星の終わりを

星の終わりを


注意

・マーリン×ネームレス夢主(マーリンの元マスター。マイロード呼びされていますがFGO主人公ではないです)

・独自設定オンパレード


この星が終わろうとしていた。正しく寿命を迎えた。誰かのせいではないし、何をどうしても変わらない事実。人類の物語もここで終わる。私がこの塔で過ごした歳月を差し引いても、及第点のハッピーエンドだと思う。人類が織り成す紋様は、観測者を満足させるに足るものだった。称賛の意を込めて手を叩く。がらんどうの塔に音が響き、やがて消えた。

窓から顔を出すが、誰もこちらを見ない。アヴァロンの住民たちだって星の終焉は大切な存在と共に過ごしたいと思うのだろうし、そんな相手がいる。人類史という物語の感想を共有する相手がいないのは私だけだ。声を聞いてくれる者も、看取ってくれる存在もいない。この事実は、かつて私が犯した罪に対する罰として、甘んじて受け入れよう。でも、湧き上がる感覚は止められない。これが寂しいということなのか。初めての感覚だ。

「嘘つけ、この寂しがり」

いつかの主の声が聞こえた気がした。些細な好奇心とイレギュラーが重なって、聖杯戦争に出てみた時のマスター。何の落ち度もなく巻き込まれただけの一般人なのに、不平不満も泣き言も見せるまいと気を張れる善人だった。「キャスターのロードとしてカッコいいとこ見せなきゃね」なんて、よく笑っていたっけ。

成り行きで私がサーヴァントではないことを話した。本体は理想郷の塔の中にいて、星の終わり、人類のハッピーエンドを見届けるまで死なないと。一人で寂しくないのと聞かれたから、寂しくないよと答えた。私はそういうことを感じ取る生命体ではないからね。そうしたら、せせら笑われた。この人にも意地悪ができるのか、と思わず感心してしまうくらいに。

そう、それでその言葉を聞いたんだった。

「キャスターがすごい寂しがりなの、知ってるから。見てりゃ誰だって分かる」

「そんなことはない、と思うんだけどなあ」

「自分で言ってて自信なくしてたら世話ないな。でも大丈夫。会いに行くよ」

「……約束してくれるかい?」

「当然」

マイロードの物語(じんせい)は、私が退去した後も当然続いた。人間には長いのだろうが私にとっては一瞬の内に、マイロードはかけがえのない存在をいくつも作って、私に見せたのと同じ笑顔で、幸せに人生を歩んでいった。大切だと思った人の幸福を私は喜べなかった。千里眼を閉じて記憶にも蓋をして、塔に篭り続け、ついに星の終わる時が来た。すなわち、私の命が終わる時。やはりここには誰もいない。

「嘘つきはどっちだったんだろうね。マイロード……」

窓から身を乗り出して、影を探した。ホント、未練がましくて嫌になる。

あれ?

何かが動いた、ような。妖精か幻獣か、はたまたかつての弟子かその恋人か。目を凝らして確認する。それは人の形をしていて、こちらに手を振って、叫んでいた。この高さで届く訳ないのに。杖を振って、集音の魔術を展開した。

「……ター! キャ、ス、ター!」

嘘。

嘘だろう、だって君は。あの約束は。

「入口ー! どーこー!?」

は、はは、あはははははは!

こんな奇跡があっていいものか。私のような者が最後の最後に、報われるなんて!

「この塔なんで浮いてんのー! 物理法則とかどうなってんのー! 気づいてるでしょ、キャスター!」

星はもう終わる。本当に、あと僅かな時間しか残っていない。だから私にも恩赦をかけてはくれないだろうか。 ……まあ、たとえ駄目だと言われても、謝ることしかできないけれど。人の身では入れない理想郷にたどり着くといった偉業を果たした、そんな主人の頑張りを従者が棒に振るなんてそれこそ許されないからね!

「マイロード!」

これ一度言ってみたかった。

「着地任せたー!」

そのまま窓の外へ身を躍らせる。景色がぐるぐる回るし、結構風も強い。これは確かにキャスパリーグも怒るね。またどこかで会えたら謝っておこう。

変な悲鳴を上げて駆け出したマイロードの目の前にひらりと着地。もちろん魔術を使ったから怪我一つない。

「あんな高いところから飛び降りたのを受け止めようとするなんて、相変わらずだね。下敷きになったらもしかしなくても死んでしまうよ?」

そんな優しさを好きになったのだけれど。

「キャスターお前本当にお前」

はあ、と大きく溜息をついて、マイロードが言った。

「まあ、いいや。随分待たせちゃってごめん」

「楽園の端にようこそ。待っていたよ」

「まさに楽園って感じの景色だね。キャスター、ここでは真名で呼んでいい? こんな綺麗なところで戦争なんか思い出したくないし」

もっとロマンティックな理由だと思ったのに、ちょっと残念。

「もちろん、いいとも」

「やった。じゃあ……マーリン」

マイロードが笑う。無いはずの心を惹きつけてやまない笑顔が、今はボクだけの前にあった。

「星の終わりを、一緒に見よう」

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