朝っぱらから娘と戯れ合うエース

朝っぱらから娘と戯れ合うエース



朝5時、いつもよりちょっとだけ早い時間に目が覚めた。

隣の旦那に目をやると、当然ながらまだ寝ている。

昨日も遅くまで仕事の残りを片付けてたから、起床時間までは寝かせておいてやりたい。


「んまっ!」

「おっ?」


声がした方を見ると、あたしと旦那の真ん中で寝ていた娘が起きていた。

娘は大きな目であたしを見上げながら、両手をブンブン振り回りしている。

可愛い。


「オハヨッ」


赤ん坊を持つ親あるあるなんだが、赤ん坊に話しかける時、無意識に声が高くなる。

初めはこんな声出せるのかと自分のことなのにビックリしたが、今はもう慣れた。


「早起きでちゅねぇ、よく眠れまちたか?」

「うン」

「へへへ、よかったでちゅねぇ〜」


そして言葉遣いも変わる。

これは旦那の前ではあんまやらないようにしてる…なんでかって?恥ずかしいからに決まってんだろ。

前に出先で昔の同級生達の前でやらかしたんだが、連中からこの世の物ではない何かを見るような目をされた。

「お前らも子供が産まれたら絶対こうなるからな」と言っておいた。


「うー…へあっ!」


上機嫌なのか娘はニコニコ笑っていて、手と足を懸命に動かす姿は、もう本当に可愛い。


「……ぷにぷに」

「ぶっ!」


あたしは娘のふっくらしたほっぺを人差し指と中指、親指で優しく挟む。


「ぷにぷにぷにぷに〜」

「へぇ〜へへへへへへ」


挟んで離してを繰り返し、娘の顔で遊ぶ。

娘は喜んで声を上げて笑う。

それが本当に楽しくて、幸せな気分になって、今度は片手で娘の両方のほっぺをやさーしくつまむ。

娘がひょっとこみたいになって、おかし可愛くなった。


「ぶちゅっ!ぶちゅっ!」

「んへっ!え!へへぇ!」


あたしにされるがままだが娘は嫌がらず、絶えず笑ってくれている。

可愛い、可愛いあたしと旦那の娘。

本当はずっと遊んでいたいけど、あんまり顔を弄るのはよくないし、そろそろ朝飯の準備しなくちゃならないから、娘を抱き上げて布団から出ようとした時、旦那と目が合った。


……目が合った?


「………」

「……おはよう、エース」

「……………いつから起きてた?」

「『早起きでちゅねぇ』って聞こえた辺りから…」

「最初っからじゃねぇかぁあああ!!!」


一部始終を見られた事が恥ずかしく、あたしは娘を抱えたまま布団を頭から被った。


「えぇぇ!!娘と戯れ合ってる所なんて割と前から見てたし!エースだって俺がさっきのエースみたいな事をやってるの見てるよね!?」

「ウルセェ!恥ずかしいモンは恥ずかしいんだよ!!」

「えへぇえへへへ!」


あたしは恥ずかしくて、旦那が家を出るギリギリの時間まで布団から出られず、朝飯を用意してやることと、弁当を用意することが出来なかった。

お詫びとして、その日の晩飯は豪華にした。


終わり

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