欲と熱

欲と熱


ウタワールドでルフィがウタの羽を気に入り愛でる様になって少し経ち、ここ最近では逆上せる様なあの感覚にもどこか慣れを感じてきてしまっていた頃…

ソレを提案されて、ウタは聞き間違いかなとヘッドホンを外してもう一度聞いた。気の所為と、聞き間違いと思いたかった。


「え、今、え?なんて?」

「だからよ、服越しじゃなくて直に生えてる部分みたいなって」


なんにも聞き間違いではなかった。寧ろ確定してしまって、ウタは頭を抱えた。直で羽の生えてるところを触ったり見たいなんて言われても困る……だって、それって…


「…それすると、服、消さなきゃなんだけど……」


いつもの白いワンピースを着ているウタにとって、服を消して?は全裸になって?とほぼほぼ同意だ。

いや、下着くらいはある、が……歳下の幼馴染に下着を見られるのも嫌すぎる。いっそ何もない背中を見せた方が楽…だが


「えぇ…うぅん……」


いっそ背中だけ開いた服に変えるか…?それくらいなら簡単だ。…だがやはり下着は恥ずかしいし…もうそこまでするとなんだか自分がどうしても背中を見せたいふしだらな女みたいじゃないかとウタは腕を組み目を逸らしながら悩む。


「ダメか?」

「……ダm…」

「なあウタァ〜」

「うぐっ」


こういう時に限って、子供みたいに駄々をこねるのは狡くはないだろうか…恐らく無意識でやってるのだろうが、どうもウタはこの様な甘え方をされると弱かった。苦虫を噛み潰したような表情で長考したあと…


「……ぜっっったいに、体の前の方見ないでね?」


色々迷惑かけたりしたとはいえ甘過ぎるかもしれない自分だけを責めつつ、ウタは指を鳴らし上半身分の服を消した。下半身だけは簡易的に服を出してみたが…それでも無防備な姿になったのは変わりなかった。無論、内心はパニックなんてものではない(うわァやっちゃった!!!)と脳内で本当によかったのかと後悔と反省がグルグルしては特大の羞恥心に潰されそうになる。


「ふぅん…こんな感じかァ」


背中に幼馴染の視線が刺さる。居た堪れない。すごい恥ずかしい…

さっさと満足してくれれば良いのにとモジモジしてしまうがなるだけ声に出さない様に、ウタは口を開いた。


「私からじゃ見えないし、よく分かんないけどね…」

「あ、そっか。背中だもんな。不思議な感じだぞ?ほら」

「ぇ…ひゃっ」


急に背中にルフィの手が触れる。先程まで外気触れて少し冷えた背中にそれはとても熱く感じる。


「な、にし…」

「ウタの背中スベスベなのによ、そこからふわふわの羽が生えてんだ。おっもしれェぞ?シシッ」

「そんなの、聞いてな…は、ァ…」


スルスルと羽と羽の付け根の間…背骨をなぞる様なルフィの掌の動きに熱っぽい吐息が漏れだす。今まで服越しだったのに、それでも充分刺激が強かったのに…それの比じゃない。


「あっ、ふぅ…ッ…くぅんっ……」


更にはいつもの様に羽に顔を埋めて大きく息を吸っては吐き出すルフィ。その場所に彼の吐息の熱が溜まっていく。意識が、背中に嫌でも集中してしまう。いつの間にか自分のよりもひと回りもふた回りも大きくなった。ゴムの特性か柔らかさもあるけどしっかりと性差を感じる男の人の掌……


「ぅあっ…や、そこっ…ひぅ……あんっ」


付け根が気になるのだろう。翼と、背中の境目に指を這わせ、わしゃわしゃと、羽を掬うように弄ばれている。指が上下する度に、目の前にスパークが走って、言葉はとうに上手く出なくなった。

何も見えない背中側からのアクションに不安と、何故か鎌首をもたげる期待がある。


「や、ら…やらっ、これ……おか、ひっ…変にっ、なぅ…っ……ぁあっ…ふ」


極め付けには付け根をトン、トンとリズミカルに叩かれる。背骨が、その度弾けるんじゃないかという程熱くて、疼いて…背中と同じく、本人には確認出来ないその瞳は葡萄味の飴のようにとろけていた。

やめて、止めて……多分。これらをしっかり伝えればルフィは止まる。彼は真に自分が嫌がる事はしないから…でも


「ふぁあ…ッ、しょ…それェ…とけちゃ…あ゛ー……あふっ…ひゅ、き…すきぃ…」


ダメだ…思考がまとまらない。何を口走っているのか、自分でも理解しきれていない程に…とろとろと、壊れた蛇口の様に止まらない甘い声をこぼし続けるしか出来なくなっている。


「る、ひっ…るふぃ…それ、も、ろ…もっとぉ……ッ」

「ん?こうか」

「はぁぁあ…ッ……あ、は♡…すご♡」


バチバチと迸る感覚と、愛おしくなるほどの熱で逆上せて…恐らく自分の顔は酷く、だらしなくなっているのだろう事は分かっていた。それ以外はその悦の激流に流される他ない。

時折指の背でなだらかな曲線を描いている背骨を撫で付けられて、そのまま背骨や魂でも抜けるのではないかと錯覚する。そこだけでなく、恐らく服がないからなんとなく手が伸びているのだろう。脇腹や、頸にも指や掌が這わされて、もう己の形も分からなくなりそうな程溶けてる様な…全部が熱くて、全部気持ちいい。


「くぅ、んッ♡……あつぅ…は、あ…とんと、ん……きも、ち、い…っ…♡」


ウタワールドの主である筈の自分に今ウタワールドに何か大きな変化が起きても気付くことは出来ないだろう。真っ白に漂白されていく視界と思考でそんな事を思った。

それからどれほど経ったか…ルフィが満足するまで好きにさせたウタは、服を戻す事もせず、その身体を横たえていた。


「はあ…は、ァ……ッ…♡」


いまだ余韻が消えず、存分に与えられた熱の残りに浸る。力の入らない身を起こすのには少なくない時間を要した。背を向けたまま、顔だけをルフィに向けて話しかける


「…まん、ぞ、く…した?」

「おう!ありがとうな!!…大丈夫か?」

「いまさ、らァ…?…ふふ」


呂律が回りきらない口で、言葉を紡ぎ、微笑んでいるウタだが、声色には未だに蜂蜜の様にトロンとしていて熱っぽい。途中からは本人も乗り気だったとはいえ、やり過ぎただろうかとルフィは考え…


「何かお礼にして欲しい事とかあるか?」

「おれい?」

「うん、出来る範囲でやるぞ?」


そう聞かれたウタは指を口元に当てて思案する様な仕草をした後ふんわりと笑った。それが普段のウタがしたならば、なんともなかっただろうが…今のウタがすると何処か危うく見える。


「じゃあねェ…ルフィ、うしろ向いて?ふり向いたらやだよ?」

「お、おう?」


そう言われるがままに後ろを向いて座ったままじっとしていると、パサ…と布の落ちる音と共に、腕を回され、後ろから自分を包む様に羽が視界を塞いだ。


「う、お…?ウタ?…って、おい、おま」


急に後ろから抱きしめられて、少し驚き手を動かしたら、彼女の腰の辺りに触れた。先程まで、服があった筈の場所に、柔らかな肌の感触がする。まさか先程の音はと流石に慌てるが…


「ほら、うごかない…ウタワールドが閉じるまで、こうしてるだけだから」

「風邪…は、引かねえか……」


ウタワールドだしね、と続ける事はしなかった。自分が提案した礼の内容がこれならば自分は大人しくしているだけだ。しかし基本的にじっとしている事が苦手なルフィはなんとなく落ち着かない。否、じっとしていなければならない事だけではない。


「な、あ…せめて服着ないのか?」

「着なーい」

「…そっか」


後ろから抱きしめられていると、ルフィの服越しに背中にウタの胸が辺り、形が変わるくらいには押し付けられているのが分かる。分かってしまう。

しまいには、ウタは先程の仕返しとばかりにルフィの麦わら帽子をどかしてルフィに持たせら後頭部に鼻先を埋めて呼吸している。幸い風呂には昨日入ったので臭くはないだろうが…こそばゆい。


「…あー、なるほどな」

「なにが?」

「これ、顔見えなくてなんか嫌だなって」

「…んふふ、そっ、でもまだダメ」


まだもう少し、夢の世界が閉じるまで。誰より夢見心地な彼女は、悪戯っぽく笑いながら、未来の海賊王を、その細腕と紅白の羽の中に独り占めしていた。

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