本物の定義

本物の定義

モテパニ作者

ある日の事、品田家は芋掘りに来ていた。

拓海「ふぅ…」

体力には少し自信がある拓海だが、さすがの重労働、疲れて少し休憩を挟む。

ダークドリーム「拓海、疲れたの?」

一緒に来て作業をしているダークドリーム。

彼女も拓海とそう変わらない、いや拓海以上に働いていた。

休憩も取らず今も収穫した芋を詰めた籠を運んでいた。

拓海「ダークドリームは大丈夫なのか?」

ダークドリーム「ええ、私疲れないもの」

拓海「…マジで?」

ダークドリーム「だって私そういう風に造られたから」

かつてシャドーという者に造られたダークドリーム、忘れていたわけではないが、やはり不思議な存在だ。

拓海「じゃあなんでこの芋掘り参加するのすげー嫌がってたんだ?」

ダークドリーム「作業じたいは全然嫌とかじゃないけど、この服がどうもね…ダサいじゃないこれ」

拓海たちが着ているのは汚れてもいい作業着、それはどうしてもデザインは二の次、それを着るのがダークドリームにとっては嫌な事だったらしい。

思えばダークドリームは普段からオシャレな服を着ていた。

そんな話をしていると、一匹の虫がダークドリームの元へ飛んでくる。

ダークドリーム「…テントウムシ?」

拓海「お、そいつはテントウムシダマシだな」

ダークドリーム「ダマシ?テントウムシじゃないの?」

拓海「いや、テントウムシだぞ」

ダークドリーム「……どういう事?」

拓海「そいつは正式名はニジュウヤホシテントウ。一般的にテントウムシは植物を荒らす害虫を捕食する益虫なんだが、そのニジュウヤホシテントウは逆にナス科の植物なんかを食い荒らす害虫でな、その結果テントウムシダマシって呼ばれるようになったんだよ」

ダークドリーム「そうなの…」

ダークドリームはニジュウヤホシテントウを複雑そうな目で見る。

ダークドリーム「あなたは本物なのに偽物扱いされてるのね…」

拓海「…」

ニジュウヤホシテントウのあり方はダークドリームに思うところがあった。

しかし拓海はあえてそれを隠さなかったのだ、その理由は…

拓海「人間ってのはそんなもんだ。そいつがどういうやつかより、自分にどう見えるかを優先するもんだ」

ダークドリーム「…」

拓海「だから俺にとってお前はお前だ。俺だけじゃない、みんなも、夢原もな」

芋掘りに参加した事、ニジュウヤホシテントウが飛んで来たことなどは拓海の意図した事ではない。

しかしそれは拓海が普段思っている事を伝えるのにちょうどいいと思ったのだ。

ダークドリーム「ふんっ!」

拓海「ぐほっ!」

拓海の胸を強めに小突いた。

ダークドリーム「もう休憩はいいでしょ。さっさと作業に戻って終わらせなさい」

そう言ってダークドリームは指定された場所へ芋を持って行く。

拓海「ててて…余計な事だったか?」

だがまあ拓海も言いたい事は言えたのでよしとしようと思った。

〜〜〜

ましろ(まし拓)「つ、疲れた…」

少し離れた場所では手伝いに来ていたましろ(まし拓)がボロ雑巾のようになっていた。

あん「今日は手伝ってくれてありがとうねましろちゃん。後は任せて休んでて」

ましろ(まし拓)「あんまりお役に立てなくてごめんなさい〜……」

あん「いいのよ。あらダークドリームちゃんお芋また持ってきてくれたのね。あら?何かいい事でもあった?」

あんのいるところへやって来たダークドリーム。

指摘されてダークドリームも気づいた、自分が嬉しそうな顔をしていたらしい事に。

理由は先程の拓海の言葉だろう。

それに気づいたダークドリームは振り返り、

ダークドリーム「…バーカ」

不器用で真っ直ぐな少年にそう送った。


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