星が降る
ポケダン初代(dx)を経た主パにエピソードデルタしてもらう話。
「この子は ミズゴロウですか?」
博士から貴重なポケモンを譲り受ける日。即決で選んだ理由は、その姿を夢で見たからという変なものでした。故に周りの人には「運命を感じたの」と言って誤魔化したものです。
小さい頃によく見ていた不思議な夢でした。私自身もポケモンになって、災害に困ったポケモン達を救助隊として助けていく夢。その傍らに必ずいたのが、ミズゴロウだったのです。
あくまで同じ種類なだけです。夢の事は心の箱に仕舞い込み、選んだミズゴロウの男の子と旅に出ました。そのはずでした。
その箱を彼が開けてくるなんて、想像するはずもないでしょう?
一人旅に挫けそうになって砂浜に落書きを始めた時です。描こうとしたのは夢の中の私が使っていた「救助隊バッジ」。夢の自分より些細な事で音を上げる自分が悔しくて、勇気欲しさに私は砂になぞり出したのです。真ん中の卵型だけを描いたところで、ミズゴロウは水をかけて描き足しました。左右対称の翼、私しか知りようのないはずの形を。
驚きのあまりその後ミズゴロウに何を聞いたか覚えていません。しかし私の声に彼は目を輝かせて、まだ小さかった手で抱きしめてくれた事は鮮明に思い返す事が出来ます。夢で経験した離別を思い出して、2人でそのまま泣き出してしまった事も。
彼と私が夢で見続けた冒険。これが何かを意味するのかは結局のところ分かりません。しかし私達が高い塔の上にいま居る理由は、結果的に夢の冒険とよく似ていました。
レックウザを呼び、隕石を破壊する。
本当に「結果的に」ではありますが、私は再度、この危機に挑まなくてはならなくなったのです。
幸いなことに、夢の中の危機よりも有利な点はありました。
まず何より隕石が遠い事。
もう一つはレックウザのメガシンカ。
夢の中では星が接近し過ぎていた為、砕けた隕石片が空のポケモンへと降り注いでしまいました。救助に当たりながら心を痛めたのは一度や二度ではありません。そうした被害も、この二つを揃えて粉砕出来れば大きく減らせるはずです。
しかし問題も同時に二つ出てきてしまいました。
まずは古代において複数人で祈りメガシンカさせたレックウザに、今回はたった一人で祈らなくてはならない事。
そして、千の歳月を過ごして力の弱まってしまったレックウザに万全なメガシンカをもたらすには、地上からの祈りでは届かない事。
より私の目線で言うのなら、私はレックウザの背に乗ったまま隕石の破壊をしなくてはならないという意味です。
「私だけで、出来るのかな」
重圧に潰されそうになりながら、私は星空を見上げました。涙はこぼれずにすみましたが、不安も恐怖も言葉を通して口から溢れてしまいました。
たった一人で、本当に出来るのでしょうか。明日、私一人の失敗で、今度こそ世界諸共に終わるかもしれません。
ラグラージになった最愛のパートナーは隣で一緒に星を見てくれていました。私の泣き言を耳にすると、すぐに私の手を大きく平たい両の手で握りました。コツン、と握られた手に彼のひんやりした額が添えられました。
大丈夫、僕がどこまでだってついてるよ。
私に彼の言葉は聞き取れません。それでも彼はそう言ったと断言できます。
手を握られただけの、言葉のない数秒間。それは私一人ではないと実感するのに充分な時間でした。たったそれだけで、先程までの不安が波のように引いていき、覚悟と呼べるものが私の奥底から湧いてくるようでした。
夜が明けました。
最後の鍵となる伝承を終え、私は今一度深呼吸をしました。ラグラージと再度両手で握り合い、目を閉じてそっと頭を突き合わせます。最後の勇気を分けてもらい、彼をボールに戻しました。
既に萌葱色の竜神は、私の事を待ってくれていました。
最後の迷いが私に問いかけます。
あの空の先へ飛び立てば、お前に生きて帰れる保証などないぞ。
本当に、このまま破壊に向かうのか、と。
「そんなの」
私の口は、いつかと同じ言葉を紡ぎます。
「初めから、承知の上だよ」
地上がみるみる遠ざかり、レックウザは雲を突き抜けながら隕石へと向かいます。その背にしがみつきながら、私は心の全てで願い、祈り、誓いました。
星の接近による天変地異も、空征く者の翼を折るような石の雨も、この地には不要なものです。
今度こそ、破片の一つも取りこぼしたくはありません。
どうか、見事なまでの破壊を!
その為に必要であるならば、星の外だろうと彼と共に征きます!
ーーよい 覚悟だ!ーー
眩いメガシンカの光に目を瞑った刹那、そう聞こえた気がしました。