朝食には間に合わなかった

朝食には間に合わなかった


船というものは大小あれど常に波に揺られるものだ。故に揺れとは余程の大しけの時でもない限り船員は気にしないものだ。

そして音、これも潮風等があると存外聞こえないもので…セーラーの特徴的な襟はそれを立てて仲間の声を聞くために作られたという。勿論、世界には見聞色の覇気やら動物系能力者やらがいるので一概には言えない事だが、つまるところ海の上とは何かと色々バレにくい…という事だ。


…何が言いたいかと言えば、その上で更に防音の聞く部屋にいる自分の声を誰かが聞くことが無いのはある意味不幸中の幸いだったはずだ。


「は…あ゛っ!?も、むりっ…やめ…!」

「ダメだ、まだやるぞ」


「大切なのは身体より心」それは今までの人生を通して芽生え、育った、私の大きな価値観の一つだ。どれ程満たされても心が辛ければ何も意味がない。間違ってるとは思わない。

でも目の前の幼馴染は「身体も大切だ」「両方大事にしなきゃダメだ」と再会してから私によく言ってくる。

彼が心配で言ってくれたのは分かる。が、それでも今までずっとそうだった自分の価値観を変えろと言われてすぐに素直に変えれる人の方が少ないわけで…つい「なら私に身体が重要だと思える様な事を教えて欲しい」と言ったのだ。


それから彼は私の色々と見たり、一緒に食べたりと奮闘してはくれた。でもやっぱり分からない。だってウタワールドだと好きなものを創り出せるから。

好きな味付けの料理も、綺麗な景色や彼が好きそうなロボットだって出せてしまう。勿論、美味しかったし、楽しかった。でもこれは…所謂一人じゃないからなのも大きいと思う。

誰かと一緒に、というのは本当に楽しいものだから……


だからやっぱり、心なんじゃないの?と私はルフィに零してしまった。


「くっ、ぁ、はぁ……んぅ…!!」


そしたら、コレである。

作曲作業や仮眠が出来る様にしてある半自室の様な場所に私がいるところに急に来たと思えばベッドに押し倒され、両手を片手で簡単に押さえ込まれて……

ルフィのバカ、あれファーストキスだったんだぞ

随分と長く、それも途中からは深かったそれで、息継ぎなんかも分からない私は、ようやく一息ついた頃にはやや酸欠気味になった。荒い息をなんとか整えようとしていると、ルフィの声が降ってきた。


「悪いけどウタ、これからお前にしっかり教え込むからな」


そこからはもう時計が何周したかなんて数えてはいないから時間の経過は分からないが、ベッドのシーツは洗わないといけないくらいにはビシャビシャだった。濡れた部分に触れた脚が冷たくて気持ち悪い。

胸だの、下の方だの…他にも耳まで弄ばれて、身体中が燃えるみたいに熱い。なのに


「ぁ…な、またァ…?っあ、ぅ…なんれ…うぁ、はっ…あぁ…!」


その熱が、爆ぜる事は許されなかった。ただひたすらに燻り続け、薪だけ与えられてあと少しなのに…それをルフィが感じ取るとピタリと手を止めてしまう。

気がおかしくなる…

知識はあるからその先も分かる。だからこそ、ずっと不完全燃焼を繰り返され続けるのが更に辛い。

なのに気持ちいい…嫌なのに、身体が勝手に反応する。


「る、ひっ、も、もう…おねがっ…イッ…ぃ……いか、せ…」

「だめ」

「あ、あぁぁ…な、んれェ…っんぁ、や、ひょこ…こふら……ふ、ぁ、う」


また手を止められる。離されてしまう。そうしてまた間違って気もをやらない程度の弱い刺激だけを与えられる。

口の中にルフィの指が入ってる…上顎を擦られるとぞわぞわして嫌なのにその反応がお気に召したかルフィは人差し指や中指を使って私の口内をしつこく触ってなぞる。さっきは優しく抱きしめられて頭を撫でられ続けた。その前はぬるめの水を口移しされて喉を潤した。当たり前だがそんなのではイけない…のに、火は燻り、更に熱をもっていく……焼け死ぬんじゃないかなんて思ったのは決して冗談ではないつもりだ。


タチが悪いのが、これはウタワールドだとどうしようも出来ない事だ。

毒と同じ、心の世界で身体の異常は慰める事が出来ない。

なんで、なんて言ってるが…本当は分かっているのだ。ルフィが私の口から言わせたい言葉が何か。


「や、やらっ…もういいっ、もう、いらなっ……ひ、あ、ァ…!!きもち、の…いらな…ひっ、ゔぅ…!!」

「違うよな?ウタ…「いらない」じゃ、ないだろ?」


腰が浮いてる…恥ずかしい。

顔を隠したいのに腕が押さえられてて、横を向いたらちゃんと見ろと顎を掴まれる。

さっきからカチカチ、うるさくて

暗い部屋なのにチカチカと、眩しい

私の歯が鳴っているのも、イけないのに気持ちいいから意識がとびそうなのと…とにかく忙しい……

生理的な涙が流れたあとが、空気に冷やされて嫌だ


もういい、もうやだ…もうむり


「ひ、ぅ…っ……から」

「ん?」

「っ、から、だ…だぃ…いじ…する…か、りゃ…からァ…!!ぁんっ……も、イか、ぁああっ!?」


急にピッチが上がって大きな嬌声をあげてしまうがそれどころじゃない。


「よく言えたなウタ…よし、じゃあちゃんとするからな」

「ぁは、はー…っ、あっ、ああっ…あん、は、あ゛っ!…も、もう……イっちゃ…」


寧ろ今までずっと手前で停滞している状態だったのだから上り詰めるのははやい。

いつの間にか腕の拘束は解かれていて、特に何も考えず、私はその腕でルフィに抱きついた。


「ぁ、あっ?!…っっ!!」


そうして盛大に気をやった私はまだ熱を感じている身体が外気で冷えていくのをぼんやりと知覚していると、またルフィに頭を撫でられる。


「悪いな無理させて…」

「…ほか、に…ほうほ…ケホッ」

「とと、水飲め、いっぱい声出してたからな…痛めたら大変だ」


出したというか…無理矢理引き出されてたというか……文句の一つでも言いたいが、水がくれる気遣いは嬉しいから言わないことにした。「他に方法なかったの」というのも…まあ、ルフィなりに考えた結果だろうと水と共に飲み込む事にした。

だけど…


「はっ……ねえルフィ…」

「ん?」

「ルフィの……それ、は…どうするの?」

「……あ、あー、そうだな…」


余裕がなかったとはいえ、気付かなかった訳ではない。途中からずっと当たっていた彼の…まあ、うん。生理現象としては当たり前なのだから仕方ない。でも意外。


「ルフィって…ちゃんと興奮するんだ?」

「お前おれをなんだと…」

「私のファーストキスをあんな形で奪ったおバカ」

「…はい、すみませんでした……」

「ふはっ…いいよ、別に……」


情緒がない形とはいえ…ルフィは「何も無くて」そんな事をする奴じゃない位は分かっている。そんな奴だったら最初の時点で歌って能力を使って終わってる。

ロクな抵抗を最後までしてなかった時点で私もお察しなわけで……


「それで、どうするの…?」

「えと、て、適当に処理して…」

「へえ?」


適当、先程あれ程私に教え込んでおいてそれは無いなと思う。ベッドに横たえてた身体を起こしてルフィに抱きついて、わざと耳元で話す。


「私、あんなにおあずけ喰らって一回じゃ満足出来ないんだけど…」

「!?…い、いや、でも身体の負担がな」

「それは今のルフィも変わらなくない?昔から言うじゃん…我慢は身体には毒って」


めちゃくちゃ恥ずかしいが、ズボンの上から、つぅっと撫であげてそう言うと、ベッドにまた押し倒された。


「お前、本当……知らないぞ」

「教え込むって言ったのは、ルフィじゃないの?」


その後のキスを随分と優しくされたのは彼なりのリベンジなのだと受け取る事にした


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