曇天
「・・・モーカー君!スモーカー君!」
ヒナの呼びかけに物想いに耽っていたスモーカーは我に返る。
「ボーっとしてるなんて貴方らしくないわよ、しっかりしなさい」
そう言うヒナの言葉にもいつもの覇気は無い。だが、スモーカーは指摘せずに自身の右拳に目向ける。その右拳には勲章が勲章が握りしめられていた。
この勲章はスモーカーの物では無い。スモーカーと共にとある砂漠の国を救った海兵に授与された物だ。
散々振り回され、スモーカーも何度も怒鳴りつけたりしたが、どこか憎めないまるで太陽の様に笑う海兵だった。
スモーカーは次に左手に持つイヤーマフに目を向ける。
聴いた者の心を晴れやかにする綺麗な歌声に加え、優しき心を持ち、数々の民衆や海兵から愛された海軍の歌姫・・・そんな彼女が自身の能力を使用する際に仲間を巻き込まない様にする為に作られた物だ。
このイヤーマフは今回の任務に参加する海兵全員に支給された物だ。
ここはとある島に向かう軍艦の上。
そう、ルフィとウタ両名の捕縛任務を下され、海軍本部大将黄猿が指揮する海兵達が乗っている軍艦の上。
スモーカーは自身が今回の任務に召集された理由を考えたが、それも直ぐに合点がいった。
スモーカーの持つモクモクの実の能力は対象を捕らえるという点において、正に最適の能力だろう。隣に居るヒナの持つオリオリの実の能力もそうだ。
成る程、自分達を召集した世界政府のお偉方は現場の海兵の"能力だけは"よく理解しているようだとそこまで思って、スモーカーは葉巻の煙を吐き出す。
スモーカーは空を見上げる。その視界に広がるのは太陽が隠れており、晴れやかさなどからは程遠い・・・まるで皆の心を写したかのような曇天の空模様だ。