果てる凍星

果てる凍星




料理人・裏梅の朝は早い。

敬愛する主、両面宿儺の楽しみの一つ、『食事』。それを作るのを任されるのは、栄誉の極みである。

あのお方に喜んで貰える。ただそれだけで裏梅にとっては最高の報酬だ。故にほぼ深夜に近しい時間帯でも構わず食材の調達に出掛けるのも苦にならない。

宿儺の好きな食事は人肉料理である。しかし、常にそれを喰らうわけでは無い。時には普通の肉料理を。時には薬膳を。時には魚料理を。時には雑穀を。気分によって食べたいものが変わる彼の舌を満たせるのは自分だけだ。そんな自負が、無意識のうちの慢心に繋がったのだろう。

食材である山菜を採るのにいつも使う最短ルート。そこに、裏梅を捕らえる為に罠が張ってあったことに気が付かなかったのは、彼らしかぬ失態であった。


ギシギシと縄が軋む音が鳴る。

「クソッ...どういうつもりだ下郎が!」

自分の両腕を縛った相手を裏梅は睨みつける。その相手はーーー宿儺に日頃から付きまとう女・万(よろず)。

「愛よ、愛。私が動く時は宿儺への愛

と決まっているの」

万は己に陶酔するかのような表情を浮かべて裏梅を見下ろす。

『愛』。主人に付き纏っているだけの傍迷惑なこの女がそれを語ることだけでも裏梅にとっては憤懣やるかたない。しかも、それが『恋慕』などではなく『狂信』に近いものだと知っているから尚更である。

「...今すぐ私が殺してやろうか?」

怒りのあまり声が低くなった裏梅を見て、しかし万はニヤニヤと笑う。

「ぷぷっ、そんな様で私に勝てると思ってんの?お得意の氷凝呪法にだって私の構築術式は既に対策を済ませてあるのよ」

「知ったことか」

普段の宿儺への態度ですら万死に値するというのに、宿儺の食事を遅らせる罪まで重ねられたらもう我慢などできるはずもない。縛られたままの体勢で、裏梅は『霜凪』を放とうとする。が、

バチィ

「くあっ!?」

突如流れた電流に呪力をかき乱され、霜凪は不発。更には呪力コントロールすらままならない状態に陥ってしまう。

「ふふん、驚いた?これは私の術式で作った特別製の電流よ。宿儺には通用しないだろうけど、あんたくらいなら充分だったようね」

「ぐっ...!」

全身を苛む痺れに耐えつつ、余力でどうにが万を睨みつける。だが、当人は何処吹く風といった様子だ。それがまた裏梅を苛立たせるが、しかし、努めて冷静に思考を働かせる。

(先程はこの下郎は愛のためだのなんだのとほざいていたが、確かになんの意味もなくこんな蛮行を働くとは思えん)

裏梅にとって1番重要なのはこの女に勝つことでは無い。宿儺の食事の下ごしらえをすることだ。つまり、この場の最適解は。

「...用件があるなら早く言え」

「さっすが裏梅。話がわかるぅ♩」

万はケラケラと嗤いながら、裏梅の前にしゃがみ込んだ。

「あのね裏梅。私、あんたに手伝ってもらいたいことがあるのよ。...ほら、宿儺と婚約したら、もうそこからは一蓮托生、つまりは夜伽もできるじゃない」

いや知らんが。そもそも婚約を勝手に確定させるな。

そんな冷ややかな裏梅の視線もお構いなしに万は続ける。

「でもでも、私って宿儺の性感帯とかわからないし経験も知識だけだから満足させてあげれるかなぁってすごく不安になっちゃって!だからって宿儺以外の男に抱かれるのは嫌だし!それに宿儺も誰かに抱かれた女が妻になるのは嫌だろうし!でもそれはそれとしてやっぱり夜伽なら満足させてあげたいというのが女の常でーーー」

「長い。さっさと要点を言え」

聞くに耐えない妄想惚気話に裏梅は青筋を立て、万はまだ語り足りないのに、と口を尖らせながら仕方ないわねえと続けた。

「あんたには私の経験値になってもらう。要するにあんたのちんぽ貸してってことよ」

・・・

数秒の沈黙。裏梅は宿儺の傍にいるのを許される強者である。料理の腕、戦闘技術、そして痒いところに手が届くと常日頃褒められる細かな気配り。他にも数多の美点を、裏梅は持ち合わせている。

だがしかし、その優れた頭脳と観察眼を以てしても。眼前の女が言っていたことを飲み込み咀嚼するのに数秒の時を許した。その数秒の空白を突き、万は己の領域範囲にまで裏梅へ接近。吐息が交わるほどに唇同士が近づき。

「ーーー!?!?!?」

「はむっ」

裏梅の唇を貪った。そのまま舌を滑り込ませ、裏梅の口内を蹂躙する。じゅるっじゅると下品な音を立てながら舌を絡めた接吻。未経験を自負する女とは思えぬほどに深く、そして激しい。

「んちゅっ♡じゅるるる♡ちゅぱっ、んんっ♡」

突然の凶行に抵抗しようと身をよじる裏梅だったが、縛られた状態では逃げることなど不可能。舌に噛みつくことも、先の電流によって力が入り切らず、歯茎や上顎をなぞり唾液を流し込むような執拗な接吻にただ耐えるしかない。

そうしているうちに、裏梅の体から力が抜ける。万が流し込んだ呪力により強制的に脱力させられたのだ。それを見届けてから万はゆっくりと口を離す。二人の唇の間に唾液の橋がかかり、ぷつりと切れる。

「ぷはぁ……あっはは♡接吻だけで力抜けちゃってるの?かわいいねえ」

「この下衆め……!私に何をした……!」

「ちょっと私の特製な呪力を流し込んでやっただけよ。どう、気持ちいいでしょう?」

そう言われると確かに体の芯からじわじわと熱を帯びてくるような気もしてくる。だがそれを認めたくなくて裏梅は万を睨みつけた。

「まあそんなことはどうでもいいわ。さっさと始めましょうか」

万はそのまま裏梅の袴に手をかけごそごそと下半身を弄り出す。

「なっ!?やめろ!離せ!この下衆が!」

「あーはいはい暴れない暴れない」

万は手慣れた動作で袴をくつろげ、裏梅の肉棒を取り出した。主人である宿儺への愛と忠誠により自慰すらあまりしない裏梅にとって、己以外の者による刺激は初めての体験だ。しかもそれが鬱陶しい雌犬によるものともなれば、怒りと恥辱で頭がどうにかなりそうだった。

そんな裏梅に構わず万は裏梅の肉棒をまじまじと見つめて、ほぉー、と感嘆の息を吐いた。

「あんた、可愛い顔に似合わずえげつないもん持ってるのねえ」

裏梅はよく女と間違われるほどの美貌を有している。その顔とは対極的なズル剥けの巨根且つ松茸のようなカリ高の高級肉棒に流石の万も度肝を抜かれていた。

「黙れ!その減らず口を今すぐ閉じろ!」

裏梅が怒鳴ると、万はまたもケラケラと笑って「可愛い顔ね」と呟いた。怒りに震える裏梅を無視し、そのまま裏筋からカリ首にかけてを指を輪っかにしてくるくるとなぞる。その刺激で段々と肉棒が鎌首をもたげ始めた。

「やっぱりちんぽ弄られるの好きなんじゃないの?」

「……っ、この痴れ者が……」

裏梅はこの状況に心底辟易していた。何とかしてこの馬鹿の凶行を止めねば、と思考を巡らせていると、万は今度は亀頭を指で摘み、クリクリと弄り始めた。

「く……うぁ……!」

「ねえ裏梅、我慢しない方がいいわよ?気持ちいいなら声出して喘いだ方が楽なんだから」

「ほざけ!貴様のような下衆に屈する私ではない!」

裏梅の啖呵に万はため息を吐く。

「強情ねえ……でもそういう子は大好きよ」

万は裏梅の肉棒をパクリと咥えた。無論、その口淫も手淫と同じく初体験の裏梅である。未知の刺激に、裏梅は思わず上擦った声をあげてしまう。

「んあっ!?あっ、やめろぉ……!」

裏筋を舐め上げ、亀頭を舐めしゃぶる。唾液と先走り液がぐちゃぐちゃと混ざり合って水音を奏でていた。口内で裏筋をチロチロとなぞったり、カリ首を舌の先端でくすぐったり、裏筋を重点的に責めたり。ありとあらゆる愛撫で裏梅の肉棒を責め立てる。

「うぁ……ああぁっ!」

万が口を離すと、その屹立は先走り液でてらてらと鈍く光っていた。唾液と先走り液が混ざり合った液体が糸を引いている様がなんとも淫猥である。

「あはは!こんなにバキバキにしちゃって♡うん、私の知識は間違ってなかったみたいね!」

「ぐっ……貴様……!」

万が肉棒に息を吹きかけただけで裏梅のそれはぴくんと跳ねる。そんな裏梅を嘲笑いながら、万は手淫を再開した。

「ぐぁ……!ううぅ……」

カリ首や亀頭を中心に責め立て、空いた手で竿全体を扱いていく。再び先走り液が溢れ出し、水音が激しくなる中、裏梅は声を押し殺して耐えることしかできないでいた。

「ふーっ♡ふーっ♡」

顔を真っ赤にしながら必死に堪える裏梅を万はニヤニヤと見つめる。

「ねえ裏梅、我慢せずに声出したら?その方が気持ちいいでしょ?」

「だ、黙れ……んぐっ!」

裏梅が言葉を返す前に、万はまたも肉棒を咥え込む。同時に尿道に舌を割り込ませ、グリグリと刺激した。これまでとはまた違った新たな快楽に、悲鳴にも似た嬌声が上がる。

「ひあぁあああっ!?!?」

(なんだこれ……っ!)

尿道を直接刺激され、未知の快感に裏梅の頭は蕩けてしまいそうになる。そんな裏梅を愛おしそうに見つめながら万は責め立てる手を強める。裏筋や鈴口だけでなく睾丸までも指先でくすぐるように愛撫しながら、肉棒への刺激を加速させていく。

「うあ……やめ……もぅ……」

「じゅぷっ♡じゅぷっ♡」

裏梅の限界が近づいてきたことを察し、万は更にストロークを大きくする。先走り液と唾液が混ざった液体を泡立たせながら、裏梅を絶頂へと導いていく。

「うぁ……あっ!あぁああぁああっ!!」

びゅるっ♡どぷどぷっ♡ビュルルルーッ♡♡ 万が口を離した瞬間、勢いよく飛び出した白濁液が裏梅の腹に飛び散る。普段自慰すらしない裏梅にとっては久方ぶりの射精だ。その快感にくたりと力が抜けた四肢を投げ出す。

そんな裏梅に万は覆い被さり、耳元で囁く。

「うふふ。いい顔ね。...ねえ裏梅。なんで私があんたに頼んだかわかる?」

再び万は裏梅の口内に舌を侵入させ、蹂躙する。同時に唾液を流し込んで裏梅の口腔内を嬲る。

「はむっ♡んちゅっ♡じゅるるるっ♡んっ……ぷはぁっ」

万が口を離すと、唾液がいやらしく糸を引いた。万はうっとりとした表情を浮かべながら更に続ける。

「宿儺の次にあんたを好きだからよ。経験を積むならあんたがよかった」

「気色悪いことを言うな...ッ!」

万の告白も、裏梅には響かない。

たとえ無様に精を絞られようと、万へと心が傾くことはない。凍星。その二つ名の示す通り、宿儺以外に凍りついた心は揺らがない。

「つれないわねえ。まあ私も宿儺以外とつがいを持つつもりはないから都合がいいんだけどね」

万はそのまま裏梅の胸板に手を滑らせる。そしてそのまま、胸の先端をキュッと摘み上げた。

「あっ……!?」

胸から走る甘い快感に思わず裏梅は声を漏らす。自分の口から漏れる声に驚き、即座に口を塞ぐがもう遅い。万はその反応を見逃さず、執拗に責め立てていく。

「ああぁっ!くっ……!んああっ!」

カリッ♡カリカリッ♡くりくりっ♡くにゅくにゅっ♡♡ これまでの手淫により硬く勃起した乳首を指先で弾くように弄り、時折摘んだりこねくり回したり。その度に裏梅の体が跳ねる。

「ひっ!ああぁっ!」

「いい反応ねえ♡あんた素質あるわよ」

万が楽しそうにそう言いながら乳首を責める手を緩めない。指の腹で小刻みに弾いたり、二本指で挟んでクニクニとこねたり、摘んで軽く引っ張ったりするうちに、段々とコリコリとした芯のある感触へと変わっていく。

「ここもヒクヒクしてきたわね♡早く舐めて欲しい?」

「ち、違っ……」

万に乳首を舐められる妄想をしてしまい、裏梅の体がゾクリと震えた。それを見透かしたかのように万はわざと耳元まで口を近づけて囁く。

「素直になりなさい?あんたの負けよ」

ちゅるっ♡れろっ♡ぴちゃっぴちゃっ♡♡じゅるるるっ♡♡♡ いやらしい水音を立てながら、万は裏梅の耳を舐め上げた。耳の穴を犯すかのように舌をねじ込み、舐め回す。両の耳を同時に責められる未知の快感に、裏梅は思わず悲鳴をあげた。

「あひぃいっ!?」

「うふふ……かーわいい♡でもこれじゃまだ足りないでしょ?」

そう言うと万は裏梅の乳首を口に含んだ。そして口内でチロチロと舌先を這わせながら乳首の先端に爪を立てるように刺激する。先程とは全く違う刺激に思わず体を仰け反らせて反応してしまう。

「うあぁっ!?!?」

ちゅぷっ♡ちゅるっ♡れろっ♡ぴちゃっ♡ぺろっ♡♡ 万の口内で乳首を優しく舐られ、もう片方の乳首は指先で摘まれ、弾かれ、カリカリと引っ掻かれる。乳首を責められて感じているという屈辱に顔を赤くしつつも、裏梅にはもう快楽に抗う術はなかった。

(こ、こんな……!胸だけで……こんなに……っ!)

先程までとは比べものにならない快感に、裏梅は恐怖すら覚え、一度は果てた肉棒もはち切れんほどに張り詰めていた。そんな裏梅の様子に万はほくそ笑む。

「あはは!おっぱい気持ちいいんでしょ?素直になりなさいよ」

そう言いながら、万は口に含んでいた乳首を強く吸い上げた。突然の強い刺激に裏梅の腰が浮き上がる。そしてそのままもう片方の乳首へと吸い付き、同じように吸い上げる。

ちゅううっ♡ちゅううっ♡ぢゅるるるっ♡♡れろっ♡ちゅっちゅっ♡♡

「うぁぁああっ!?!?」

ビクンッ!!と大きく跳ねて、裏梅は再び絶頂した。だが万の責めは止まらない。絶頂直後の敏感すぎる乳首を容赦なく責め立てる。

ぢゅるっ♡ちゅぷっ♡ちゅるるるっ♡♡れろっ♡ちゅっちゅっ♡♡

「うあぁっ!や、やめ……っ!」

敏感になった乳首への容赦ない愛撫に、裏梅の理性は崩壊しかけていた。それでも尚必死に耐えようとする裏梅だったが、万は容赦なく追撃する。

「うふふ……もうこんなにビンビンになっちゃった♡じゃあ次はこれね♡」

そう言いながら万は裏梅の肉棒をギュッと握った。乳首への愛撫で完全に勃起したそれは、既に先走り液でドロドロになっている。裏梅が羞恥に顔を赤らめる中、万はそのまま竿を上下に扱き始めた。

裏梅の肉棒は万の手コキにより、更に硬く、そして大きくなっていく。

「うぁっ!く……うぅっ!」

「どう?気持ちいいでしょ?」

裏梅が感じていることを察した万は、裏梅の亀頭を掌全体で撫で回す。そしてカリ首に指先を引っ掛けて引っ掻き始めた。同時に乳首をしゃぶっていた口を離し、もう片方の乳首へ舌を這わせる。舌の先端でチロチロと舐め回し、時に吸い上げながら甘噛みする。異なる二つの刺激が裏梅を襲い、裏梅は再び限界を迎えようとしていた。

「あ……あぁっ!だめだっ!また……!」

「いいわ、イっちゃいなさい♡」

そう言いながら万は裏筋を中心に責め立てる。尿道からは先走り液が大量に溢れており、その滑りを利用して万の手が激しく動く。陰嚢には再び精液が溜まり始めており、睾丸ごと揉みしだかれる快感に、ついに我慢の限界を迎えた。

「く、あ、はあっ!」

ドピュッ!ビュルルルーッ♡ビュッビューーーーーーッッ♡♡♡♡ 

大量の精液が裏梅の肉棒から勢いよく放たれた。射精中も万の手は止まらず、裏梅の肉棒を搾り取るかのように最後の一滴まで吐き出させる。ようやく手を離した時には、裏梅の腹の上には先の射精と重ねてべっとりと白い液体がこびりついていた。

それからも何度も挿入無しで果てさせられ、ぐったりとする裏梅とは裏腹に、万は着物を整えて気合い一徹空に叫ぶ。

「よっしゃあ!これで経験値満タン!今夜はカリ首洗って待ってろや宿儺ちんぽぉ!」

裏梅が止める間もなく、万は全力疾走で彼方へと消えていく。残された裏梅は、なんとか平常心を取り戻しつつ己の装いを正していく。まだ今から食材を取りに行けば間に合う。今日、普段よりも早めに出ていたことが微かな功を成した。だというのに、えもしれぬ敗北感が裏梅の中から消えることはなかった。


Report Page