果てなき快楽
窓もなく、灯火もなく、暗闇に閉ざされた部屋。
砂漠に囲まれた白亜の城の奥深く、荒い息遣いと鈴の音だけが男の存在を知らしめていた。
「ん……く、ふぅ……んっ……!」
行為の始まりからどれほどの時が経ったのか、自分が今何をされているのか。視界を封じられた状態ではそれらを把握するのは難しい。
触れ合う肌の熱さ、ちりちりと鳴る鈴の音、布の感触。
「う、お、あ、ああああ、あ゛っ……」
そして、途方もない──────快楽。
男が知ることを許されたのはそればかり。他の一切は闇に塗りつぶされ、男に届くことはない。
「…………気持ちいいか?」
否。
男に許されていることがもうひとつだけある。
「くろ、こ、だいる……」
「なんだ?」
「おかしい、へんだ、おれの、おれのからだ、どうなっ、あ゛っ!?」
魔性の指が肌をなぞり、男の身体が大きく跳ねた。
「うんうん、よく気づいたな。偉いぞ」
「ま、まて、まってく、ひっ」
「ご褒美をあげよう」
「やめ、や、んぐ、む、んぅ……っ!」
“おかしい”
そう述べた男の感覚は正しい。常人ならとっくに溢れているはずの、溢れていなければおかしいほどの快楽が男には注ぎ込まれている。
だが、溢れない。
溢れるべきはずのそれは溢れず、さりとて漏れ出すこともなく注がれ続ける。まるで、上へ上へと積みあがるように。
ちりり、ちりり。
男が身じろぐたび、胸に括り付けられた鈴が揺れる。
男に許されているのは、与えられた刺激を受け取ることと、魔性の寵愛に溺れること。
果てることは、まだ許されていない。