、ちょ。待て!!」

オレの言葉を最後まで聞く前に部屋を出た、でもあまりにもバッドタイミング

「…は????」

オレたちがこの部屋から出るところを誰かに見られてしまった


「いや……その……2人って仲良いなって思ってましたけど……まさか…そういう関係だったとは……」

しかもそれがよりにもよってアルトリアだった。どう言い訳しようかこれ

「いやいやいやいやいやいや!!違うから!」

「おや~?誰かと思えばアルトリアじゃ~ん!ごめんねぇ~、立香借りてた~」

「~~!!ふざけんなぁ!!!!!」

言い訳する間もなくアルトリアに詰問されてしまった






「…もう、相談してただけならそうと言ってください」

友達とわかれてアルトリアと一緒に校舎を出た

「ごめん…でも変な想像してたのアルトリアのほうじゃ…」

「…なんの事でしたっけ?」

ダメだ、完全に記憶から消してる。何を言っても聞かないなこれ

「…で、何を話してたんですか?…先に言いますけど内緒なんて言葉はダメですよ」

「いや…アルトリアとトネリコをご飯に誘いたいんだけど、もうふたりは応じてくれないよなぁって…」

ニュアンスは同じだけど、微妙に真実とは違うことを言った

アルトリアは察しがいいから多分勘づいてると思う、だけど嘘は言ってない

「…そのくらい普通の事じゃないですか?」

「いや、ふたりはやっぱり豪華な所がいいかなって…その。焼肉とか…」

「行きましょう」

「え?」

信じられないくらいの即答だった。気を使わせちゃったんだろうか

「ほら、早く行きますよ!トネリコもすぐそこで待ってますから!」

「待ってるって、なんで!?」

ふたりとは別々の大学なのになんでオレのとこにわざわざ来てるんだろう

…今日なんかあったっけ?


門の外でトネリコが待っていた

とてつもないオーラを感じる…

「……遅い。貴様、まさか油を売っていたわけではあるまいな」

うわぁ、間近で感じるすごい威圧感。やっぱり別人みたい

「まさか、寄り道なんてしていませんよ?」

「…まぁいいでしょう…それで、折角来たのです、もてなしくらいは当然の義務でしょう」

え、これ本当にアルトリアと同じノリで誘えるの?無理じゃない??

…待って、アルトリアの即答を信じよう。オレはトネリコも焼肉を食べると信じて…!!

「久しぶりに焼肉…食べに行かない?」

「……行きます」

ちょっと悩んだね、やっぱり嫌だったかな…

「…他のところがよかった?」

「2度言わせないように、行くといったら行きます」

2回言ってるじゃないですか

「2回言ってるじゃん」

あ。言ってしまった

「~~~!!!早く行きますよ!!立香、アルトリア!」

ちょっと怒ったのか顔は見えないけど、心無しかソワソワしていたように見えたのは気の所為か

「…ふふ、安心したんじゃないですか?」

「え?」

「大丈夫です、昔と変わりませんよ。きっと」

アルトリアの言葉で。なんとなくだけどホットしたきがする












「野菜を食べなさい」

「えぇ?トネリコが食べてよ。わたし食べたくな~い」

「食べなさい」

「~!!~~!!」

オレが見たのはいつもの光景だった。ほぼ野菜を食べるトネリコと、肉しか食べないアルトリア

そして野菜を拒否ったアルトリアがトネリコに無理やりねじ込まれる光景

「もう、ふたりともいっつも同じことしてるじゃん」

正直これが見たかった。安心した

「肉ばかり食べていては病にかかります」

「焼肉なんだから肉を食べてたっていいでしょっ!!」

「立香からも……なぜ泣いているのです」

「…いや、ふたりとも…すごい変わったから、もう一緒にはいられないかなって…思っちゃって」

思わず本音と涙がポロリと落ちてしまった

「昔とは違うんだなって…ちょっと、寂しかった」

「ー!!ー!!!」☜必死に肉とご飯を頬張っている

「………!!」☜平静を装いつつもチラチラ見ている

うん、何を言いたいかさっぱりわからない!!

でもなんとなく何を訴えてるのかはわかる!!

「よかった、ずっと変わってなかったんだ」

「あなたはなにも変わっていませんね」

それって全く成長してないってこと!?ショック…

「あなたはあなたのまま。って事ですよね?」

「……余計なことを言う」

アルトリアはわかってたみたいだけど、オレはさっぱりわからなかった











たくさん食べてお腹いっぱい。さて会計に…

「せっかく来てもらったんだし、オレが払うよ」

「必要ありません、このように…」

「あー!あー!!!トネリコ!!ここにガチャガチャがありますよ!!」

「…全くあなたという人は…」

トネリコが何か言いかけたけど。アルトリアが妨害してそのままガチャガチャの筐体へ連れてってしまった

…ナイスアシスト?

「け、結構するなぁ…」

食べ放題じゃなかったらオレの財布が吹き飛んでた。危ない











帰り道。

「アルトリアめ…私が払うつもりだったのによくも…!!」

「そんなことをしたらリツカに悪いでしょう」

「…?彼の負担を考慮するのは当然では?」

後ろでなんかバチバチしてるなぁ…

「わたしもそう思ったけど…せっかくの厚意を無下にする訳には…」

「それこそ私達には不要です、あそこはアピールをする機会だったのですよ」

止めるべき……?いやでも、なんかオレが入っちゃいけない空気な気がする…

「大体それを言うならあなたも払えばよかったものを」

「あ!!!!!!!!!!!」

「…愚か者め、立香もそう思うでしょう」

話をオレに振らないでください。

「いや…一緒に払ってくれるのが1番いいけど…やっぱりオレにカッコつけさせて欲しいなって…」

「…もう」

払おうとしてくれるのはすっごい嬉しい、美味しそうに食べてるのも嬉しくなる

でも、だからこそオレが全部払いたい。これは男としての責務であり矜恃だ


…あれ?今までこんなこと意識してなかったのになんで急にこんなこと思ったんだ?

しかもこれが意味するのってつまりデー……

いやいやいやいや!だとしたらオレは不誠実すぎない!?ダメでしょ!!


「久しぶりにゲームでもやりましょうか、腕は衰えてませんよね?」

「は?あの小説の続きが出たのです、それを一緒に読むに決まっているでしょう」

なんかもう申し訳なくなってきた

「勿論立香は読みますよね?続き」

「リツカ!当然ゲーム!ですよね!?」

オレ、ふたりのこと。もしかしたらだけど…

いや、そうだとしたら…

「…ごめん!!!オレ3人でサッカーがしたい!!!」

どっちかなんて、選べないよ。

「…言うとは思いましたけど…」

「仕方のない人です」


オレ、やっぱり








ふたりのことが好きなのかも

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