晶と愛衣と少しだけフリル
『私は貴方が好き!愛してる!!』
『僕だって!君のことを大切に思ってる!!』
どうも。斉藤晶です。
今中学2年です。思春期ですよ思春期。好きな男の子いないのか、ですか?
「それはナイショ♪」とだけ。
今何してるのか、と言うとお母さんが出てるドラマを観ています。
相変わらずうちのお母さんは綺麗だなーと思っていると、後ろから賑やかな足音が。
「おーねーちゃーん!!なーにーしーてーるーのー!」
「ぐぉっへぇ⁉︎」
十中八九、妹の愛衣だと分かっていましたが容赦無い体当たり+抱きつきに身体から全酸素が抜けます。
アメフトのタックル、てこんな感じ?
「あ、愛衣…抱きつきと体当たりは禁止…やるならお父さんだけにして…」
「ええー」
「ええー、じゃない。私は鍛えているから良いけど、お母さんとか他の人はもれなく怪我するからやめな」
これでも何ちゃって拳法を習い続けて鍛えてる私が大ダメージだから絶対辞めさせないとダメだ。
「お姉ちゃん怖い…」
「そりゃ怖くもなるよ。アンタの一撃、私を倒せるもん」
多分お父さんをバフ込みで倒せる。
「大事になったらアンタの夢、アイドルは叶わなくなるよ。愛衣が頑張ってアイドルになろうとしてる時に大怪我負わせた、なんてバレたら
子どもの頃とはいえ、何言われるか分からないんだから。
頑張ってる人の努力を無茶苦茶にしたいやつ多いしね。だから抱きつく時は優しくね?」
「…わかった。お姉ちゃんに体当たりして抱きつくの、好きなのにな」
しょんぼりした、落ち込んだ顔しないで欲しい。
許してしまうから。
「………不意打ちじゃなければ許してあげる」
パァァ!!と笑顔になる愛衣。
我が家の1番星の笑顔に私は勝てない。
結局妹に甘い私だった。
「ね、お姉ちゃん!何してたの?」
「お母さん出てるドラマの再放送観てた。お母さんてお父さん仲良いじゃない?ドラマで観てるとお父さんに見せてる表情を他人に見せてるなー、て思ってさ。どんな心境なのかな?て」
「???ママのドラマ、何か変?」
しまった。まだ小学生2年には分からない世界だ。
「えーと…お父さんのこと大好きなのに他の人にも大好きな感じ出してる…的な?」
「ふーん???」
愛衣、分からなくて良いよ。むしろ私がこの子に何話してるのかな?
「そう言えばお姉ちゃん、今日は帰るの早いね?たんしゅく?」
「今日はテスト終わりだから終わるの早いんだー♪友達のメグもルミもタケも部活だからねー…私だけ暇してと感じ。愛衣、一緒にお母さんのドラマ、観る?」
最近テスト勉強でこの子に構ってあげられなかったし、久しぶりに遊んであげよう。
「観る!」
目を輝かせて…可愛いなぁ我が妹は。
「ならお姉ちゃんの隣で観る?」
「そうする!」
お気に入りのウサギのクッションを引っ張って来て着席した。
じゃあ観ようか。
「ちなみにストーリーはお母さん演じるヒロインが売れないギタリストに恋をする、なありきたりなものなんだけどその男に実は奥さん居たり、奥さんいるのに関係持とうとしたり、別の人からもヒロインモテたりしながらそんな矢先にギタリストが事故にあってギター弾けなくなる感じ。
お母さんの演技力が色々良いのよ〜」
「…大事なところ全部説明してない?」
「大丈夫!えっちなシーンは無いから!!」
昔何気無く観ていた再放送で半裸のお母さん出て来た時は腰抜けた。
私のトラウマだ。
「おもしろいなら良いけど…」
「あ、面白くは無いよ。演技だけ良い感じ」
「何でそこまで言っちゃうかなぁ?」
ジト目なマイシスター可愛い。
「ただいまー晶、愛衣、お土産あるよー」
愛衣交えてお母さんのドラマ観ていたらお母さんが帰って来た。
今日はかなり早い。
「おかえり、お母さん」
「ママ!おかえりー!!」
お母さんに普通に抱きつく愛衣。
偉いぞ、私の注意をよくわかってる。
「あらら、いつもと違って優しく抱きつくね?お姉ちゃんに叱られたかなー?」
「うん。怖かった」
「注意しないといけない時期かなー?と」
私は少しお母さんの顔をまじまじと見れない。番組の中とはいえ、すんごいキスシーンを父親とは違う人と交わしていた人を見るのが恥ずかしい。
「まあ、それは良いことだけど…どうしたの?モジモジして…まさか、
硝太の秘蔵の写真集かDVDでも観た?もし観たのなら教えて。夕方に『お話』するから」
「仲良いのは良いけど、束縛キツくない?」
目と声のトーンがマジだ。
企業内カウンセラーのお父さん、貴方の奥さんは少し怖いです。
「だって硝太は優しい言葉とかフォロー上手いからモテるんだから!それに簡単に娘に見つかるところに如何わしいものあるのは教育的に良く無いわ」
訂正、きちんと母親目線でした。
「お母さん、素朴な質問なんだけどさ」
「なにー?愛衣、お母さん着替えて来るから少し離れてねー?」
「はーい」
何の気無しにドラマの件を聞いてみることにした私。
そしてお母さんからトテトテ離れて私の部屋に行く愛衣。お気に入りのクッションを回収かな?
「お母さん、ラブシーンとかどんな風に切り替えてやってる感じ?」
「え?現場入った瞬間と帰る瞬間に切り替えてるよ。じゃないと硝太拗ねるもん」
「即答!しかもお父さん拗ねるの⁈」
事もなさげに返すお母さん。
流石はベテラン。あと拗ねるのかお父さん。ジェラるのかお父さん。
「まあ私は撮影の間は役になりきるからその人のことは好きになってるかな。カット入った瞬間に役から『不知火フリル』に戻るの。たまに入ったままの人とかいるけど、色々大変になるからねー」
「じゃあ役でキスする時とかその人のこと好きになってル感じ?」
「まあ、そうとも言える…かな?どちらか言うと『役』に惚れてる。カット入った瞬間に硝太や晶、愛衣が頭に浮かぶから私は大丈夫だよ晶。大方、私が出てるちょっと過激なドラマでも観た?」
悪戯っぽく笑うお母さん。
あのうっとりした表情は相手さんだからじゃない、と知り安心。
「思春期だねー晶は。昔は気にしなかったのに。あと、役入ってる時は魅力的に見えるけど役抜けたら全然に感じるから心配しなくて良いよ。それに私が硝太以外好きになる事はないよ。私を助けてくれた人なんだから」
「そのくだりは聞き飽きたからノーサンキュー!愛衣に聞かしてあげて!!思春期の私に両親のラブラブエピソードきついから!」
「ええー…色々話したい事あるんだけどなー
拗ねた硝太が可愛い、とか」
「いや本当キツイっす。拗ねてる父親想像するとエグいから!!」
私とお母さんの攻防は愛衣が再び私に抱きつくまで続いた。
「おーねーちゃーん!!」
「ぐわてまら⁉︎」