最悪の再会
その男と対峙した時、檜佐木が感じたのは紛れもない既視感だった。
その霊圧を、或いは顔を、知っているような気がする。
「てめぇが……綱彌代時灘か」
己の師の因縁の相手。それだけのはずの男に何故そんなことを思ったのかすら分からず檜佐木は時灘を睨みつける。時灘はその視線を受け止め、くくっと喉を鳴らして嗤った。
「檜佐木修兵か。また随分な挨拶の仕方だな」
父親に向かってその口の利き方はなっていないぞ。
「………は?」
朗々と響いた時灘の言葉に思考が停止する。父親、父親?誰が、誰の?その場にいた誰もが時灘の真意を図りかね、戦いの最中だと言うのに場に満ちるのは困惑の気配だ。
「やはり覚えていなかったか。まあ無理もない、お前はあれが死んだ時まだ物心もつかぬ無力な子供だったのだからな」
「何を――」
「お前は綱彌代修兵。私の息子だ。東仙要は気がついていたようだぞ?どんな気分だ、檜佐木修兵。心から敬愛した師を自分の存在で何十年も悩ませていたことを知った気分は?」
――檜佐木。君は、星は好きかい。
――星……ですか?ええ、好きですよ。綺麗ですし、なんだか安心しますから。
――そうか。
――これは私の親友の墓だ。彼女は……お前と同じように、星が好きな人だった。
――そう、でしたか。東仙隊長の友だった方なら、素敵な人だったのでしょうね。
――ああ。そうだね……。
いつか、あの人と交わしたそんな会話を思い出す。東仙はその親友のことを話す時、いつもどこか哀し気な目をしていた。檜佐木を通して誰かを、見ているような――。
「………ッ、関係ねえな」
「ほう?」
「俺とあんたの間に血の繋がりがあろうと、俺を形作ってるもんにあんたの存在なんか少しもねえ。それだけの話だ」
「なんだ、つまらんな」
ざわつく感情を振り払うように、檜佐木は斬魄刀を構える。それでも心臓はどくどくと、ただやかましく音を立てていた。