星野ターコイズ 仕事の流儀その1

星野ターコイズ 仕事の流儀その1


お母さんの願い…役者として親子で銀幕デビューを果たす、それが僕の目的。

お母さんはこの世に居ないけど、お母さんの形見のうさぎの髪留めと一緒に出ることで

願いを叶えたことにしたい。


僕自身はエキストラとしては既にお母さんが亡くなってから兄貴と2人で出演したのだが、それで満足していては天国にいるお母さんに失望されてしまう。


だから目下の目的は主人公・ヒロインとして銀幕デビューを飾ること。

僕の本来の目的は「髪色は違えどお母さんに似ている、この容姿を利用してお母さんを知る人達を釣り上げること。」

昔兄貴が夜中に1人、お母さんのスマホを観ながら「アイは交友関係が狭かったからこそ探れるかもしれない」て呟いているのを聞いてしまった。

兄貴は復讐しようとしている。

僕は優しい兄貴にそんなことさせたくない。同じく姉貴にもだ。いつも守られてばかりだからこそ僕が誰よりも早くやらなくちゃいけない。

だから最終目的から見ると通過点に過ぎない。

が、大きな目標だ。

兄や姉のように頭も回らない、精神が大人びてもいない僕には困難過ぎる道かもしれない。

だが、この願いがあるからこそ、苦しくても投げ出さずやってこれたところがある。

…いまだに良くてセリフが多い端役ばかりで自身の才能の無さに嫌になるが。


今も自分の演技を見ると姫川大輝さん達周りの上手い役者や同年代のララライの黒川あかね、

兄貴、あの有馬かなには届かない、と痛感させられる。悔しい限りだ。

「ターちゃんよ、上ばっかり見ても仕方ないぞ?向上心あるのは良いことだがな。


不満そうだな…よし、足りないなら数をこなせ。何でも学んで経験値にしろ。

おまえの努力家で貪欲な姿勢は大きな武器だ。その姿勢を貫き通せ」



小学生の時に兄貴の恩師、五反田のおじさんに相談した際に言われた言葉だ。おじさんは凄い監督でお母さんもお世話になったし、僕と兄貴は監督の伝手で子役として場数を踏ませて貰った。

そんな中、兄貴は上手いのに「このレベルじゃ、ただの子役上がりの冴えない役者が関の山。ター、役者の道はおまえが極めろ。俺は裏方としての道を極める」と言って半分役者業を引退してしまった。

僕より上手い兄貴が辞めてしまったら、今の僕のレベルはどうなるのだろうか。

だがおじさん…監督は兄貴は演出と魅せ方を、僕には様々な演劇やドラマ、映画の現場に連れて行って演技の勉強をさせてくれた。

兄貴や僕が裏方にも表舞台にも通用するように色々な視点から教えてくれていたんだと思う。

そんな学びの場で僕は10秒で泣ける天才子役 有馬かなを一方的にライバル視して貪欲に現場で演技が上手い女優、俳優、同年代の子役にヒアリングして自分のモノにしようと努め、知識や芸術、アクション等ひたすらに学んだ。

天才に勝つには使える手札が多い方が良い。その一心でだ。

…おかげさまで気が付くと、無駄に知識が付き博学と言われるようになっていた。

今じゃ学力検査で偏差値68を叩き出して

逆に姉貴に勉強を教えられるほどだ。

姉貴は神童だったのに少々おバカになった

悲しいが神童もただの人なのだろう。

可愛いから問題ないが

演技面としてはアクションもある程度出来るが演舞や拳法とか出来る人は即完コピする。おそらくララライの黒川あかねならきっと見ただけで卒なくこなすし、有馬かなも天才だから即出来るだろう。天才とは憎らしい限りだ。

閑話休題

「ミヤコさん、おはようございます。今日の僕のスケジュールはなんですか?」

「おはようター。よく眠れた?怖い夢は見なかった?」

笑顔で僕を居間で迎えてくれた

養母のミヤコさんはお母さん亡き後僕たちを引き取ってくれた優しくて綺麗な人だ。

大好きなのに心配かけてしまっている。

申し訳ない…

「まあ…見ちゃいました…けど、大丈夫ですよ。姉貴と一緒に寝ましたから、今日もバリバリ頑張りますよ!!アクションは僕の得意分野なんで!」


姉貴に慰められて寝たから安心して目を覚ますことが出来たのは本当。

兄貴には流石に抱きつけない。恥ずかしいし。

「そう…無理しなくて良いのよ?

苦しい時は素直に言ってね?

…今日のスケジュールは貴女が出演している時代劇のくノ一役ね。今日が貴女最後の場面だから演じる前はしっかり身体をほぐしてからやるのよ?怪我したら元も子も無いのだから」


「大丈夫です、油断はしませんよ。

…あーあ、あの役人気出てスピンオフ作品出ないかなぁ〜

僕、かなり頑張ったんですよ?横回転したり、三角飛びしたり」

僕はこんなことできます!なアピールだったけど実際の放映ではほとんどカットされてた。悲しい。

「脚本に無いことするからよ。でも、次の仕事には繋がったかも知れないわよ?

あとアクション映画のオーデション、貴女に声がかかってる」

マジか。お母さん、真面目にやって来た甲斐があるかもです。約束果たせるかも

「マジですか⁉︎よーし!どんな作品ですか⁈」

「…忍者vsゾンビvs鮫」

お母さん。次の仕事(かも)はイロモノでした。






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