【最初で一番の】
※ご都合時系列、並びにオフの日の風景を捏造しております
―side 烏―
イタリアVSドイツの一戦後、氷織は自分に期待することが出来るようになったのか、未来を掴もうと外へ飛び出せるようになったのか、少し明るくなった様に見える
現にオフに際して以前から交流がある、お嬢や、凪に玲王、凛ともよく交流するようになった
他にもイタリアの二子、蟻生、同じドイツ棟のメンバーにも笑顔を見せるようになった
と言うか、サッカー以外で交流する連中とより親密になった、というのが正解か
そのせいか、唯一ユースの先輩後輩、並びに元々チームメイトという繋がりしかない俺が今、氷織と繋がりが薄い
氷織の事を一番に理解して、一番近くに居たと思っとった
一番、アイツの未来に期待してた
一番、アイツと競って、隣に立つ事を夢見てた
なのに今、一番氷織から遠いのは、俺や
サッカーに関しては氷織の持つサッカーIQ、戦術、プレイスタイル、その辺の話は付いていけるが、サブカルチャーに関しては俺は凡も凡や
氷織の好きなゲームや映画の事とかはよく分からんし、対戦も氷織には敵わん
それに、凪や二子みたいにそっちのサブカルチャーに強いし、ゲームも上手くて氷織にとっても張り合い甲斐がある
あんまマイナスに考えたないが、どうしても不安と嫉妬、氷織への気持ちが煮詰まっていく
先日のイタリアVSドイツの試合のリプレイを眺めながら、何だか生き生きしながら潔と連携してゴールをもぎ取る姿に暗い感情が募る
『あ、やっと見つけたわぁ』
映像と思考に集中して気付かんかった
氷織はソッと俺の隣に座った
『?前の試合のリプレイやん』
「おん、そうやでほんまお前、えぇ表情するようになったやん潔のお陰やな」
『?』
「アイツの分析力と行動力は目ぇ見張るもんがある、トレース出来たらより確実に点が取れる、ヤるやん」
『………潔くんのお陰やないよ』
「へ?」
『あの時、烏が「自分に期待しろ」って、言ってくれたから、だから僕は、皆と楽しくサッカーやれたらって、まだ此処に居たいって、思ったから…だから、踏み出してみたんよ』
呆気に取られる俺の顔を覗き込む氷織の表情は、空色の瞳が悪戯に細められ、頬も少し赤い
体育座りで、腕を口許の前で組んでいるせいか口許の表情は見えないが、氷織の表情は照れ笑い様に見えて…
「氷織…?」
『確かに、あんま僕、サッカー好きや無かったよ?でも……皆とやるのは別やし、それに……////…烏が、僕に最初の勇気、くれたやろ?』
はにかむ氷織の表情
俺に向けられる赤い頬、細められた瞳、弧を描く小さな唇
いつの間にか、距離が近くなる
すぐ目の前に氷織の顔
『烏は特別やもん、烏が居なかったら、烏と出会わなかったら、僕此処に居らへんよ』
頬に触れる柔こい感触
柔らかく、頬を赤らめて、笑う氷織
「ッ……ほんま、敵わんわ」
『僕も烏には敵わんよ』